2015年05月11日

ライフゲームとその他科学ネタ

ひらめきライフゲーム
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目が届く範囲いっぱいまで広がった非常に大きなチェッカー盤を想像してみよう。ほとんどの升目、すなわちセルは空である。このセルのほんの少しにだけ不思議な生きものがおり、これは自分の隣にひどく敏感である。それぞれの運命は周りの数によって左右される。隣人が多いと混みすぎて死ぬし、あまりに少ないと寂しくて死んでしまう。3人だと和気あいあいで新しい生命が誕生するし、2人だと快適な安定を保つ。p262
(「現代数学ワンダーランド」アイヴァース・ピーターソン:著 奥田晃:訳 新曜社 1990年)


これは1970年に英国の数学者コンウェイによって発明されたライフゲームと呼ばれる興味深い数学ゲームの基本ルールを説明したもので、wikiの「ライフゲームのルール」の項を読んでいただければわかるとおり、ライフゲームの主人公である升目一つ分を占有する四角いピクセル生物は、とても単純なルールで増えたり減ったりします。簡単なルールから複雑な世界を作り出していくその様子は、まさに生命の進化を神の視点で眺めているような不思議な感覚に陥ります。このとても興味深いライフゲームの世界を、実に上手く、面白く紹介されている傑作動画を先日見つけてとても感動したのでご紹介します。数年前に作られた、かなり再生数の多い人気動画のようですから、すでにご覧になった方も多いと思いますが、まだの方で、この手の世界に興味のある方はぜひおすすめしたいです。

「ライフゲームの世界」ニコニコ動画

動画の作者さんは、そうとう深くライフゲームを研究していて驚愕しました。丁寧に構成されていて、序盤から惹き込まれますが、回を追うごとに知的興奮と面白さはエスカレートしていきます。最後のほうにいくにつれて、ついには壮大で畏怖を感じるような神懸かった領域にまで到達していきます。クローン技術や核開発技術など、人類はすでに神の領域に片足を突っ込みはじめた時代に突入していますが、こうしたコンピュータの世界も、それをもっとも感じますね。

ひらめきルービックキューブ自動完成させ機
レゴ・マインドストームによるルービックキューブ自動完成させ機、すごいですね〜 波平の自動卵割り機なみにナンセンスな機械ですが、こうした機械は、役に立たないがゆえに、玩具的な面白みを感じますね。
レゴ・マインドストームは、ロボットなどの複雑な機械を作成することが可能なレゴブロックの発展的な製品のようです。しかしまぁ、いろんな事ができるんですね〜 そういえば昔日本にもラジオやブザーなどの単純な機械をブロックを組み立てることで作れてしまう「電子ブロック」という科学玩具がありましたが、今やロボットという現代の先端技術も玩具として遊べる時代になったというのは凄い事です。
ネットでは、こういう感じで、世界の何処かにいる誰かが個人的な遊び心だけでスゴイものを作ってしまう感じの動画をよく目にしますが、そうした情報を得られるのも発信できるのもインターネットあればこそです。情報のあり方自体が日々革命的に変化しているのを感じますね。

ひらめき海の奇妙な生物
放散虫
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自然の芸術、放散虫。「Art Forms in Nature」Ernst Haeckel:著 Dover:刊 1974年
細密な工芸品のような放散虫。その正体は海のプランクトンですが、球形を基本にした様々な形が、まさに神の作る美術品といった感じですね。そのまんま現代アートといってもうなづいてしまう斬新な造形美がスゴイ。
放散虫についての様々な情報や豊富な画像が充実してるサイトRadiolaria.org(英語)

テヅルモヅル
次に、樹木のように枝分かれした腕がウニョウニョ動く海の不思議生物、テヅルモヅルも、奇妙です。ヒトデの仲間のようですが、腕が枝分かれしすぎて植物っぽい形状になっていますが、こういう形態でウネウネ動かれるとゾワッときますね。

コンドロクラディア・リラ
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これが生物?と目を疑う人工物感が半端ない肉食の不思議生物コンドロクラディア・リラ。まさに深海の神秘といった感じです。地球上に生息する全ての生物のうち、人間が認知できている種類はほんのわずかだと言われていますし、まだまだ地球は人間にとって未知の世界のようです。
posted by 八竹釣月 at 02:16| Comment(2) | 数学

