2023年08月30日

『クロス探偵物語』を延々と語る会

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探偵とミステリー


漫画でもゲームでも探偵もののドラマってむかしから大衆を惹き付ける人気のジャンルですね。ほぼ必ずなんらかの他殺事件が起きるストーリーであるにかかわらず、少年雑誌でもよく取り上げられるジャンルでもあるのは、やはりかつて江戸川乱歩が児童向けの探偵小説に力を入れて人気を博した影響がかなり大きいのでしょうね。現代の名探偵というと、コナンが突出した知名度ですが、人気がありすぎて、アニメ版は1000話を越え、原作コミックスも99巻出てるようなので、コナン少年のまわりでは毎日1件以上の事件が起きてることになりますね。まぁ、それを言えばサザエさんもドラえもんやルパン三世も歳をとらない設定なので、そういった長寿作品に共通する事情による世界観の破綻は必然的に生じることなので、野暮な詮索はやめておきましょう。言いたいことは、それくらい探偵とかミステリー系のジャンルは現代の日本では根強い人気なのだなぁ、ということです。

ミステリーの多くは殺人事件を扱っているので、読んでいて明るい気分になることはないですが、謎が解き明かされていくパズル的な知的快感や、犯人に追われたり、追いつめたりするスリル(※1)など、刺激的な面白さがありますね。最近は精神世界に関心が移っていることもあって、好んで読んだりすることは少なくなりました。とはいえ、探偵小説は事件のスリルや推理のパズル的な面白さだけでなく、夢野久作の『ドグラマグラ』、小栗虫太郎の『黒死館殺人事件』、中井英夫の『虚無への供物』といった日本三大奇書を含む異端文学の宝庫でもあるので、単純に避けて通れない興味深いジャンルであります。

そうしたこともあり、とくに新青年系の昭和の探偵小説には古書マニア的にそそるところもあって、本棚に並べたい欲を刺激するところがあります。ミステリーものを楽しむことにはスピリチュアルな面では漠然と後ろめたさがありますが、つい引き込まれてしまうところがありますね。実際の探偵はけっこう地味な仕事だとも言われますが、フィクションにおける探偵というと、都会の闇にまぎれて生きるダンディな一匹狼的、というようなイメージ(フィリップ・マーロウとか神宮寺三郎的な)があり、ダークヒーローとはいかないまでも、スーパーマン的な肉体的なヒーローとはまた違った頭脳で悪を成敗する知的ヒーローといったかっこよさがありますね。

ゲームの中の探偵というと、今回テーマにあげた『クロス探偵物語』の黒須剣とか、『EVE』シリーズの天城小次郎、『御神楽少女探偵団』の御神楽時人が個人的に好きなゲームの中の探偵です。とくにEVEシリーズで小次郎の育ての親である桂木源三郎がすごく好きで、初代の声が納谷悟朗さんというのもあり、とびきりシブくてカッコイイ典型的な理想の探偵像を描き出しています。『EVE ZERO』の序盤で空港に迎えにきた小次郎の運転する車に乗った源三郎が無遠慮に葉巻をくゆらせ『この香りを楽しまずに死ぬなど愚かなことだ。おお、これぞまさにロメオの香りだ』と納谷悟朗さんのあの超シブイ声でつぶやくシーンがあります。これで急に葉巻に興味がわいてしまって、ちょうど懐具合も羽振りが良かった時期でもあったので、ロメオの葉巻(ロメオ・イ・ジュリエッタ)を味わってみたことがあります。

今はもう何年も煙草は吸ってないのでけっこうむかしのことになりますが、これが本物の煙草の味と香りなのか!と感動した思い出があります。ロメオは英国の有名な政治家、ウィンストン・チャーチルの愛用の葉巻でもあるそうです。有名ブランドの葉巻は一本で普通の煙草がワンカートン買えてしまう値段なので、ロメオは数本程度吹かした程度です。同じ時期に澁澤龍彦に憧れてパイプ煙草も挑戦しましたが、パイプは普通に喫煙するのにもテクニックがいるので、舌を火傷しながら苦戦した思い出があります。パイプ煙草は葉巻とはまた違った喫煙の醍醐味があり、葉巻よりは安価に楽しめるので一時期ハマってました。そういえばパイプもまたシャーロックホームズを連想する探偵アイテムですね。

閑話休題。中学時代に江戸川乱歩にハマって、その流れでむかしは推理クイズ系の本をよく買ってました。まだ金田一少年もコナンもなかった頃ですが、角川映画では金田一耕助シリーズが新作が出るたびに話題になっていたこともあり、また、松田優作のドラマ『探偵物語』などの影響で、子供にも「探偵かっこいい!」というムードがあった気がします。他に乱歩の少年探偵団シリーズをドラマ化した番組もうっすらと記憶に残っていて、内容はほとんど忘れてしまいましたが、オープニングのクレジットで二十面相だけ演者のクレジットが「?」になっていたのが個人的にすごくグッときました。二十面相はドラマでさえ正体を明かさない、というニクイ演出により、本物の二十面相が出演しているかのようなファンタジックな空想をふくらませていました。実際に二十面相を演じていたのは俳優の団時朗さんとのことですが、今年の3月に逝去されていたようで、調べていてびっくりしました。ご冥福をお祈ります。


※1 犯人に追われたり、追いつめたりするスリル〜
スリルといえば不朽の名作、ウィリアム・アイリッシュの『幻の女』をふと彷彿としました。『幻の女』は、最初とくに情報もなくインスピレーションで手に取った作品でしたが、ドキドキするほどのスリルとサスペンス感に引き込まれた思い出があります。妻殺しの無実の罪で死刑を宣告された男と、裁判に不審を感じて男の無実を証明するために走り回る刑事の話です。男が妻を殺害したとされる日時には、男はバーで知り合ったゆきずりの幻の女≠ニデートしていたため、その女を見つければアリバイが証明されるわけですが、ほとんど手がかりの無いためにすんなり見つかるはずもなく、意外な展開をしていきます。死刑執行までのカウントダウンで章立てがされているのも臨場感があってドキドキしながら読み進めた覚えがあります。だいぶ前に読んだきりなので内容はすごく面白かったという印象以外はあまり覚えてませんが、古い作品ながら未だにミステリー系のアンケートで上位にランクインする名作のようですね。いずれ読み直すか映画化されたものを見るかしてみたいです。江戸川乱歩は、まだ本邦未訳だった頃に、この作品を原書で読んで感服し、すぐにでも翻訳すべし!と絶賛したそうですから、『幻の女』の日本での人気は乱歩の影響もそうとうあるんでしょうね。


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学研ユアコースシリーズ『ルパンからの挑戦状』(昭和49年)と『ホームズからの挑戦状』(昭和48年)
凝った編集の推理クイズの本です。表紙の素敵な絵は笠間しろう氏。笠間氏の絵は線に独特の色気があって憧れます。中の本編ではたくさんの個性的なイラストレーターが挿絵を担当していて、絢爛豪華です。


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小学館の学年雑誌『小学三年生』(昭和52年10月号)のふろく『すい理クイズブック・あなたは名たんてい』
表紙の絵は、山根あおおに先生の描く名探偵カゲマンと永遠のライバル、怪人19面相のツーショット。

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異端の探偵小説を並べた本棚の一角です。新青年系の作家は怪し気なオーラがあってたまりません。背表紙を眺めているだけで異空間に誘われるようなトリップ感がありますね。


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『EVE ZERO』(ゲームビレッジ 2000年 プレイステーション)


メモ参考サイト


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クロス探偵物語の話

個人的に推理ゲームのベスト3は、上記にあげた『EVE barst error』『御神楽少女探偵団』と、今回のテーマである『クロス探偵物語』です。ベスト3といっても、ゲーマーと言えるほどプレイした作品数はそれほどでもなく、PS3以降のゲームは遊んでないのでほんとに個人的な好みです。また、『ひぐらしのなく頃に』、『うみねこのなく頃に』も好きですが、推理ものというには変格すぎるので、外して考えました。

というわけで、やっと本題の『クロス探偵物語』(開発:ワークジャム シナリオ:神長豊 美術:玉置一平 サターン版が1998年、PS版が1999年発売)ですが、『クロス探偵物語』といえば作画の玉置一平さんの素晴らしい表現力(※2)を抜きに語れませんね。今でもアドベンチャー系は立ち絵と背景の組み合わせが多いイメージがありますが、クロスでは現代の基準でみても各話ごとに書き下ろしのキャラ込みのグラフィックが贅沢なほど多く、それだけでなく細かいモーションもそこかしこにあり、またキャラの服装も季節やシチュエーションに応じて変化があり、そのとてつもない労力に頭が下がります。おかげでシナリオの没入度を高めていますが、限られたスケジュールの中での作業なのでさぞや大変だったことでしょう。現場スタッフにそうとう細かい注文をつけられてたくさん描かされたのだろうな〜などとブラックな現場を邪推してましたが、当時のゲーム雑誌の記事を読むと、玉置さん自身、この作品にノリノリだったようで、自分から細かいグラフィックを提案してジャンジャン描いていたというようなことが書いてありました。そうなると余計に出るはずだった続編がポシャってしまったのが残念でなりませんね〜

オープニングはピチカートファイヴの『大都会交響楽』に乗せて人物紹介のグラフィックで構成され、期待感を高めてくれます。ゲーム音楽というジャンルがまだマイナーなイメージだった頃なので、リアルタイムに人気のポップアーティストだったピチカートファイヴが起用されてたこともメーカーの力の入れようが伝わってきます。本編の音楽も印象深い曲が多いですね。本編の音楽は、伝説のフォークグループ、「五つの赤い風船」の元メンバーだった東祥高(あずま よしたか)さんによる見事なもので、聞くたびにクロスの世界に浸れます。そういえば忘れてならないのが、エンディング曲。ショパンのピアノ曲「夜想曲 第2番 変ホ長調」というチョイスがニクイですね。余韻があって素晴らしい演出でした。

システム的な部分では、読み込みのタイムロスを劇的に軽減した「マッハシーク」と名付けられた高速データ読み込み技術もウリでしたね。読み込みのタイムロスは、とくに当時はなにげに微妙なストレスをプレーヤーに与えていたゲーム全般における問題点のひとつでしたが、クロスではそうしたストレスを見事に解消したことも地味ながら秀逸な点でしたね。

※2 玉置一平さんの素晴らしい表現力〜
ゲームのグラフィックというと、アニメ調のものが多い中で、あえて青年漫画系の写実に寄せたタッチの玉置さんを起用したところもクロスにハマりこんだポイントでした。時流に左右されない個性的な表現力がすばらしいですよね。雑誌のインタビューでも神長さんがそこのところに言及していましたね。


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セガサターンユーザーのためのゲーム雑誌『GREAT SATURN』(1998年4月号 毎日コミュニケーションズ)。表紙は発売されたばかりのEVEシリーズの新作『EVE The Lost One』の主人公、杏子(左側)とコンパニオンの夏海(右側)のツーショットです。右の記事は『EVE The Lost One』の記事より、天城小次郎のプロフィールカット。

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『クロス探偵物語』の音楽担当の東さんが所属していたフォークグループ「五つの赤い風船」のLPとCD。大ヒットした「遠い世界へ」が代表曲ですが、下町情緒あふれる「えんだん」も泣ける名曲ですね〜


メモ参考サイト
MVがかっこいいですね〜

演奏者は違いますが『クロス探偵物語』のエンディング曲に使われたショパンの名曲です。

『クロス探偵物語』の経歴が抜けていますね。クロスは音楽アルバムとして出なかったからでしょうか。



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第1話「名探偵登場」の話

ここからは各エピソードの感想などを書いていこうと思います。不必要なネタバレはなるべく避けるつもりですが、多少はネタバレを含みますので、気になる方はクリアしてから読んでいただければ安全かな、と思います。プレイする予定のある方はサターン版ではなくPS版を強くお勧めします。