2015年01月28日

フラクタル・トリップ

異世界を探検しているような不思議な気分にさせてくれるフラクタル動画の中から、グッときた作品をいくつか紹介させていただきます。

フラクタル幾何学というと、当初のマンデルブロ集合やジュリア集合などの二次元の複雑怪奇な図形だけでなく、昨今ではコンピュータのスペックの驚異的な進化によって三次元に展開されたフラクタル造形をより身近に鑑賞する機会が増えてきたように感じます。ネットにも興味深い立体的なフラクタル造形をたくさん見かけるようになり、ますます凝った表現を見かけるようになりました。90年代あたりに、通称ビデオドラッグという、サイケな幾何学的図形を万華鏡のように変化させたような単純な動画が流行りましたが、昨今見かけるフラクタル動画はまさに現代のビデオドラッグといった感じですね。
フラクタルの面白さは、繰り返しの演算を基本にした一見単純な仕組みでありながら、このような生物のような有機的なカタチを生成出来てしまう事です。木の葉が、その本体である樹木の形状とソックリなのは多くの人が経験したであろう子供の頃の小さな発見のひとつですが、こうしたフラクタルの基礎概念である自己相似形は、自然界のあらゆる所に見いだされるように、自然の多様性を読み解く鍵になる数学的な概念なのでしょうね。

目UNIVERSO FRACTAL
アンコールワットみたいな異世界の遺跡っぽい雰囲気の3Dフラクタル映像。空気の層の表現によって実際の風景のようなリアリズム溢れる映像になっていて吸い込まれるような世界観が素晴らしいです。20分近い力作ですが、映像演出も凝っていて、序盤の遺跡っぽい感じから未来的な異世界観、原始生命が満ちた古代の海底のようなイメージなど、様々な切り口のフラクタル造形が見事です。こうした映像は、凝ったビジュアルでありながら、物語などの"思考"を刺激する要素がないので、フルスクリーンで瞑想用にボーッと眺めるのもいいですね。

目Like in a dream
干上がった海底に散乱した藤壷みたいな光景や、ギーガーの絵に出てきそうな有機的な曲線によって構築された建造物みたいな景色、ダークファンタジーな感じの魔界の遊園地といった風情ですね。

目Morphy's World
立体化されたフラクタルイメージの面白さを自由に表現した感じですね。不思議な世界にトリップします。

目Orion - Spacy Trip
タイトルからすると、遠い宇宙のどこかにある惑星の、高度に発展した都市の風景をイメージしているのでしょうか。

目Living Planet
これもどこか遠くにある不思議な惑星のイメージのようです。造形もさることながら、動きが不気味で面白いですね。まさに魔界のような様相です。

YouTubeでこの手の動画を検索すると必ずヒットするのがKrzysztof Marczakさんの驚異的なフラクタルCGアニメの数々です。3Dフラクタル作成アプリ「Mandelbulber」の作者で、自作のアプリによって生成した数々の素晴らしい異世界の壮大な風景を動画にして公開しておられます。
Krzysztof Marczakさんのサイト「Mandelbulber」

以下は、Krzysztof Marczakさんの再生リストから個人的に気に入った作品をピックアップしました。

目Trip to center of hybrid fractal
脅威の空間。バロック建築のような細かなディティールが壁面に無限に増殖していく不思議な光景に吸い込まれていくようです。文明がとめどなく発展し続け、惑星の内部にまで人類が繁殖していき地下に壮大な都市が構築されている、みたいな感じでいろいろ想像すると楽しいですね。有機的な形状とメタリックな色合いのせいか、どことなくギーガーの描く世界のようなディストピア感がたまりません。

目Mandelbox trip
無重力空間に浮かぶ石造建築の廃墟のような感じですね。無限に入り組んだ巨大キューブの内部が圧巻です。

目IFS fractal morph and flight
壮大な空中庭園。上下左右の概念の無いエッシャーの庭園(「相対性」などの絵)を無限に拡張したような光景ですね。
posted by 八竹釣月 at 06:15| Comment(2) | 数学

2013年10月27日

びっくりするほど増える話

予想と実際が食い違うのは日常よくある事ですが、数学には予想と実際がまったく違う結果になるような問題がよくありますね。今回はそういう感じで、想像した予想が、実際に計算した結果と甚だしくギャップがある、という数学関係のネタをいくつか書いてみます。

どんっ(衝撃)チェス盤と小麦
クイズの本などでよく紹介されているインドの民話に、そうした数学的思考のユニークさを表した話があります。

インドの王様シリムは、顧問のシザ・ベン・ダヒルがチェスのゲームを発明した功績に対して褒美を与えようと考えた。王様はチェス盤の64の升目すべてに金貨を置き、それを彼に与えようというのだ。シザはていねいにこの申し出を断って、別の褒美が欲しいと願いでた。「第1の升目に小麦一粒、第2の升目に2粒、第3の升目に4粒、第4の升目に8粒、というように64の升目すべてに置いて、それをいただきたく存じます」王様はこの"謙虚"な申し出に感心して召使いに小麦の袋を取りに行かせ、望み通りの段取りで小麦を数えるように命じた。

有名な話なので、どこかで聞いた事があると思います。実際に計算してみると、シザの申し出は謙虚どころかとんでもない強欲な申し出であることが判明します。升目には1粒、2粒、4粒、8粒、16粒・・・と置かれ、このまま全ての升目に置いていってもなんとなくこじんまりした量にしかならなそうな錯覚をしてしまいます。10升目には512粒と手のひらに乗せれるレベルですが、
13升目で4096粒になりようやく茶碗一杯分程度の量になります。
20升目には52万4288粒と茶碗161杯分くらいの量に膨れ上がり、23升目では60kgの米俵2俵近く(419万4304粒)に。
30升目は5億3687万912粒、茶碗約16万杯分で、60kgの米俵にすると約201俵。
40升目では5497億5581万3888粒、米俵換算で20万俵。
50升目は562兆9499億5342万1312粒、米俵2億俵を超えます。
最後の64升目は922京3372兆368億5477万5808粒です。
64升目の米俵は3兆俵超えとなりますが、褒美としてもらおうとしているのは「全ての升目」で換算された小麦です。全ての升目の小麦粒の総計は、1844京6744兆737億955万1615粒となります。小麦1億粒で1トンとすると、2000億トンになり、現在の世界の小麦生産量はwikiによると6億トンですから、シザの要求を満たすには世界中の農家ががんばっても3世紀もかかる計算になりますね。
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茶碗一杯分を3250粒、米俵60kgを266万7000粒として計算しました。升目の計算は、1升目=2の0乗、2升目=2の1乗、3升目=2の2乗、4升目=2の3乗、と続きます。全ての升目の粒の和は、律儀に1升づつ足していかなくても、2の64乗からマイナス1した数と等しくなります。
googleの計算機では桁数が足りなかったので、多種多様な計算ができる計算サイト「Ke!san」様のカテゴリ「数学・物理」→「数学公式集」→「対数・指数」にあるベキ乗の計算機を使用して計算いたしました。便利なサイトですね〜


どんっ(衝撃)クイズの本に載ってたネタ
子供の頃は、親戚のお姉さんが持ってた木乃美光のクイズの本を読んだ影響で、クイズ本が大好きでした。クイズ本というと、往年のベストセラー、多胡輝の「頭の体操」(光文社)は、抜きん出てユニークなクイズが満載のシリーズでハマりました。内容だけでなく、問題ページの裏ページに解答と解説、という今やお馴染みの構成も良かったですね。それだけでなく、表紙カバーをカリスマ絵師・伊坂芳太良が手がけ、中のイラストも欧米のイラストレーターのような軽妙なタッチが魅力の水野良太郎が描いていて素晴らしいです。シリーズは23冊を数えますが、とくに、1〜5集目までは内容、デザインを含めとても好みです。8集目以降は未読です。

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「頭の体操」多胡輝:著 光文社・カッパブックス 1967年
第4集目のカラーテレビを全体のテーマにした巻が私はとくに好きです。目次が番組表を模してあり、第1問目はテレビのテストパターンをネタにしてたり、合間合間にCMをパロった風刺画を挟んだりと、とても凝った内容です。本文ページにカラーページが4ページあるというのも、シリーズ中異色の巻です。


長い前置きになりましたが、その「頭の体操」に載ってたクイズで、今回のテーマにふさわしそうな問題を思い出したのですが、肝心の本は現在手元に無く、どうしたものかと思ってふと検索してみたら同じような問題がけっこうヒットしましたので、その中からクイズ・パズル大百科様のサイトより引用します。

ある微生物がいます。この微生物は、1分間に倍に分裂します。この微生物を一匹ビンの中に入れると、一時間で満タンになります。この微生物をビンに2匹入れるとビンは何分で満タンになるでしょうか。