黒須剣といえば声優、草尾毅さんの声でおなじみですが、最初にリリースされたサターン版では黒須剣のパートはテキストのみで声無しだったそうですね。草尾さんのクロスの演技はやたら秀逸なので、声無しバージョンが想像出来ません。第1話は黒須剣の活躍の拠点となる冴木探偵事務所に就職するまでを描きつつちょっとした事件をも解決するチュートリアル的なシナリオです。ゲームの多くはアクションにしろアドベンチャーにしろ序盤はつかみとしての面白さをキープしつつ、基本的な遊び方やキャラ紹介などをいかに退屈させずにプレイさせるかが大事なところですが、この最初の難関をクロスは実に巧みにクリアしているところも名作と呼ばれる理由のひとつですね。

交通事故で逝去した父の残した2億円の生命保険金により、かつて父と住んでいたアパートで何不自由の無い独り住まいをしていた主人公の黒須剣。彼は高校を卒業して冴木探偵事務所で働こうと決心します。この父の事故死は不審点が多く、この謎を解くことが探偵としての剣の当面の目的となるのですが、結局この肝心の謎は続編に持ち越されるので最後まで明かされぬままです。犯人は最初から存在しているお馴染みの人物であることが本格推理もののセオリーですから、なんとなく父の部下で剣の味方であるように描かれている大川さんが実は黒幕では!?と邪推しています。でも続編が期待出来ないので謎が謎のままで終わりそうなのが残念です。

この最初のエピソードでは、冴木事務所に来た高飛車な女子大生の依頼を、冴木の不在をいいことに就職する前に剣が勝手に解決してしまいます。普通はこういう非常識な行動をする人物を雇おうとは思わないはず(※3)ですが、なぜか冴木は怒るどころか才能を評価して剣は見事探偵として雇われることに成功します。冴木先生の海のように広大なおおらかさと寛大さがうかがえますね。剣は事件を独断で解決するまで憧れの冴木先生の顔すら知らない状態なのがナンですが、まぁ、冴木達彦が高名な探偵とはいえ、秘密を扱う職業柄、顔写真をおおっぴらに公開してなかったとしても変ではないのかもしれません。勝手に冴木を神宮寺三郎のようなダンディなちょい悪系のおじさまをイメージしていた剣は、温和な普通のおじさん顔の冴木にショックを受け「わかった!ジジイの面(めん)をつけて変装してるんですね!」と顔の皮を剥ごうとします。このシーンはなかなか笑える名シーンのひとつですね。

第1話はチュートリアルでもあるので、画面(キャラの各部位、頭や服や背景のアイテムなど)をポインタでクリックするとクロスがコメントするという仕組みや、事件の謎に近づくと現れる文字入力などが出てきます。女性キャラの胸をクリックするとマニアックなおっぱいへのこだわりを披露する剣の秘められた内面の声を聞けるのも楽しい部分ですね。あと、笑いをとるためにだけに時々現れるナンセンスなコマンド(第2話ですが、「尾行」をクリックすると「クンクン・・・このかすかな臭いは・・・そりゃ微香だっつうの!」とか)などはEVEシリーズを彷彿としました。

そして事件のキーワードを入力させる文字入力ですが、『クロス探偵物語』では、かなり限定的でマニアックなキーワードを入力させる場面が多々あるので、最初からその単語や雑学情報を知らない人は絶対に当てられないものもあり、クロスの実況をいろいろ見てますが、音(ね)を上げて攻略サイトを見てしまう実況者さんをたまに見かけます。私は運良く、というか、世代的には知ってる率が高いキーワードばかりだったので普通にクリアできましたが、何度も再プレイしているうち、「もしワザと間違えるとどうなるんだろう?」というのが気になり、文字入力でわざと何度も間違えてみたことがあります。結論からいうと、間違えるたびに剣がちょっとずつヒントを出してくれるようになり、それでも間違えると最後には勝手に答えを言ってくれます。数えてないですが、だいたい10回くらい間違えると正解を勝手に言ってくれます。なので、文字入力に関していえば、絶対詰まることは無く、答えを知らなくてもクリアできるようになっていました。上手く出来てるな〜と感心しますね。昔のゲームは不親切で鬼畜難易度の作品も多々ありますが、『クロス探偵物語』はそういう意味でも時代を先んじたユーザビリティを感じます。

鬼畜難易度といえば、H・R・ギーガーがグラフィックを手がけたことで話題になった知る人ぞ知る『ダークシード』(セガサターン ギャガ・コミュニケーションズ 1995年)という作品を思い出します。あまりに無茶な難易度の不親切極まりないゲームのため、付属の説明書にクリアまでの攻略法が全部書いてあるというめちゃくちゃなゲームでした。(しかも攻略を読んでもクリアするのはけっこう手こずったです)システム的な面は難がありまくりの作品ですが、シナリオやグラフィックは独特の世界観があり、現実世界と重なって存在する異次元の裏世界と行き来する設定などは、サイレントヒルの世界観を先取りした見事なアイデアだったと思います。むかしゲーム屋さんの100円ワゴンでゲットした記憶がありますが、さきほどアマゾンで検索してみたら5000円近いプレミアがついていました。今頃何がきっかけで注目されてるのか謎です。有名実況者さんがプレイ動画でもあげているのでしょうか?たしかにツッコミどころが多いので、実況向けにはいいネタになりそうなゲームです。

※3 非常識な行動をする人物を雇おうとは思わないはず〜
事務所の社員でもない赤の他人が事務所への依頼を勝手に受けて勝手に解決し報酬まで受け取ろうとするという、考えてみれば剣はかなりの非常識な行動に出てます。しかし、序盤の友子のセリフ「また、あんたなの?」から察するに、これ以前からたびたび冴木の留守の間に事務所に来て冴木への弟子入りを懇願していたことがうかがわれます。当然友子はそのことを冴木にも伝えていたでしょうから、冴木も自分に弟子入りしたがってる黒須剣という青年がいるということは事前に知ってた可能性は高いでしょう。「ゆがんだ名門校」のエピソードの序盤では、剣の父が警視庁きっての敏腕刑事であったことを冴木は当たり前のように言及していたことからも、最初から黒須という姓からピンときて剣の素性を把握していたのかもしれません。そういう背景を含めて考えれば、剣に多少非常識にみえる行動があっても、伝説のスゴ腕の刑事の息子に興味を持ち、むしろ剣の探偵としての資質や能力がいかほどのものなのかが気になり、それを見極めたいがゆえにあえて剣の勝手な捜査を放置していたのでしょう。依頼者と打ち合わせ中の剣の前に突然現れて助け舟を出す冴木のシーンからもそれがうかがえます。最初プレイしたときは、事件解決後に冴木から送られてきたなぞなぞFAXが推理力を試す試験というのはどうなのか?と思ってましたが、むしろ本当の試験は女子大生の依頼を解決した時点ですでにクリアしており、FAXのなぞなぞは剣の歓迎会をするためのたんなる余興にすぎなかった、というのが真相なのでしょうね。冴木が剣の弟子入りを「弟子を取らない」というポリシーを曲げてまですんなり認めたのもおそらくそのような事情からなのかな、とフト思いましたので、追記しました


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雑誌『GREAT SATURN』(1998年4月号 毎日コミュニケーションズ)より。
『クロス探偵物語』の企画、監修、シナリオを担当した神長豊氏のインタビューコラム。

メモ参考サイト
どうも現在はゲーム業界を引退しているとのこと。現在はキャンピングカーの制作販売を行う会社を経営してらっしゃるようです。もはやクロスの続編は叶わぬ夢ですが、せめて剣の父を殺めた黒幕は誰だったのか?とか、当時構想してらしたアイデアだけでもお聞きしたいところですね〜

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第2話「疑惑」の話

推理ゲームの中ではけっこう爽やかな青春ものっぽい触感のある『クロス探偵物語』ですが、事件そのものはけっこうヘビーだったり、グロかったり、シチュエーションとしてきわどいもの(SMとか制服フェチとか)の言及などもところどころあったりします。それでもなお爽やかさが印象として残るところが不思議ですが、これは剣や友子やマークなど、飄々として爽やかな主要キャラたちのイメージによるものなのでしょうね。玉置一平さんのすばらしさは、主要キャラだけでなく、チョイ役のキャラにも手を抜かず、ちょっとしか出番の無いキャラでもものすごいインパクトがあって、クリア後でもすぐ思い出せるくらい濃いキャラをたくさん表現しているところですね。

先の第1話で印象的なちょい役キャラは、いかにも怪しそうな当て馬キャラの石井(アンガールズ♀エのある依頼人の女子大生の元ボーイフレンド)ですね。この第2話でもショートカットの美少女、広川千絵里ちゃんを何度もナンパしてくる変な不良3人組がインパクトありましたね。とくにセリフの無い背後の赤い髪に黄色いサングラスの男がシュールで独特の存在感があります。「ヒロスエのパンツ」に釣られる不良グループというシチュエーションが時代を感じますね。喫茶店にいるモブキャラまでいちいち妙に凝っていてすごいです。この後のエピソードでもいい味を出している脇役がてんこ盛りで、玉置さんの並々ならぬ才能を感じます。

このエピソード(※4)では、警察に自殺と処理された銀行員の男の母親が、冴木事務所に息子の死にどうしても納得がいかず、他殺であることを証明することを依頼にやってくるところから始まります。この事案も剣が冴木から調査を任され奮闘するシナリオで、銀行員の男が当時世間を騒がせた「完全自殺マニュアル」(鶴見済著 1993年 太田出版)らしき本に書かれている通りの方法で自害したという状況が提示され、なにかと当時としては時代を反映した描写が多い印象がありますね。

調べてみると元ネタになったこの本は100万部を超えるミリオンセラー(※5)を記録したそうです。ゲーム内で友子はこの本を「ああ、あの悪趣味な本ね」と否定的に一蹴しますが、件の元ネタの著者、鶴見氏によれば、どんなに苦しい状況でも強く生きることを求められる社会の風潮に異議を唱え「いざとなれば自殺してしまってもいいと思えば、苦しい日常も気楽に生きていける」ことを提唱するのが目的である、というのがこの本の本旨のようです。とはいえ中身は自殺マニュアルですから、案の定否定的な意見が多く、マスコミからもバッシングされました。そうした批判的な状況とは裏腹に、実際にこの本が発売された年とその後の2年間は自殺者の総数は減少していたらしいです。著者の意図した結果を生んだのだとしたら、まぁ、良かった部分もあったのかもしれませんが、とはいえ人によっては劇薬みたいなものですから個人的に思うには、安易に手にとるのはおすすめできない本には違いないです。

実際に自殺するとどうなるかを直視することで逆説的に自殺する気をなくさせようという、この本の本旨が本音なのかどうかは置いておいて、こうした不道徳と一般に解釈されることが蓋然的な本は、なんらかの肯定的な意味付けをしないと社会に受け入れられないために、実際は扇情的にショッキングな表現を見せたいだけの表現であっても世間的反発を避けるためにエクスキューズとして肯定的な意味付けがされることはままありますので、判断が難しいところです。仏教における密教も秘密の教えだけあって一般人がみればとんでもない危険な教えがありますが、件の本もそういった扱いの難しさはあるだろうと思いますし、一部の人には薬になっても、一般には毒であるのかな、と思います。

ほかに考えられるのは、この本の中身は一種のレア情報の集積でもあるので、深刻な意味ではなく、ただ珍本奇本的な意味で読書マニアが手に取った、というのもあるかもしれませんね。スピリチュアルな観点では、自殺するとこの世でクリアすべき課題が来世に持ち越されるので、来世の人生がどんどんハードモードになりますよ、ということはよく聞きますね。確かめようのないことですが、人生を諦めずに人生を良くしていくためにがんばってみようとする助けに少しでもなるならば、そういう思想を受け入れてみるのもアリかと思います。ブッダが悟ったように、この世はそもそも全ての生命が必ず何らかの苦を体験するような世界なのですから、縁合って同じ時代に同じ世界に生きている人間同士、互いに助け合って少しでも安楽で幸福な状況を作り上げていきたいものです。というか、人の生きる意味というのは、互いに助け合いながらこの世を天国に近づけていくことなのかもしれません。