答えはこちらをどうぞ。


どんっ(衝撃)梵天の塔
以前、塔をテーマにした記事でも触れましたが、インドというと梵天の塔(ハノイの塔)の逸話もありますね。ハノイの地にある寺院に、梵天が天地開闢の時に作られた、円盤の刺さった3本の棒がある、という話です。3本のうちの左端の棒に64枚の純金の円盤が刺さっています。これを「一度に一枚だけ動かさないといけない。小さな円盤の上に大きな円盤を載せてはいけない。3本の棒以外の所に円盤を置いてはいけない。」という3つのルールに添って右端の棒に全ての円盤を移し替えるのが目的です。この作業が完了した時に、この世界の終わりが来るといわれています。古(いにしえ)の頃から寺院では僧侶が一日も休まずこの作業を続けているといわれますが、いまだに作業は終わりません。世界の終末を回避するために僧侶たちが怠けているからなのではありません。1回の移動に1秒かかるとして、これを不眠不休で行ったとしても、なんと5800億年もかかるからです。宇宙の年齢は138億年といわれてますが、梵天の塔を完成させるにはまだまだ及びません。同じ宇宙の歴史を42回くらい繰り返してやっと世界の終わりが来ると考えれば、梵天様はなんと慈悲深いのかわかりますね。
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実際にハノイの塔で遊べるサイトがあります。さすがに64枚の円盤移動は不可能なので円盤の数を減らしてあります。初級レベルの5枚ですらけっこうややこしい手順を踏まないとルール通りに移し替えるのは時間がかかりますね。これが64枚となると気が遠くなります。

どんっ(衝撃)笑いと感動の「組み合わせ爆発」アニメ
このようなテーマを取り上げたのは、ネットで以下のような動画をたまたま見たのがきっかけになりました。

『フカシギの数え方』 おねえさんといっしょ! みんなで数えてみよう!

この動画は「組み合わせ爆発」といわれているものを解りやすくアニメで紹介しているものですが、堅苦しい教育ビデオだと思って見ているとビックリします。話が進むにつれてトンデモナイ展開をしていきます。これがトンデモ理論などではなく、数学の世界では当たり前の事であることが面白いですね。

どんっ(衝撃)巡回セールスマン問題
上記の動画のような組み合わせ爆発の例として、「巡回セールスマン問題」というのがあります。あるセールスマンが幾つかの都市を一度ずつ訪問して出発点に戻ってくるときに、移動距離が最短になるルートを求める問題です。図のように訪問する箇所の数が少なければ楽なのですが、10都市を巡回する場合、最短の道を見つけるためには36万2880通りの可能性から絞り込まなくてはなりません。こうした組み合わせ関係の問題は、選択肢が少し増えただけで一気に膨大な計算量を必要とするので、コンピュータでもそのまま計算させるのはすぐに限界に行き着いてしまいます。なので、もっと計算を楽にするために様々なアルゴリズムが考えられているようです。チェスの名人を打ち破ったコンピュータがむかしニュースになりましたが、そうしたチェスのプログラムもこうした問題の解法と通じるものでしょうね。
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タグ:数学
posted by 八竹釣月 at 01:10| Comment(2) | 数学

2012年12月18日

バナッハ・タルスキーのパラドックス

ここにひとつの球がある。これを切ったり割ったりすると、いくつかの断片ができる。ここまではいたって普通の日常でも起こりうる現象です。さて、この断片を集めてもう一度くっつけるとどうなるでしょうか? 

元の球と断片の集合は同じ体積ですから、元の球に戻るだけ、というのが常識的な推察ですが、ポーランド出身のふたりの天才数学者バナッハとタルスキーは、「同じ大きさの球を二つ作ることができる」ことを完璧に証明してしまいました。『バナッハ=タルスキーの定理』から導きだされる不条理な結論ですが、彼らはこの定理を1924年に発見し、その証明は数学的に正しい定理であることがすでに検証済みだそうです。この定理からは、同じ大きさの球を2つどころか好きなだけ作る事が可能になり、さらには、分割した球の断片を使って2倍(あるいはそれ以上)の体積の球をつくることも可能なのだそうです。

「じゃあ、金塊もこの定理を使って増やせるのか?」となると答えは「NO」です。まず、この分割方法には具体的な手段(どう切ったら良いか?など)が存在しません。『バナッハ=タルスキーの定理』がこのような奇妙なパラドックスを産み出す原因は、「体積という概念は(例えば面積よりも)確定的な概念ではない」ところにあるそうで、ひとつの球を使って同じ大きさのふたつの球を作るという矛盾は、そもそも定義された「体積」というものが存在しないことから生じているようです。このファンタジックな空想を刺激する定理は、数学者でありSF作家でもあるルディ・ラッカーが小説「ホワイトライト」(早川文庫)でもネタに使っています。普段、当たり前のように疑問を持たずに考えている「体積」という概念が、数学的には不明瞭な概念だというのは意外ですね。