閑話休題。このエピソード「疑惑」では、クライマックスに探偵ものではお馴染みの、容疑者を全て集めての謎解きタイムがあります。金田一少年やコナンなどでもよく見るフィクションにおける探偵ものでは、お約束のシーンですね。しかし現実的に考えると、かなり妙な場面でもありますよね。絵面としては徐々に追いつめられる犯人の反応や、推理を分りやすく見せるための王道シーンではありますが、実際には関係者すべてに推理を披露する必要はないですからね。関係者全員が探偵の推理ショーにスケジュールを合わせて集まれるかどうかもけっこうハードルの高い条件のようにも思えますし、探偵の推理タイムに集合かけられた時点で犯人が意気消沈してしまって推理途中に白状してしまったら推理の段取りが中途半端なまま犯人が警察に拘束されてしまう、なんてこともありそうです。また、このエピソードのように、みんなが衆人環視の状態で息子の恥ずかしい性癖をバラされるとなると依頼者の気持ちはどうなるのか?(※6)とか、余計な想像をいろいろしてしまいそうになります。こういうのは意地の悪い野暮な詮索そのものではありますが、ネタ的な意味で考えてみました。こうした詮索をつきつめていけば、探偵の推理ショーを台無しにすることをテーマにしたギャグ漫画とかのアイデアとして使えるかもしれませんね。気分がのったら4コマ漫画とかで、数種類の推理ぶちこわしパターンをオチにしたものを描いてみたいものです。

※4 このエピソード〜
この第2話は、被害者が遺した手帳のアドレス帳に書かれた名前と電話番号から容疑者を絞り込んでいくシーンや、容疑者宅への張り込みや尾行など、クロスの全エピソード中もっとも探偵っぽい行動が多いシナリオで、剣の行動を通してプレイヤーに探偵になったかのような気分を疑似体験させてくれます。ストーリー的には地味なエピソードであるものの、プレイヤーをもっとも探偵っぽい気分にさせてくれるシナリオでもあり、次のシナリオに繋げるモチベーチョンを否応なく高める見事な構成に感服します。

※5 100万部を超えるミリオンセラー〜
90年代あたりの時代は、露悪趣味なサブカルチャーが流行った時代でもあり、『悪のマニュアル』(1987年 データハウス)とか、『危ない1号』(1995年 データハウス)や、『ザ・殺人術』(ジョン・ミネリー著 1993年 第三書館)をはじめ、あのインテリ御用達の文芸評論誌の『ユリイカ』(青土社)まで『悪趣味大全』と銘打った増刊号を1995年に出しているほど悪趣味がブームでした。ハッキングをテーマにした雑誌『ハッカージャパン』(白夜書房)の創刊も1998年でしたね。
根本敬さんの全盛期も90年代前後ですし、電波系という言葉もサブカル界隈で流行ってましたね。特殊翻訳家*下毅一郎さんが殺人鬼に関する雑学本で著書を発表していたのもこの頃ですね。また、美術やクラシック音楽などをテーマに分冊百科方式のシリーズを刊行していたことで有名なディアゴスティーニのシリーズでもこの時代には世界の殺人鬼を毎週紹介していく『週間マーダーケースブック』(1995年〜1997年 ディアゴスティーニ)という悪趣味なシリーズを刊行していました。振り返るとこの時代、かなり悪趣味≠ェブームだったことをうかがわせます。
カルト教団によるテロ事件があったのもそういう時期でしたし、日本全体として何かと業の深い時代だったのでしょうね。鶴見氏の『完全自殺マニュアル』もそうした時代背景の中で出版されたわけで、特別奇をてらって出版されたわけではなく、悪趣味ブームに乗って出されたものなのでしょう。しかし、悪趣味ブームとはいってもサブカル界隈の話なので、さすがに自殺を教唆しているともとられかねない件の本はそうした時代の中でさえ目立ってしまい、マスコミにバッシングされ、『クロス探偵物語』でも引用されるくらいに社会現象化してしまうことになってしまいました。

※6 依頼者の気持ちはどうなるのか?〜
被害者の務めていた銀行の同僚や上司がこの場面では集まってましたから、さすがにその場で被害者の性癖を暴露するのは、まだ探偵としての場数の少ない剣の暴走っぽい印象もうけましたね〜 それはそれとして、クロスのウィキをなんとなく読んでたら、このエピソードに登場する依頼者の高松洋子とその息子であり被害者の春彦はモデルがあるということで、初耳だったので驚きました。往年の大ヒットドラマ「ずっとあなたが好きだった」(TBS 1992年)に登場する佐野史郎さん演じる冬彦が春彦のモデルで、お母さんの野際陽子さんが春彦の母のモデルのようですね。キャラの顔を似せてないので気付きませんでしたが、たしかに冬彦と春彦という名前や、お金持ちのボンボンでマニアックな性癖の持ち主というところ、母親が厳しそうな和服の女性、などなど共通点が多いですね。

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雑誌『GREAT SATURN』(1998年4月号 毎日コミュニケーションズ)より。
『クロス探偵物語』のレビュー記事。発売前のサンプルロムから第2話を紹介しています。

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雑誌『GREAT SATURN』(1998年4月号 毎日コミュニケーションズ)より。


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第3話「ゆがんだ名門校」の話

クロスでの好きなエピソードのひとつです。第3話「ゆがんだ名門校」、第5話「紺碧の記憶」、第6話「タランチュラ」の3本は個人的に好みのシナリオです。というか、クロスをクリアしたプレーヤーなら好きなエピソードとなるとだいたいこのラインナップになるのではないでしょうか。この3本にはグロシーンがところどころあるのがちょっときついところですが、この3本はどれもクロス探偵物語の世界観を体現した甲乙つけがたい面白いシナリオですよね。

「ゆがんだ名門校」では2話に登場した不良にからまれていた千絵里ちゃんの母校、女子校の「エリス女学館」が舞台で、女生徒ばかりの秘密の花園で巻き起こる連続怪死事件の調査が今回の剣のミッションになります。ここから女性キャラの中でクロスファンに人気の高い高梨まゆなちゃんが登場します。まゆなは日本一有名な推理作家、高梨呂秋の孫娘というブルジョワ女子ですが、文武両道の正義感の強い利発な女の子で、千絵里と共にこの後のエピソードにも引き続き登場して花を添えることになります。

このエピソードに登場するキャラもまた個性派揃いで楽しいですね。チンピラ刑事の林田とか、明らかに某女優をモデルにしたのであろう保険医の松井泰子(※7)とか。中でもエリス女学館の学長、大野玉代のキャラがインパクトありすぎて夢に出そうな迫力があります。その有無を言わせない高飛車なおばさんキャラの大野に剣もタジタジで、彼女とのやりとりはとても面白かったですね。学長室でのコマンドで「つき合って」というのをクリックすると剣に指差されて「お前がつき合え!」とプレーヤーが怒られたり、「スリーサイズ」を聞こうとすると「死んでも聞きたくない!」と剣にキレられます。こうした推理とは無関係な部分にも遊びがあるのがいいですよね。

他にイイキャラというと、エリス女学館の理事長でもあり、高名な推理作家の高梨呂秋の後輩でもある頑固者のスキンヘッド老人、中村も印象深いですね。中村老人のボディガードが北斗神拳でも使いそうな胸に七つの傷のある男だったり、忍者のような身体能力の家政婦がいたりなど、3話目も絶妙にシュール感のある印象的なチョイ役も豊富なすばらしいエピソードですね。

本筋の推理にしても、事件の発端となるふたりの教師の死因がどちらもガンで亡くなるのですが、もし意図的な殺人なら、どうやってターゲットをガンにしたのか?という疑問が残ります。この難攻不落にも思える怪事件を、大野学長や刑事の林田の捜査妨害とも思える限定された行動条件と、数日という短い期間に犯人とそのトリックを暴き出さなくてはならないという、とてもスリリングなシナリオで、プレイヤーもこの3話目くらいから一気に『クロス探偵物語』の世界に引き込まれていきます。

ここでの文字入力のキーワードは犯人がターゲットを意図的にガンにするためのトリックのキーになるワードで、一見難易度が高そうに見えますが、何周もしてると、保険医の松木泰子との会話の中で何度もキーワードが出てくることに気付きます。ちゃんと事前にヒントが会話の中で何度も出てくるので注意深くプレイしていれば意外とすぐ気付いてクリア出来そうなパートかもしれませんね。

犯人が冷酷な殺人を続けた動機が明らかになってくると、やはりそれなりに犯行に駆り立てるだけの背景があることが分るので、犯罪に手を染めるのは間違った選択だとは思いますが、間違いを犯してしまった犯人にも同情的になりますね。このエピソードで犯人の用いたトリックは、けっこう斬新な不可能犯罪のアイデアに思えます。もし元ネタが無く、このトリックがクロス探偵物語のオリジナルのアイデアなのだとしたらかなり凄い発想だな、と思いました。

※7 保険医の松井泰子〜
名前と顔から容易に女優の松雪さんがモデルだな、というところまでは気付いたんですが、どうもその先があったようで。『名探偵保健室のオバさん』(宮脇明子 1996年 集英社)という漫画を原作にしたドラマが元ネタみたいですね。今頃になってそれを知りました。件の女優が主人公を演じていたみたいで、眼鏡も髪型も元ネタはそこからみたいですね。(たしかにそっくり! Google画像検索)


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雑誌『GREAT SATURN』(1998年4月号 毎日コミュニケーションズ)より。
発売延期のお知らせの記事。画像は「ゆがんだ名門校」からのキャプチャーで、ここは剣が校内を調査してるシーンですね。美女3人組のあんなところやこんなところをクリックすると剣がうれしそうに反応してくれるユーモラスな場面です。

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第5話「紺碧の記憶」の話

第4話「依頼者」は、ただシナリオを読み進めるだけのパートで、プレイヤーが推理するところはなく、ティーブレイク的なエピソードなので、とくに語ることはないため飛ばして第5話「紺碧の記憶」について語ろうと思います。

このシナリオは、『サクラ大戦』などアドベンチャーものでよくある夏のバカンスパートです。夏!海!水着の女子!といったサービスシーンを盛り込んだ華やかなエピソードで、賑やかで楽しい雰囲気に包まれながら和やかにスタートします。

このエピソードから日本一有名な推理作家という設定の高梨呂秋先生が登場します。呂秋先生も想像してたよりも温和なキャラでしたね。脇役もルパン三世の出来損ないみたいな刑事が印象的でした。高梨呂秋の名推理にいちいち反応して頬を赤らめながら「はぁぁ〜素晴らしい!さすがは呂秋先生!」とつぶやくシーンが印象的でしたね。日本の警察が所持している拳銃はスミス&ウェッソンのJフレームリボルバーということですが、このルパン刑事のピストルはちゃんとワルサーp38になっていて、細かいユーモアに頬が緩みます。ルパン刑事のジャケットの色が初代ルパンの青緑なのもツボでした。

このエピソードで事件の舞台になるのは断崖絶壁に立てられたホテルという、これまたミステリーものの古典にありそうな既視感の舞台でわくわくしました。友子の姉で人気モデルの美麗さんが伊豆のゆきが浜≠ナCMの撮影をしているいうことで、美麗の水着が見たくてたまらない剣は夏休みの休暇にゆきが浜を強引に提案します。ちょうどまゆなの祖父、呂秋先生の別荘が伊豆にあるということで、剣、友子、千絵里、まゆなの4人は高梨家の執事の太田の運転する車で伊豆に向かうことになり、呂秋の別荘で豪勢な食事を堪能します。先に伊豆に来ていた美麗の宿泊しているのは断崖のホテルなので、興味半分にホテルを見にいくことになった剣と美麗と友子は呂秋に借りた車でホテルに向かうことになります。そしてこのホテルで事件(※8)が起こることになるのでした。

ここではホテル内の探索が今までのエピソードにはなかった3Dダンジョンのパートになっていて、プレーヤーを退屈させないための仕掛けを次々に出してくる制作者の熱意が伝わってくるような感じがして、クロスの世界により深く没入していきました。剣や友子のいる最中に犯人があざ笑うようにCMの撮影スタッフが次々と凶刃の犠牲となっていく連続殺人事件、一刻も早く犯人を暴きこれ以上の犠牲を食い止めねば!という状況がスリリングなエピソードです。

このエピソードで忘れてはならないキャラは美麗さんのマネージャーの笠村さんでしょう。いかにも当時のバブル時代の業界人をカリカチュアライズしたキャラですが、嫌みなところがなく憎めないキャラですよね。藤田嗣治感のあるおかっぱ頭と丸めがね、額のホクロ、真っ赤なシャツに真っ青なネクタイという、当時流行っていたパーソンズとかKファクトリーなどのデザイナーズブランドを思わせる派手なファッションに身を包み、どんなシチュエーションにおいても妙にポーズを決めたがる超個性派キャラで、陰惨な事件の渦中において、ちょいちょい安らぎを与えてくれる味わいのあるキャラでした。

まゆなが剣にゆきが浜≠フ名称の本当の由来を話すラストシーンがロマンチックでしたね。まゆなもまた剣に惹かれていることを匂わすシーンですが、千絵里が剣にベタ惚れであることをふまえ、親友の気持ちを裏切ってまで剣にアタックすることもできずに、葛藤し、想いを押し殺そうとしているようなニュアンスも絶妙に表現していて、いじらしくも切ない感じの名シーンでしたね。


※8 ホテルで事件〜
ホテルの客の中でひとりだけ誰とも交流せずすぐ自室に篭ってしまう謎めいた人物、若林が最初に犯人だと疑われるという序盤の展開は、『かまいたちの夜』のヤクザ風の男、田中一郎を彷彿としますね。田中も室内でもサングラスを外さず誰とも交流せずに人目を避けている怪しい人物で、かまいたちでもしょっぱなからうさん臭い雰囲気を出していた人物ですよね。えてしてこういう怪しすぎる人物はフィクションの世界では絶対犯人ではないので、逆にプレイヤーがそういう人物を最初にノーマークにしてしまいがちです。また、必要以上に人目を避ける人物は、別の誰かの一人二役などのなんらかのトリックが疑われがちですが、クロスでは、そういうプレイヤーの思惑を見越した秀逸な展開で、若林というキャラの意外な使い方をしていて「やられた!」と思いました。


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第6話「満月の夜に」の話

第4話「依頼者」は選択肢の無いサウンドノベルといった毛色の違うパートでしたが、このエピソードも、オフィスビルの3Dダンジョンの中をパズルを解きながら最上階を目指してひたすら昇って行く異色のエピソードでしたね。シナリオ的には単調で、セキュリティのために仕掛けられているいくつかのパズルもほとんど作業っぽくて、正直面倒くさいパートですが、途中途中にクリアには関係のないユーモラスな小ネタがちりばめられていて、それが面白いものばかりなので、それがクリアまでのモチベーションになった感じでした。オフィスで偉い人が座ってそうな高価な椅子を見つけた剣が、自分と美麗さんのオフィスラブを妄想して一人芝居をはじめる場面は最高でしたね〜


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第7話「タランチュラ」の話

最終話だけあって、分岐がいくつもある実に凝ったシナリオでしたね。奇術でいう「マジシャンズ・チョイス」の仕掛けをシナリオ分岐で表現したような感じで、奇術で行われるようないわゆる予言のトリックをストーリー仕立てにしたシナリオになっていて、ほんとうに見事なシナリオでした。

この最終話に来て初登場のキャラ、マーク・スペンサー(マーク・レイマン)が主役を食うような勢いで颯爽と登場しますが、おそらく続編ではマークは剣と組んで大活躍する予定だったのでしょうね。続編が出ないのが返す返すも残念でなりません。

森の中にポツンと建てられた鹿鳴館と呼ばれる屋敷に招待された剣をふくめた11人が、次々に姿を見せぬ謎の殺人鬼モンスター≠フ餌食になっていきます。殺される順番が偶然にしか見えないような事件が連続して起こるエピソードですが、モンスターは殺人が起こるだいぶ前から屋敷の中に殺害する人物の順番を予言したアイテムを残していることが後に発覚します。殺人のトリックもさることながら、なぜモンスターは偶然に思える犠牲者の順番を前もって予知できたのか?という謎が最後まで残る不思議なシナリオです。この最後の謎は、すべての分岐をクリアすると、エンディングの後にマーク・スペンサー(声・井上和彦)がいつもの美声で全ての謎を解き明かす解答編の隠しシナリオが出現するという仕組みです。

最終話にふさわしい見事なシナリオですが、ただいくつかのトリックのうちのひとつは当時信じられていたサブリミナル効果がキーになっているものがあり、当時は違和感はなかったのですが、今の視点でみると再現性の低いトリックでしょうね。当時思われていたほどサブリミナルの効果については実際にはまだ解明されきっていない部分が多く、追試実験ではあまり効果は期待出来なさそうな微妙な結果も出てるようです。とくにゲーム中で行われたようなサブリミナルによる誘導は実際には再現はかなり困難だと思われます。

サブリミナルの研究は19世紀半ばからあったそうですが、1957年9月から6週間にわたって行われたとされる有名なポップコーンとコーラの例の映画館での実験の話が刺激的な内容であったことから一気に認知されるようになりました。しかし、例の有名な実験は後に懐疑的にみられるようになっていきます。データの信頼性を含め、実験自体が実際に行われたかどうかもはっきりしていないようで、その真偽が取沙汰されていますね。ただ、まったく効果が無いわけでもないらしく、今後の研究が待たれるところです。

『クロス探偵物語』の発売される2、3年前あたりは、地下鉄サリン事件で日本中大騒ぎしていた頃で、そうした中、犯行を指示した某教団の教祖の顔が著名なTVアニメで一瞬挿入されていたということが発覚してマスコミの話題にもなりましたね。サブリミナルにどこまでの効果があるのかは未解明にせよ、意図しないメッセージを刷り込む手法は公的な放送メディアのあり方としてはアンフェアなことには違いなく、放送メディアにおける国内基準としてサブリミナル的な手法を禁じる旨をNHKが1995年に、民法が1999年にそれぞれが明文化する運びになります。そうした流れでサブリミナルという言葉が90年代後半は一般にも一気に注目されるようになりますが、そうした背景を含めてみると「タランチュラ」のエピソードにおける例のトリックも、そうした時代のタイムリーな空気を感じますね。

他には赤緑色覚異常の蘊蓄も興味深いネタでしたね。色覚異常のほとんどは男性であるというのもクロスのプレイで初めて知りました。調べてみると、先天色覚異常は日本人男性の20人に1人(5%)、日本人女性の500人に1人(0.2%)とのこと。原因は女性の場合X染色体のふたつともが色覚異常の遺伝子を持つ場合に色覚異常になりますが、男性にはX染色体はひとつしかないために発症率が女性より格段に高くなってしまうということのようです。

こうしていろいろ振り返ってみると、『クロス探偵物語』、時代を反映しつつも、時代を超えようというチャレンジ精神に満ちた名作ゲームのひとつといえるでしょうね。ということで、今回は大好きな思い出深いゲームのひとつである『クロス探偵物語』について、思いの丈を存分に語らせていただきました。ご清覧ありがとうございました。


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雑誌『GREAT SATURN』(1998年4月号 毎日コミュニケーションズ)より。
『クロス探偵物語』の開発メーカー、ワークジャムのオフィスを直撃インタビュー。質と量を見事に両立させた功労者、グラフィック担当の玉置一平さんの制作中の裏話が興味深いですね〜



メモ参考サイト



posted by 八竹彗月 at 23:54| Comment(0) | ゲーム

2022年07月31日

「ひぐらしのなく頃に」の話

先日「ひぐらしのなく頃に」の外伝、漫画「蛍火の灯る頃に」を読んだ勢いで、ひぐらし熱がぶりかえしてきたので、今回は筆に任せてひぐらし関連の話を綴ってみようと思います。

220731_higu.png「ひぐらしのなく頃に」

竜騎士07さんの出世作「ひぐらしのなく頃に」。今も根強い人気作品ですが、最初はコミケで細々と売られていたノベルゲームが、あれよあれよという間に全国的なヒット作品へと成長していく様は、ジャパニーズドリーム的な華やかさを感じますね。ひぐらしの成功は、日本の同人、一般のマニア層のレベルが商業作品に匹敵するレベルに到達したことの証左ですね。その後間もなくして2chの書き込みが映画(電車男)やCD(のま猫)や漫画(師匠シリーズ)になったりする時代になり、今やネット発祥のヒット曲や漫画なども珍しくなくなった感があります。

「ひぐらしのなく頃に」出題編となる前半の数編は、連続怪死事件の謎を追うミステリーもののようなシナリオであることや、当時の「正解率1%」などの煽り文句での宣伝もあって、推理ものという前提で作品を手に取り、謎解きに真面目に取り組みながらストーリーを追っていた人も多かったせいか、解決編での展開に当時はかなり賛否両論あった気がします。私は細かい整合性よりも面白ければそれが正義だと思ってますので、むしろあの展開でいっそうひぐらしが好きになりました。前半はホラー展開する場面が多いですが、後半の解決編では、村のラスボスお魎を説き伏せて村が一丸となって沙都子を救出するシーンなど、ぐっとくる熱いシーンが多くなっていき、登場キャラたちの魅力が増していく快感に浸っているうちに、あれだけ超長編だと思ってたひぐらしがあっという間に終わってしまい、読後はしばらく雛見沢村が自分のもうひとつの故郷になってしまったかのような郷愁を感じたのでした。

ストーリーが寒村の秘められた風習、みたいな民族学的な雰囲気があり、諸星大二郎ファンの私としてはそういう面でも惹き込まれました。日本から取り残されたいわくありげな寒村で起きる奇妙な事件、という伝奇ロマンな雰囲気はとても好みです。気になるのは、ホラー的な緊張した空気を和らげるためか、「部活」のシーンがかなり冗長に描かれるところくらいでしょうか。まぁ、そうしたおちゃらけ展開から一気に空気が変わる緩急具合もまたひぐらしの魅力でもありますから、作品的には必要な要素なのでしょう。すっかり今ではグロい描写や痛そうなシーンなどは苦手になってしまって、猟奇的なシーンは飛ばしながら見るようになってしまいましたが、作品自体は魅力的なので今でもたまに好きな編をアニメや実況動画などで繰り返し見たりもします。陰鬱で怖い場面の多い出題編とうってかわって解決編の「ひぐらしのなく頃に・解」では爽快なシーンが増えていくので、そうした部分も魅力が尽きないですね。

実は本編よりも外伝的な漫画「ひぐらしのなく頃に 宵越し編」のほうを先に読んでいて、それがきっかけで本編に興味をもってPS2版の「ひぐらしのなく頃に・祭・カケラ遊び」をプレイしました。その後アニメ版も見て、ますますその作品世界にどっぷりとハマることになりました。原作での最後のエピソード「祭囃し編」はゲーム版では少し違った展開をする「澪尽し編」になっていますが、個人的にはラストエピソードは原作かアニメ版のほうが好みです。ひぐらし関連の音楽もいい曲が多く、個人的にはアニメ版の「ひぐらしのなく頃に・解」のED曲「対象a」がとても好きです。

続編、というかキャラも舞台も一新した別作品「うみねこのなく頃に」も大好きで、推理が論理学的なややこしさがあるもののキャラがみんな魅力的なのでグイグイ惹き込まれます。ひぐらしよりもさらに濃い世界観が展開されて面白かったです。縁寿と真理亞のエピソードが印象深く好きです。魔法とはどういうものか?というのを正面から描いているところがいいですね。うみねこで描かれる魔法は、アニメの魔女っ子のような万能のファンタジックなものではなく、魔法には魔法なりの法則があり、物理法則と同じように力の発動には条件や縛りがあるものとして描いており、これはほぼ実際の魔術と同じでリアル感がありました。縁寿が学園生活でつらい目に遭いながら霊的な存在である七杭の姉妹を心の拠り所にして交流し、やがて決裂するエピソードでは、霊的な世界の法則がリアルに描かれていてわくわくしました。


220731_higu.png茶風林さんと声優の話

ひぐらしキャラでは大石刑事が一番好きということもあり、一番好きなエピソードは「暇潰し編」です。圭一が雛見沢村に引っ越してくる以前の番外編的なエピソードなので、登場する部活メンバーは梨花ちゃんのみです。物語はベテラン刑事の大石と公安の新人警察官だった頃の赤坂がメインで活躍するオヤジ回で、ダム推進派の政治家の孫の誘拐をめぐる事件をベースに、しっかりまとまった構成になっていて、とても好きなエピソードです。梨花ちゃんが赤坂にむかって未来に起こる数々の事件を予言をするシーンは圧巻でしたね。大石が赤坂を怒鳴りつけて発奮させるラストのシーンもシビれました。「暇潰し編」では他の出題編と比べてグロい残酷表現がほとんどないので、そういう点でも安心して楽しめるのも魅力です。麻雀はやったことがないので、麻雀のシーンは理解不能なセリフが多かったです。しかし麻雀シーンは能條純一先生の「哭きの竜」をパロった展開ということもあって、麻雀を知らなくても能條節でクールに豹変する赤坂がけっこう面白かったです。

アニメやゲーム版で大石に声を当てている声優、茶風林さんもこの作品の影響もあって大好きになりました。滝口順平さんや雨森雅司さんや野沢那智さんなど、異世界の住人のような非日常感のある、それでいてどこか懐かしく、奥深いヒーリング感のある独特の声質の声優さんが大好きです。茶風林さんもそうした芸術的な声の持ち主ですね。(調べてみると学生時代に滝口順平さんの歌舞伎の演目を収録したカセットテープを手本に滑舌を訓練していたそうです。声の感じが似てるのはそういうことだったのか!と合点がいきました。滝口さんご本人とも縁が深かったようで、生前から役の引き継ぎもあったようです)

茶風林さんはコナンの目暮警部とかちびまる子ちゃんの永沢くんとか、ワキを固める個性的な役に声を当てているイメージの方ですが、ひぐらしはかなり長丁場のストーリーなので、茶風林さんの大石の演技もたっぷり贅沢に聴けて楽しめます。大石刑事の演技によって、茶風林さんが単に個性的な声の声優さんというだけではなく、そうとうに高度な演技力をもつ実力派であることに気付かされました。ちなみに茶風林の芸名の由来はチャップリンからだそうですね。茶、風、林、と、当て字の漢字もいい具合に千利休的な風情があって、当て字の完成度も「エドガー・アラン・ポー/江戸川乱歩」レベルの完璧さを感じます。

昨今なぜか盛り上がっているFF10のワッカの声の中井和哉さんもいい声してますね。中井さんは「サムライチャンプルー」でファンになりました。個人的に理想のカッコイイ声の代表格のような感じです。声優関連では、なぜか可愛い少女声よりも、味のある渋いオヤジ声に惹かれるところがあります。

なんだかさほど詳しいわけでもないのに声優談義に話が逸れそうになってきましたが、つまり声優の方々に関心が芽生えたきっかけが「ひぐらしのなく頃に」だったのでした。大石役の茶風林さんをはじめ、魅音詩音の二役を演じきったゆきのさつきさん、鷹野役の伊藤美紀さんの素晴らしい声の演技にはどぎもを抜かれました。(そういえばゆきのさつきさんはゲーム「街」で、ゲーマー刑事の桂馬のパートナー役、麻生しおりさん役で出演されてるというのを知って、さらに「街」の再プレイが楽しくなりました)

閑話休題、話を戻しまして、先にも触れたひぐらしにハマるきかっけになった外伝作品である漫画版の「宵越し編」ですが、この作品は雛見沢大災害後のその後を描いたミステリーもので、昭和ではなく平成が舞台です。登場人物はいつもの部活メンバーではなく、この作品ではじめて登場する数人のキャラが物語を動かしていきます。唯一登場する部活メンバーは魅音で、大人になった魅音がサブ的な役回りで彼らを手助けしていく感じです。芥川龍之介の「薮の中」をモチーフにした作品というだけあって、不思議な余韻のある作品になっています。


220731_higu.png「僕だけがいない街」とひぐらし

「僕だけがいない街」(三部けい 2012年 KADOKAWA)、こちらはアニメ版のほうを見ました。主人公の藤沼悟の職業は漫画家。漫画では喰えないために宅配ピザ屋でバイトをしている。というのが序盤です。しかし彼にもひとつ凡庸でない特殊能力があり、それは避けるべきアクシデントが起こる直前の世界に何度もタイムスリップしてしまうというもの。自分で「再上映(リバイバル)」と呼んでいるこの能力、戻った時間の世界でアクシデントの原因を取り除くことが可能になるので、一見とても便利で良さげですが、自分の意志とは関係なく発動する能力なので、実際にはたいして便利ではないようです。逆に、リバイバルによってアクシデントを回避することで、かえって自分に別のマイナスな状況を引き起こすことが多く、主人公・悟はあまりこの能力が備わっている事を快く思っていません。

このやっかいな能力によって結果的に母親殺しの冤罪をかけられてしまうハメになるのですが、主人公は自分の潔白の証明のために結局はまたリバイバルの力を借りることになります。無駄のないスリリングな展開で飽きさせず、犯人探しの謎解きのミステリー要素が秀逸で面白かったです。また、友情あり、恋愛あり、そして人生とは何か?という深いテーマまで感じさせる素晴らしい作品でした。傷つくのを恐れて人と深く関わろうとせず、いつも付かず離れずの浅い人間関係だけで生きてきた主人公が、事件をきっかけに人や社会と正面から深くかかわらざるをえなくなり、それによって得難い人生の価値を見いだしていきます。事件が真相に近づくのと歩調を合わせて、主人公自身も人間的に成長していく感じがよかったですね。

この作品は「ひぐらしのなく頃に」のオマージュがいくつも散りばめられており、それを探すのももうひとつの楽しみです。「ひぐらしのなく頃に」でで描かれたいくつかのシーン、クラスメートを家庭内暴力から救うために児童相談所に相談するとか、廃棄されたバスが子供たちの秘密基地的に使われるところなどは、「祟殺し編」や「皆殺し編」を思わせるシチュエーションですね。「僕だけがいない街」は、主人公の名前が悟で、その母親が佐知子ですが、「ひぐらしのなく頃に」の沙都子と悟史を連想させる名前ですね。ヒロインの雛月加代も雛見沢村の「雛」つながりを匂わせます。ループ的な仕掛けもひぐらし感がありますね。全体的に見ればオリジナルの部分がメインで展開していきますし、本筋は謎解きミステリーなので、シナリオの感じはいうほど似てるわけではなく、逆にあえてそういうひぐらしオマージュに気付かせて楽しませるのを意図してるようにもみえます。そもそもひぐらしも「かまいたちの夜」のオマージュ(フリーのカメラマンの美樹本/富竹など)がありますし。

全体の雰囲気は、ひぐらしよりも「テセウスの船」(東元俊哉 2017年 講談社)のような雰囲気ですね。「テセウスの船」も過去を修正することによって運命を変えようとする話で、こちらもとても面白かったですね。

メモ参考サイト


220731_higu.png「ひぐらしのなく頃に」と数字の謎

「ひぐらしのなく頃に」はいろいろと語りたいことが多い作品ですが、ここで焦点を当てて話してみたいのは、この作品におけるアナグラム的な仕掛け、主に「数字」に関する部分です。雛見沢症候群の研究者だった高野一二三(ひふみ)、その研究を引き継ぐことになる鷹野三四(みよ)、三四の本名は田無美代子ですが、尊敬する一二三の研究を継ぐものとして、123の後を続けて34を名乗るという設定や、その研究の末に開発した雛見沢症候群を強制的に発症させる劇薬「H173」もH(雛見沢の頭文字)と173(ひなみ)の組み合わせだったりなど、数字の語呂を意識したネーミングがちらほら現われるのに気づきます。そうした事を考えながらひぐらしを振り返って見ていたら、他にもいくつか気になる数字に関する仕掛けが気になったので、忘備録代わりに記事にしてみました。

まず、鷹野三四と富竹ジロウとの関係ですが、数字にすると34(三四)と26(ジロウ)です。富竹の想い人、鷹野三四(34)は、本名のほうは美代子なので345(みよこ)とすると、つまり富竹の2と6の間にスッポリ収まる数字(23456)になります。高野一二三(123)を次ぐ者としての偽名34と、富竹と相性のよさげな本名の345。三四は悪魔のような存在でしたが、素顔の美代子は夢見がちな無垢な存在でありました。鷹野が34のままだと富竹の26との間に5という隙間ができてしまいますが、美代子(245)ならキッチリ収まるというところが意味深なものを感じます。三四には五(悟)が足りないわけですね。

あとは部活のメインメンバーのひとり沙都子と悟史です。数字にすると沙都子(さとこ、3と5)、悟史(さとし、3と4)です。妹の方が数字が大きいのは、皆殺し編で、「あなたを守ろうとした悟史の強さを知り、それを受け継いで強くなりなさい」という梨花の説得で沙都子は「鉄平が雛見沢に戻ってくると沙都子が壊れる」という頑丈な運命の袋小路≠フひとつを打ち砕くことになります。結果的に沙都子は悟史の精神を受け継ぐ可能性を秘めたキャラなので「+1」なのかな、となんとなく思いました。

沙都子の兄、悟史ですが、フルネームは北条悟史です。悟史(3と4)、足すと7で、北にある7というと、北斗七星が思い浮かびます。古代中国では北斗七星は北極星を守護する星座ですから、影から見守ってる感じの悟史のキャラを象徴しているようにもみえます。悟史がいなければ詩音の活躍は良くも悪くも物語に影響を与えなかったでしょうし、悟史のバットは初回の鬼隠し編から強烈なキーアイテムとして登場します。出番は少ないもの、悟史はけっこう物語をささえる重要キャラですね。

物語の最大のキーパーソンは鷹野三四ですが、この三四(34)という数字はけっこう重要なものであるのか、至る所に見つかりますね。例えば、沙都子と詩音は惨劇に至るほどの最悪のペアだったものが、最後は実の姉妹以上の絆で結びつきます。沙都子と詩音、頭の数字を並べると3(沙)と4(詩)です。主要キャラである園崎姉妹も魅音と詩音で3(魅)と4(詩)です。そして、鷹野とは別の視点でキーパーソンな悟史はそのまんま(悟史=3と4)です。3+4=7ですが、7というと主人公の圭一以上にひぐらしのシンボリックなキャラである竜宮レナ(07)、また作者も竜騎士07氏、そしてサークル名も07th Expansionと、7はひぐらしだけでなく、作者の創作活動全般において重要な数字であり、7を分解した3と4が作中に頻出するのは偶然ではないのでしょう。

作者が意図していたかどうかは別にして、傑作というのは往々にして偶然も味方に付けるパワーがあるものですし、そのような意図しないシンクロまで含めて「作品」であるように思ってます。

数字以外にも園崎の「園」はカコミ部分が身体を覆う皮膚の暗喩でその中に臓器が入っている文字で「崎」は「裂き」で、腹を「裂く」綿流しの儀式を司る家系であることを示しているとか、園崎家の直系の名前には「鬼」の付く字が使われるとか、御三家のひとつ公由家の名字は「鬼」を分解した文字(鬼=ハ+ム+由)であるとか、古手家の「古」という字は「占」という字に羽入(鬼)が交わって角が加わり「古」という字になったとか、パズル的な細かい設定があり、そうした細部へのこだわりも印象深い世界観を構築してますね。先に意味を考えてから名付けたのか、名付けてからその意味に気付いたのか気になりますが、創作って往々にして、作者自身にも見えなかった伏線に後々気付くという現象がよく起きますから、後者の可能性もありそうですね。


220731_higu.png「蛍火の灯る頃に」と「蜜の島」

「ひぐらしのなく頃に」は大ヒットしただけあって、映画、アニメ、漫画などメディアミックス展開して、外伝的な作品や後継的な作品も多数ありますが、後継作品にはグロ表現がさらにキツくなったりしてるらしいというのもあり、シリーズ新作の「業」と「卒」もちょっと気になっていますが、まだ未見です。本編以外で触れたことがあるのは先の「宵越し編」くらいでした。そんな中、先日読んだ漫画「蛍火の灯る頃に」はなかなか面白い作品でした。

漫画「蛍火の灯る頃に」(竜騎士07・作、小池ノクト・画)を読もうと思ったのはひぐらし関連からの興味ではなく、別の小池ノクトさんの作品、「蜜の島」に感銘を受けたことがきかっけです。「蜜の島」がとても面白かったので、小池さんの他の作品への興味から「蛍火の〜」を手に取りました。「蜜の島」は戦後間もない日本を舞台に、隔絶した謎の島で起こる猟奇事件をめぐる伝奇ミステリーです。事件の謎解きや島の真相などを全4巻で無駄なくまとめあげていて、後半は若干急ぎ足のような感はあるものの、全体としてかなり良質な作品に仕上がっています。諸星大二郎の妖怪ハンターやマッドメンが好きな人はハマるのではないでしょうか。

話が逸れましたが、「蛍火の灯る頃に」はそうした経緯で手に取ったわけです。「蛍火の灯る頃に」は、過疎化した村に、祖母の葬式で帰省した主人公とその親族がまきこまれる怪異を描いた物語です。こちらも宵越し編と同じように、時代は平成で、部活メンバーではなく新規のキャラがメインのお話になります。舞台は雛見沢村ではなく平坂村となってます。民族学とか日本神話に興味のある人はこの村の名前でピンとくると思いますが・・・・まぁ、だいたい予想通りです。しかし、そのあたりのネタは早い段階で解明されて、サバイバルのスリルがメインになってきますのでそれ自体はとくに問題はありません。

序盤で描かれる二つの太陽の異変など、思わせぶりなツカミの秀逸なアイデアはさすが竜騎士さんだなぁ、とうならされます。こういう印象的なツカミがあると一気に物語に惹き込まれますね。作り手の視点で考えると、ミステリーものにおいては往々にして序盤は状況説明やキャラ紹介といった地味なシーンが続きがちになるので、そこを退屈させないようにするためのインパクトのあるツカミを最初のほうにもってくるのはかなり重要な要素だと感じました。

キャラも新規ということもあり、途中までひぐらしとの関連はなさそうに思っていると、登場人物たちをサポートする役回りであの鷹野三四さんがいいタイミングで現れます。お子様ランチの国旗がはいった蒐集箱とか、ひぐらしファンをニヤリとさせるシーンがところどころ出てきます。寒村の怪し気な風習や伝説に目が無い鷹野さん、雛見沢村の次に目をつけたのが今回の村だったのでしょう。

一癖も二癖もありそうな親族が田舎に集結する話というと「うみねこのなく頃に」を思い出しますが、ああいった感じの話にはならず、こちらは霧に覆われ異界と化した村で鬼≠ゥら逃げながら食料を確保するサバイバルがテーマになっています。章のつなぎに実用的なサバイバル術を解説するコラムが挿入されていて、そうした雑学もいい感じに物語と相乗効果でサバイバルのリアル感を高めていてよかったです。

孤立した空間で複数の人間が集まる場面では、必ずワガママを言い出す人物が出てきて状況をかき乱したりするのは定番ですね。大変な状況のときにかぎって面倒くさいことを言い出したりするキャラが必ず現れるというアレです。現実では迷惑千万ですが、物語においては話をややこしくさせるキャラがいないと話に起伏ができないのでしかたありません。しかしまぁ、こういう極限状況に自分が置かれたら、冷静を保っていられるのかどうかは、そうなってみないとわからないもので、あながちそういう面倒くさい人間に自分がならないとも限りませんね。そのようなシーンを読んでいると、自分だったら利他的に振る舞えるのか、それとも利己的に振る舞ってしまうのだろうか、とふと考えてしまいます。

この作品の舞台は霧の村ということで、サイレント・ヒルやスティーブン・キングの「ミスト」などを彷彿とさせる雰囲気がありますね。この村の真相を暴き、村から脱出するのが主人公たちの主なミッションで、謎解き的な要素もサスペンスを盛り上げていて面白かったです。こういう都市伝説的なミステリーの独特の異世界感ってドキドキしつつも、この世界とは違う別の世界というのはどこか冒険譚のようなワクワク感もあって興味を惹かれますね。いわくありげな村の謎というと奇しくも「蜜の島」もそういうところがある物語です。後から考えてみると、偶然だと思いますが「蜜の島」(2013年刊)での島の謎と、「蛍火〜」(2016年刊)の平坂村の謎とは日本神話関連の共通したモチーフが見受けられます。「蛍火〜」のほうは絵は小池さんですが原作は竜騎士さんで別ですし、多分たまたまかぶったのでしょう。作品を手に取った順序になんとなく個人的にシンクロニシティを感じました。


posted by 八竹彗月 at 16:17| Comment(0) | ゲーム

2021年08月18日

ゲーム『街 〜運命の交差点〜 』の話

『街』との出会い

最近はゲームをする機会もめっきり少なくなってますが、ゆとりができれば最新の高スペックのゲーム機で緻密なグラフィックの話題作で遊んでみたいですね。今はゲームを自分でプレイする機会は減りましたが、そのかわりゲーム関連でいえば、とりあえずは昔プレイした思い出深いゲームの実況などを見つけては楽しむことが多くなりました。とくに大好きだったバイオ4&5や、クロス探偵物語、サクラ大戦1&2、EVEシリーズ、FF10、ひぐらし&うみねこのなく頃になどは、好きな実況者さんが取り上げてくれたりすると毎日の楽しみが増えてうれしくなります。サウンドノベルの大傑作『街 〜運命の交差点〜 』(チュンソフト)もそうした作品のひとつです。

『街』は実写映像をメインにしたビジュアルで構成されているのもユニークで、ゲームはドット絵かアニメ絵かポリゴン、みたいな先入観が支配していた当時はとくに珍しかった記憶があります。当時の自分も『街』はまったく眼中になく、実写ゲームというだけでハズレの予感しかなく、当たり前のようにスルー対象の作品でした。『街』との出会いは偶然で、仕事帰りに寄った深夜のコンビニでした。弁当と一緒に、何かゲームでも買おうという気分で、アクションやRPGのような集中しないと遊べない作品ではなく、まったり進めれるゲームが何か欲しいな、という気持ちで手に取ったのがサウンドノベルのハシリである『弟切草』(PS版)でした。とはいえ、『弟切草』は私に合わなかったのか、あまりハマれずその夜は序盤まで遊んで中断。しかしそのままでは釈然としないので、『弟切草』に収録されていた『街』の体験版をふとプレイしてみようと何の気無しに思ったのでした。今にして思えばそれがまさに私のゲーム体験における「運命の交差点」だったのかもしれません。

『街』は8人の主人公が渋谷で過ごす五日間を描いた物語ですが、体験版の『街』ではその中の一日分をプレイできます。実写のゲームだしということで期待はせず、体験版だしすぐ終わるだろうと始めてみたのでした。最初に選んだのは「オタク刑事」のシナリオだったと思います。主人公の新人刑事、雨宮桂馬(中の人はあらい正和さん)は、ゲーム好きでパソコンオタクという設定ながら刑事コロンボみたいな感じの味のある刑事っぽい雰囲気のファッションで、その愛嬌のある風貌もあって一目で親しみをもちました。序盤から一気に引き込ませる展開がほんと見事でしたね。渋谷駅前の交差点にあるビルに組み込まれた巨大モニター、オーロラビジョンに、いきなり爆破予告を匂わせる奇妙な暗号文が表示され、それを警邏中に偶然目撃した桂馬はあこがれの先輩女性刑事の栞さんと共に事件の謎に巻き込まれていく、というものです。これは面白くないわけがない!と即座に直感させる序盤のツカミにやられました。

その他の主人公もそれぞれ異なった背景を持ったクセのある面白いキャラとシナリオでしたので、深夜で次の日も仕事だというのに、止め時に迷う程ハマりこんでしまいました。最初は漠然と実写にハズレ臭を感じていたものの、その先入観はプレイしたとたんにほとんど一瞬で消し飛んだのでした。青ムシ役の人や、木嵐さんなど、脇役の名演怪演も素晴らしく、ほれぼれする演技が目白押しの作品でしたね。牛&馬の一人二役を演じきった松田優さんの演技も天才的で、ほとんど静止画でアフレコも無いのに、顔を見ただけで牛か馬かの違いが一発でわかるくらい明確に演じ分けられていて感銘を受けました。牛尾も馬部も、髪型から服装から頬の傷まですべて外見はまったく一緒の設定ですから、想像以上に難易度の高い演技力が求められる役だと思います。松田勝さんが舞台裏を語っておられるサイト(下に貼ってあるリンクを参照)を読むと、想像通り役作りは大変だったみたいで、撮影中はいつも牛と馬のふたりの人格を自分の中に住まわせていなければならないので精神的にしんどかったそうですね。

体験版は一日分とはいえ、想像以上にボリュームがあり、それは嬉しい誤算でした。面白いゲームは、止め時が難しいので体力と気力が続く限りずっと遊び続けてしまうことがありますが、限度を超えて面白いゲームは逆に永遠とこの世界の中で遊んでいたいという気分を誘い、早々にクリアしてしまうことを避けたくなるため、むしろ断腸の思いで一気に進めずにあえて中断して次の日に楽しみを残すような遊び方になりますね。

続きが気になりすぎて、体験版で『街』の一日をクリアするとすぐに『街』の製品版を探して即購入したのを思いだします。クリアしても、しばらくは『街』のあの楽しくて切ない余韻がずっと残っていた気がします。最初とくに好きだったシナリオはオタク刑事と七曜会でしたが、歳をとるにつれてシュレディンガーの手や迷える外人部隊の味わい深い哲学と悲哀の描写になんともいえない魅力を感じるようになってきます。(牛&馬などの他のシナリオもとても面白く好きですが、先に上げたシナリオはどれも独特の『街』ならではの味があり、また時間がたつにつれて初プレイ時と今では印象が変わったシナリオでした)『弟切草』を買わなければ『街』をプレイすることもなかったわけですが、事前に欲しくて手に入れたものよりも、とくに期待せずに衝動買いしたものとか、偶然の予期せぬ出会いをきっかけにハマった作品は、どこか運命の出会いのような気がして特別な愛着がわきますね。

ウィキペディアをみると『街』の8本のシナリオはメインライターの長坂秀佳さんだけでなく、複数のライターさんがかかわっていることがわかります。長坂さんが関わっているのは「オタク刑事」「七曜会」「シュレディンガーの手」「迷える外人部隊」の4つのようで、いわれてみるとたしかにその4つはとくに、独特のケレン味と含蓄のある個性的な哲学で娯楽性を醸し出すノリが特徴的なストーリーで、どこか通底するものを感じますね。

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『街 〜運命の交差点〜 』のファンアート描いてみました。
似てないキャラとか、描き漏らしたキャラもけっこういますが、そこはまぁ賑やかしということで大目に見てください。

「これだ!」の人、木嵐袋郎

『街』はむちゃくちゃなダイエットをテーマにしたものや、モテモテのプレイボーイに降り掛かる自業自得の災難をテーマにしたシナリオなど、楽し気なドタバタコメディものから、シリアスで重いストーリーまでバラエティ豊かです。そして、その8本のシナリオどれもが魅力的で、どれもが捨てがたいお話であるのも、考えてみればスゴイことですね。さらにスゴイのは、それぞれがまったく異なる背景をもった主人公たちの物語が互いにたまにシンクロしたり、ひとりの主人公の行動が別の主人公の展開に影響を与えたり、複数の脇役が異なるシナリオをまたいで活躍したりと、全体がとても複雑で緻密な構成になっているところですね。

シナリオの重さでいえば、『街』の中では比較的大人しいシナリオである「迷える外人部隊」がヘビーな話ですが、「シュレディンガーの手」もそういったシリアスさにホラー色まで加味した最凶の重量感のあるお話で、最初はちょっと苦手な印象がありました。しかし、今振り返ってみてみると、「シュレディンガーの手」の魅力がジワジワと心の中に広がってきます。

ダンカンさん演じるテレビドラマのプロットライター市川文靖を主人公としたシナリオ「シュレディンガーの手」。寝てる間に何者かが書いて用意された俗悪な自分名義のシナリオをテレビ局に売る事で表向き成功している男が主人公の市川です。ストーリーは、眠りから覚めるといつの間にか出来上がっている謎のドラマ脚本は誰が書いたのか?という謎を追っていくことで話は進んでいきます。市川は文芸雑誌で純文学でデビューした作家ですが、文学では食べていけないために生活のためにテレビ向けの脚本を生業とするようになっていきます。なので本来は人の崇高な部分に訴えかけて感動を喚起するような良心的な傑作を生み出したいと思っているので、自分で書いた記憶の無い自分名義の低俗なドラマがヒットしていくことにやりきれない葛藤と嫌悪感をいつも感じています。その対価として高級ホテルの一室に住み込んで金銭的には何不自由のない生活を手に入れてはいますが、心の中は常に煉獄であり、その魂の苦痛を和らげるためにいつも睡眠薬を常飲しています。

このお話では、作中劇であるドラマ「独走最善戦」の担当である「テレビ太陽」のプロデューサー、木嵐袋郎(こがらしふくろう)とのやりとりが実に感動的に描かれており、味わい深く心に響くものがあります。序盤の重く陰鬱なホラー展開をひっくり返すほど中盤からの木嵐とのからみは素晴らしい展開で、この脚本を書いている作家の本音とも思える「魂の叫び」を感じたものでした。もしかしたらキャリアの長い大御所の長坂秀佳さんですし、ただプロ脚本家としてのテクニックだけで書いているという可能性もあるかもしれない、と思いつつも、それはそれですごいことでもあります。ちょっとそこが気になったこともあり、長坂秀佳さんについてざっとウィキペディアを読んでみると、意外なことが判明して感慨深いものを感じざるを得ませんでした。

「シュレディンガーの手」で実に印象深い役であった木嵐袋郎プロデューサーについて。『街』の原案者、長坂秀佳さんのウィキに、「特捜最前線」からの長年親交を続けてきた無二の友人がテレビ朝日のプロデューサー、五十嵐文郎(いがらしふみお)さんであるとの記載があります。あきらかに木嵐のモデルっぽいですよね。案の定「五十嵐文郎」のウィキでは、この『街』での木嵐役は五十嵐さんがモデルであり、市川は長坂さん本人がモデルであるという情報も記載されてました。

とても好きなシーンのひとつに、市川文靖がウケ狙いのヒット作ではなく、芸術性で人を感動させうる良心的なドラマ脚本で勝負したいという熱意を思い切って木嵐に打ち明けるシーンがあります。いつもヘラヘラとゴマをするだけだった木嵐がいつになく真剣にその情熱に応えるという感動的なシーンです。あたかもご本人の実体験とか創作活動に対する作家の本音を代弁させているように思えるシーンです。当時のその印象は当たっていたみたいで、長坂さんの実際のエピソードに、似た経緯がありました。長坂さんは、脚本業を一年間も中断してホテルに缶詰になって小説作品を書き上げた過去があるそうです。初応募した『浅草エノケン一座の嵐』と題したその本は見事に江戸川乱歩賞を受賞し、小説への希望を感じたものの、何人もの批評家の辛辣な意見にとても意気消沈し苦々しい経験をしたとのこと。こうしてみると「シュレディンガーの手」での主人公市川の発するセリフやその想いや感情など、思ったよりも長坂さんの体験がけっこう反映されてたんだなぁ、と感じました。だからこそ、あの市川と木嵐の魂を震わすような情熱的なやりとりの描写ができたのだな、と改めて感慨に耽ります。

TIPSの魅力(市川編より)

『街』にはテキストの要所要所に補足が必要な本文中の用語を解説する「TIPS」というシステムがありますが、これも『街』の大きな魅力のひとつですね。単調な用語解説は少なく、それ自体で楽しいヒネリのある解説文であることがほとんどです。ときには哲学的に人生を語るシリアスなものや、おふざけ的にウソ情報を解説したり、TIPS内だけで語られる本編の裏設定など、TIPSももうひとつの『街』というか、一見ただの用語解説のシステムのように思わせながら、実は本編と同じくらいの重要な要素になっているのが画期的なアイデアだと感服しました。

TIPSは、8人のキャラごとにシナリオに応じたテイストのノリで書かれているのも楽しく、プレイしているうちにTIPSの解説を読むのも楽しみになってきていることに気付きます。心に残るTIPSもたくさんあるのですが、今回は市川編にスポットを当てた記事ですので、市川編「シュレディンガーの手」に出てくるTIPSの中からグッときたものをいくつか以下に引用しました。(グレー文字は私のコメントです)

「愛」
科学的には脳内分泌物が人間に愛≠感じさせる。それはLSD等の薬物が愛他心や多幸心を増加させるのを見ても明らかだ。人は脳からこんなわずかな物質を分泌させるために右往左往する。しかしそれでも愛≠ェなければ人は生きていけない。

(寸評:市川編はこういったどこかニヒリスティックなヒネリのあるシリアスで哲学的な感慨深いTIPSが多いのも魅力ですね。)

「文学新人賞」
大正末期のユートピア作家「多摩川頓歩」を記念して相談社という出版社が作った多摩川頓歩賞のこと。この賞を登竜門として幾多の作家が文学界にデビューした。ちなみに、この「多摩川頓歩」というペンネームは、台湾のユートピア作家、「タムガー・ワトン・ポー」をもじったもの。

(寸評:原作者である長坂秀佳さんがホテルに篭って書き上げた小説が江戸川乱歩賞を受賞した経緯が元ネタになってますね。こういうウソ情報がたまに紛れ込んでいるのも『街』TIPSの醍醐味。いうまでもなく多摩川頓歩とは江戸川乱歩のことで、そのペンネームの由来がエドガー・アラン・ポーであることをパロった一文ですね。)

「膝枕」
子供の頃、あなたも母親にしてもらったことがあるだろう。そして大人になると、母親以外の人にしてもらえるかもしれない。そんな人がいるとしたら、あなたはその人を大切にしなければいけない。
(寸評:なんともロマンチックなTIPSですが、意外と人間の本質を突いているようでもあり、それをポエティックにサラリと表現する見事なセンスを感じますね。市川編は序盤のホラー展開から、中盤の木嵐との青臭くも熱い展開、そして昔の恋人末永とのすれ違う愛情を描く切ない描写など、プレイするたびに豊穣な展開をみせる贅沢なシナリオでもあることに気付かされ、新鮮な発見をさせられますね。このロマンチックなTIPSも、市川編の物語の意外な包容力を感じます。)

「囲繞(いじょう)」
かこい、めぐらすの意味。われわれは常に何かに囲まれている。たとえば空気。たとえば人。たとえば抑圧。たとえば悪意。たとえば恐怖。たとえば憎悪。たとえば死。たとえば殺意。たとえば欲情。たとえば嫉妬。たとえば絶望。たとえば病。たとえば嫌悪。たとえば孤独。たとえば不信。たとえば愛。

(寸評:厭世的な重いリズムを最後の一言で一気に逆転させる名文にシビレました。用語解説の域を超えて含蓄のある散文詩のような味わいの『街』屈指の名TIPSだと思います。自分にとって最も印象深い一番好きなTIPSです。そういえば「ツィゴイネルワイゼン」というサラサーテの名曲がありますね。ヴァイオリンによる長めのクラシカルな曲なので、序盤の悲壮感のあるメロディだけを耳にする機会が多く、一般にもそういうイメージが強い曲だと思います。ある時気になって最後まで通して聴いたのですが、まさにそのときの印象が、このTIPSを読んで感じた印象とちょうどよく似ていたのでふと思い出しました。「ツィゴイネルワイゼン」は曲の大部分を通じて序盤の悲壮感をひきついだ展開なのですが、曲のラスト近くになると突然急にはっちゃけたような軽快で喜びにみちた演奏になるのでびっくりした覚えがあります。クラシックの著名な名曲というイメージが強かっただけに、そのアヴァンギャルドな構成にグッときたものです。それまでの空気をラストで唐突に一変させるノリというのは、なんとなくパンドラの箱に残った「希望」の寓意を思わせるものがあり、どこかスピリチュアルな深みを感じますね。)

──────以上4本のTIPSは『街 〜運命の交差点〜 』(チュンソフト)の市川文靖編「シュレディンガーの手」より引用


上記のTIPSにも出てくる江戸川乱歩賞のパロディで、長坂さんご自身の乱歩受賞という経験が下敷きになっていたみたいですが、そういえばこの「シュレディンガーの手」というシナリオそのものも、乱歩の影がうかがえますね。市川の左手は経済的な成功者にさせてくれた功労者であると同時に、自分でも毛嫌いする内容の自分の作品を書き上げる悪魔のような存在でもあります。自分の意思に反して従わない市川の左手の謎を追っていくのが物語の主軸になっていますが、なんとなく江戸川乱歩の短編『指』を彷彿としますね。(※確認したところ、本編中ですでに乱歩の『指』への言及がありました。詳しくは追記参照)念のために気になって乱歩の『指』を読みかえしていて気付きましたが、『シュレディンガーの手』のあの切ない余韻を残すラストのピアニストのような手の動きの描写は、もしかしたら乱歩の『指』のオマージュなのかもしれませんね。

他に、「手」繋がりの作品で思い出すのは、手塚治虫の短編『鉄の旋律』ですね。マフィアによって両腕を奪われた主人公がサイコキネシス(念力)で動く鋼鉄の義手を手に入れ、それを操ることによって復讐を決意する話でした。念力とはいえ自分の意思で動かしているはずの義手でありながら、皮肉にもその義手によって自分の意図しない結末をもたらすところが手塚治虫独特の人間哲学を感じて印象深い作品でした。憎しみの心は最終的には自分をも滅ぼすのだ、という手塚先生からのメッセージのようにも思えて、考えさせられる作品でしたね。『鉄の旋律』の義手も最初は自分の身を助けてくれる味方であったはずのものでしたが、いつしか最大の敵になってくところも、どこか市川文靖の物語と重なって興味深いです。

市川文靖の使っていたMAC

まぁ、そんな思い出深い作品『街』ですが、サターン版が出た1998年から数えて、もう20年ちょっと経ってるんですね。たしかに電話ボックスとか、ISBN回線とか、カセットテープ式の録音機とか今はもうなくなってしまったアイテムも散見されますが、今プレイする場合は逆にそういうところも見所になりそうです。むかしは渋谷は通勤圏だったので、休日は渋谷をうろうろする事が多く、馴染みのある光景が舞台になっているゲームというところもどっぷりハマる要因でした。もう何年も渋谷に足を運んでいませんが、ゲーム内に登場したゲーセンとか飲食店など、今はほとんどなくなっているらしく、ちょっと寂しいものを感じます。

『街』に登場する懐かしいアイテムといえば、そういえば市川が仕事で使っているパソコン「Macintosh SE/30」もそうですね。調べてみると当時の値段は日本円で30〜50万円くらい、CPUは16MHz、メモリは最大128Mb、と心もとないスペックですが、これが当時の先端だったわけで、IT関連の技術の進歩の凄まじさを実感します。CPUのクロック周波数は現在はスマホでも約3GHzくらいありますから、20年で当時のハイエンドなPCより200倍ほど速くなってることになりますね。まさに隔世の感があります。

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市川文靖の愛機「Macintosh SE/30」
(PS版「街 〜運命の交差点〜」チュンソフト 1999年)


メモ参考サイト



市川文靖が原稿を書くのに使用していたマック。液晶でないモニタとか、フロッピーディスクの挿入口とか、見た目もすでにレトロマシンといった感じですが、骨董的な価値もあるようで、ヤフオクなどでもマニアの間で中古市場でジャンクで2〜3万円、動作品は4〜7万円ほどで今でも取り引きされてますね。置き場所に余裕があれば私も往年のマックをいじって漢字Talkの世界に浸ってみたいものです。

冴えない役者の馬部と、とある女性にプロポーズするためにヤクザの道から足を洗った牛尾の二役を演じた俳優松田勝さんによる『街』の裏話。牛&馬を演じるにあたっての役作りの話など、いろいろ興味深いお話をされています。舞台裏の狐島三次(鶴見淳司さん)は松田さんを兄貴分のように慕ってらしたそうで、撮影の合間にもよく演技や映画の話などで盛り上がったとか、貴重なお話が満載で面白かったです。

件の江戸川乱歩の短編の全文が青空文庫に納められてました。推理ものではなく、ホラーチックな短い幻想小説です。「シュレディンガーの手」のラストで市川の右手の指が跳ねるように動き出す切なくも崇高なシーンの余韻に浸っていたときに、ふとこの短編を思い出しました。市川のあの指の動きは、キーボードを叩いて原稿を書く動作なのですが、それはキーを打つというよりも、音楽を紡いでいるかのようなリズミカルな動きで、まさにこの乱歩の「指」をイメージしているようにも思えますね。長坂さんご自身を最も色濃く投影した『街』のキャラが市川ですし、江戸川乱歩賞の受賞経験もあり、乱歩には同じ作家として浅からぬ想いもありそうです。市川編のラスト、やっと悪魔の左手から自由になって、本当に書きたかった良心的な芸術作品を紡ぎ出す魂の喜びを、乱歩の『指』へのオマージュとからめて表現したのではないか、などと愚考しています。

※追記(2023/1/29)
この江戸川乱歩の短編「指」ですが、ちょうど街の実況動画を見ていたら、実は市川編の中でこの作品への言及がありました。左手に潜む小人が正体を現すクライマックスのシーンでの市川のセリフにこうあります。「驚きの中で、私は小学生のころ読んだ小説のことを思い出した。それは江戸川乱歩の『指』という、やはり<指>が独自に動く小品だったと思う・・・・。」記事では昔にプレイしたときの記憶で書いていたので、乱歩の「指」に言及があったのはうっかり忘れてました。
posted by 八竹彗月 at 16:51| Comment(0) | ゲーム

2017年03月04日

トランプゲーム『大富豪』について

専用ゲーム機でFFシリーズなどを遊ぶのも楽しいですが、面白ければ面白いほどゲームは「止め時」が難しく、ほんの時間つぶしのつもりではじめてみたものの、結果的に貴重な睡眠時間を削ってしまった、という経験のある人も多いと思います。そういうこともあって、ここ数年私は、花札やオセロなど、サッとプレイできてサッと止めれる無料オンラインゲームのほうがプレイする機会が多くなりました。昔からあるボードゲームやカードゲームの定番は、勝負がつけばそこで終われて、ロールプレイングやアドベンチャーゲームのようにいったんステージクリアしても「次のステージが気になる!」という後引きがありません。

前置きはそろそろ切り上げて本題に入りますが、そうした定番ゲームの中のひとつ、トランプの『大富豪』をオンラインゲームで遊んでいるときにフト思う事があったので、その勢いで記事を書いてみた次第です。『大富豪』というゲームは、なんとなく欧米とかで昔からあるゲームのように思ってましたが、(類似のゲームは海外にもありますが)一応日本発祥のゲームらしいですね。『ポーカー』とか『ブリッジ』などはいかにも海外のゲームといった名称ですが、『七並べ』も外国から輸入されたゲームのようです。で、『大富豪』は、Wikiの記述では、70年代あたりの学生運動が下火になりかけた頃に広まったゲームであるという、作家の三田誠広(みたまさひろ)氏の説を取り上げていますね。たしかに「富豪」、「平民」、「貧民」などに振り分けられたりとか、マルクスとかの階級闘争っぽい概念が垣間見えるネーミングで、なるほどといった感じがします。

そうして考えてみると、このゲームをスリリングなものにしているユニークなルールのひとつ「革命」など、モロにソレっぽい感じがしてきて、学生運動にかかわった学生から発祥したという説もそれなりに信憑性があるように思えてきます。いうまでもなく、このゲームでは大富豪になった者が勝ちです。学生運動というとプロレタリアート(労働者)の主導する社会を理想とする、みたいなイメージがありますが、そうした中で誕生したワリに、ゲームではみんな素直にあこがれの大富豪≠目指してしまってます。なんとなくイデオロギーを超えた人間の本音が垣間みれて面白いところです。

で、一番言いたいのは実はそのことでもなく、このゲームのルールについてです。日本発祥のトランプゲームの中で『大富豪』はもっとも親しまれているゲームで、そのため全国で様々なローカルルールが存在しているようです。そうした細部は置いておき、根本的なルールは「最初に手持ちのカードを全て使い切った者から勝者が決まっていく」というものです。つまり、この『大富豪』というゲームは、自らの資産(手持ちのカード)を競って減らすゲームであり、先に自ら富をゼロにした者が大富豪≠ニ呼ばれ勝者となります。学生運動時代に生まれたというところから、ここに皮肉めいたものも感じたりもしますが、もうすこし素直に考えてみると、どこか奥深いものを感じます。

老子は、何も持たないことは全てを所有することと同じである、というような思想を説いてましたし、イエス・キリストも「与えよ、さらば与えられん」と、得るためにはまず自らが他者に与えることが必須であるといっています。大雑把にいえば、古来からの多くの聖典では、多くを与えた者が多くを得るという見えない世界の法則に言及しています。仏教でいう無執着という考えもまた、単純に欲しいモノを諦めろ≠ニいう思想ではなく、執着しないほうが執着してるより多くを得るということを暗に示しています。先に自分を空っぽにした者から上がりになる『大富豪』というゲームのルールの中に、なんとなくそうした精神世界でのルールを感じた、ということであります。『大富豪』が人気のトランプゲームになったのも、そうした真理の欠片がルールの中に仕込まれているせいなのだろうか?とフト思った次第です。

メモ参考サイト
無料で遊べる『大富豪』(「ゲームのつぼ」様のサイトより)

まぁ、『ババ抜き』や『七並べ』も競って手持ちのカードを減らすゲームではありますが、その減らしてゼロにした者を『大富豪』と称する部分がスピリチュアルな示唆を感じるところです。そういえば『ひぐらしのなく頃に 解』のラストのクライマックスで、『ババ抜き』に関する台詞がとても印象に残っています。これもまた精神世界の深淵を貫くような暗喩があって感銘をうけました。大長編シナリオの画竜点睛ともいえる台詞でしたね。

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1840年に作られた風変わりなトランプの復刻版です。数札がすべてゲーテの作品に想を得た絵柄にスート(トランプのマーク)を組み入れたものになっているお気に入りのデックです。石版画っぽい妖し気な図案にワクワクしますね。いわゆる一般のカードは絵札(J、Q、K)が凝ったデザインですが、このカードの場合は上位札よりも数札がこのようにとても凝った作りになっていてとても面白いです。このような絵柄の中にスートを組み込むデザインのカードは「トランスフォーメーション(transformation 変容)」と呼ばれ、主に欧州のメーカーによっていろいろバリエーションが作られています。コレクターにとってなかなか魅力的なジャンルのカードです。写真のカードは、「GOETHE(ゲーテ)」というタイトルで、イタリアのLo Scarabeoというメーカーによる復刻版です。現在でもアマゾンや楽天などで入手可能です。

トランプ自体は前々から神秘主義的な背景をもったカードという魅力があり、コレクションもしていて個人的になみなみならぬ存在であるのですが、それに加えて昨今話題の絶えない第45代アメリカ大統領が奇しくもプレイングカードの日本での呼び名と同じトランプさんということで、今回の記事も含め、何か自分の中で今年はトランプ≠ェいろんな意味でキーワードになりそうな気がしています。
posted by 八竹彗月 at 03:36| Comment(0) | ゲーム

2013年11月13日

ゲーム四方山話

目ファイナルファンタジー10 HDリマスター
個人的にFFのナンバリングの中で最も好きなFF10のHD版の発売がいつのまにか決定してました。「HD版など出ない」「HD版の噂はデマ」などとささやかれてきたので正直諦めてましたが、スクエニさん流石です。今年の12/26発売ということなので、もうすぐですね〜 寺院巡りの観光気分にまた浸りたいです。FF10のキャラの中で最も好きなのは隠し召還獣のアニマです。FFらしからぬダークでグロい召還獣ですが、そこがまためちゃくちゃカッコイイです。手足が拘束された異常な風体も素敵ですが、「目」から発する衝撃波のカコン!という金属音にもシビれます。シーモアの専用召還獣だとばかり思ってたので、アニマを手に入れて自分で操作できるのを知ったときはすごく嬉しかった記憶があります。HD版でアニマの勇姿をまた楽しみたいです。ちなみにメインパーティーのキャラの中では哀愁のダンディ中年アーロンが渋くて好きです。公式サイト

目rain
購入を考えてるところで、まだ未プレイです。発売中のPS3専用の作品「rain」。PS3で配信されてたトレーラーを見て「ICO」や「風ノ旅ビト」を思わせる感触に惹かれました。迷子になってしまい、姿を失って透明人間となってしまった主人公が、雨が降る夜の街を冒険して行くというシナリオのようです。この雨の街には、もうひとり姿を失った少女がいて、彼女と共に、謎の真相に向けて冒険がはじまる、ということで、このあたりも「ICO」っぽいノリを感じますね。キャラ人気に頼りがちな昨今のゲーム界において主人公自体が見えないというマイナスとも言える要素を前面に出して挑むクリエイター魂に拍手したいです。見えない主人公をどうやって操るのかというと、この舞台には終始雨が降っているので、雨に打たれているときにはうっすら輪郭が浮かび上がり視認できるようになっているようです。主要なモノなのに姿の見えない状態を描いた作品というと、今年の2月に他界されたゲームクリエイター、故・飯野賢治の作品に「エネミー・ゼロ」という姿が見えない敵と戦うゲームがありましたね。こちらの場合は敵の居場所を「音」で感知するというアイデアでしたが、私には難しくてクリアできずに放置したままです。「rain」公式サイト

目STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)
アニメ化もされたようですが、そちらは未見です。当初XBOXのみの販売で、ものすごい話題になってましたから、早くPS3に移植されないか待ち遠しかった記憶があります。知らないうちにすでに移植されてたようで、忘れかけた頃に急に気になって購入して、一気にプレイしました。序盤は「評判ほどグッとこないな、自分には合わなかったのかな」と思ってましたが、例のまゆりのアクシデントを境に一気に物語が面白くなりますね。そのまま勢いでクリアしました。やたらに漫画的に個性の強い濃いキャラが多く、最初はとまどってしまいますが、貧乏学生が電子レンジや携帯電話などの日常的な機器を使ってタイムマシンを作ってしまうという設定が面白く、また、宇宙物理学や量子論などをうまくアレンジしたトンデモ理論も、けっこうちゃんと練られていてソレッぽい理屈になっており、衒学的なノリが楽しかったです。LHC(大型ハドロン衝突型加速器)を使用してミニブラックホールを造る実験は、実際に科学系のニュースで、5次元世界の提唱で話題になったリサ・ランドールの記事で読んだ事がありましたが、そのような科学好きならニヤリとさせられる要素が多いのも特徴ですね。システム的には、あまり分岐もなく、スムーズにシナリオを進めていけるのでストレス無くプレイできました。トゥルーエンド以外に隠し(?)シナリオもあり、計6本のエンドが用意されていて、それぞれ切り口の異なったタイムトラベルSFのバリエーションを見せてくれて面白いです。序盤のなにげない細かいエピソードは巧妙な伏線になっていて、後半どんどんそれが回収されていきます。10年ほど前にネット上を騒がせた「未来人」、ジョン・タイターが作中にも描かれていますが、このゲームシナリオでの「時間論」の骨子もジョン・タイターの論をアレンジしたものになっていますね。ジョン・タイターの面白い所は、ネット上で一般のネットユーザと受け答えをしていて、それなりにリアリティのある「未来人」を演出していた事です。公式サイト

目Heavenly Sword (ヘブンリーソード)
神々が創りし剣「ヘブンリーソード」を巡り、対立する勢力との攻防を軸に描かれる、ナリコとカイのふたりの女性キャラが主人公のアジアンチックなアクションアドベンチャー。肝心のふたりの主人公が日本人ウケする容姿ではないのと、シナリオのボリューム不足が原因なのか、それほど人気作ではないようで、中古ショップでけっこう安値で手に入りました。発売当初に体験版をプレイしていて、背景グラフィックの美麗さにずっと購入を考えていた作品でした。実際プレイしてみると、やはり東洋的な風景の美しいグラフィックにうっとりします。作品の背景になる「場」の描写って、けっこう重要な要素なんだなぁと改めて思いました。まだ未クリアですが、それほどクリアまでのボリュームはないらしいので適当に進めてみたいと思います。肝心のアクションも、無双っぽい感じの爽快なもので、思ってたより楽しいです。カイのボウガン操作は体験版をプレイしたときから難しいな〜と思ってたんですが、ふとオプション設定でコントローラーの傾き検知機能をオフにしてアナログコントローラーで操作したらスンナリ上手くいきました。公式サイト
posted by 八竹彗月 at 12:37| Comment(0) | ゲーム