以上記事は、「バナッハ・タルスキーのパラドックス」砂田利一著(岩波科学ライブラリー49 1994年発行)を参照しました。

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(左)「バナッハ・タルスキーのパラドックス」 (右)「ホワイト・ライト」ルディ・ラッカー著 早川文庫 1992年
タグ:数学
posted by 八竹釣月 at 10:49| Comment(2) | 数学

2012年10月01日

天才数学者 ジョン・フォン・ノイマン

ジョン・フォン・ノイマン(1903〜1957)はハンガリーのブダペスト出身のアメリカの数学者。数学・物理学・工学・計算機科学・経済学・気象学・心理学・政治学に影響を与えた20世紀屈指の大天才。原子爆弾開発のためのマンハッタン計画に参加していた人物でもあり、日本人としては複雑な心情になりますが、やはりその超人的な頭脳には畏怖を覚えざるをえません。アラン・チューリングと並んでコンピュータ理論における最も重要な人物のひとりでもあり、現代社会において彼の業績の恩恵にあずかっていない人間は皆無なのではないでしょうか。あまりの頭の回転の速さは電光石火と評され、本当か嘘か解らないいろんな逸話に彩られた人物で、とても興味を惹かれます。

【ゲーム理論】
「賭けるか引くか」「つき合うか別れるか」「協調するか裏切るか」社会生活の中のあらゆる部分でみられる駆け引きを数学モデルで厳密に分析する応用分野の広い学問で、ノイマンとジョン・ナッシュというふたりの天才によって創始された理論です。
そもそも私がノイマンに興味をもったのはダグラス・ホフスタッター著「メタマジック・ゲーム」で、ゲーム理論の有名なモデル「囚人のジレンマ」を面白く紹介している章があり、それを読んだのがきかっけでした。とくに、ロバート・アクセルロッドによる「囚人のジレンマ」のモデルを応用した繰り返し型のコンピュータシミュレーションの紹介はとてもスリリングな内容で凄く面白かったです。これはアクセルロッドの著書「つきあい方の科学」にも書かれている内容ですが、一部の専門家からは批判もある内容で一概に鵜呑みにはできないのかもしれませんが、「生き方」というか「人生論」的なものまで数学モデルでの解釈が可能性なのかもしれない、という展望を感じさせるユニークなものでした。

【自己増殖する機械】
ロボット開発がまだファンタジーだった時代にすでに「自己複製する機械」のアイデアを着想。つまり機械が生物のように子供を作ることが可能か?という問題で、彼は独自の数学モデルを元に「可能である」ことを証明しました。その論証はDNAの複製原理とよく似ているようで、これを証明したのはDNAが発見される前の話であるということにも驚かされます。

【ノイマン伝説】
ひらめき6歳で父と古代ギリシャ語で冗談を言い合うことができた。10歳でウィルヘルム・オンケンの『世界史全集』全44巻を読了し歴史と現代の類似点を論じたりそれを土台にした政治や軍事に関する議論をすることができた。

ひらめき世界最高の頭脳が結集する米国プリンストン高等科学研究所。ゲーデルやアインシュタインも在籍していたこともある超エリートが集う機関ですが、ここで語られたノイマンに関するジョークがあります。「フォン・ノイマンは人間ではない。人間について詳しく研究し、人間を完全に真似ることができた半魚人だ」天才達の中にあってもなお秀でた頭脳の持ち主であることが際立っていたのでしょうね。

ひらめき「私の知る限りでは、フォン・ノイマンは本や記事を一度読めば、一言一句たがわずそのまま引用することができた。それだけでなく、何年後でも瞬時に同じ事をすることができた。また、少しも速度を落とすことなしに、それを元の言語から英語に言い換えることもできた。あるとき、フォン・ノイマンの能力を試してみようと、『二都物語』の冒頭の部分を言ってみてくれと頼んだ所、一瞬もためらうことなく即座に第1章を暗唱しはじめ、もういいというまで10分か15分暗唱し続けた」ハーマン・ゴールドスタイン『計算機の歴史』

ひらめき妻クララの語るノイマン「夫は昼食に何を食べたかは思い出せなかったけれど、15年前に読んだ本を一語一語思い出すことが出来ました」

ひらめきノイマンの家で開かれたパーティに出席したビザンチンの歴史についての有名な権威がノイマンと歴史について議論をはじめた。しばらくして歴史上のある日付について意見が別れた。そこで資料を取り出して調べてみるとフォン・ノイマンのほうが正しかった。数週間後、件の歴史家はノイマン家にまた招待されたが、彼はフォン・ノイマンの妻クララに電話をかけてこう言った。「ジョニーがビザンチンの歴史の話をしないと約束してくれるなら伺います。私はビザンチンにかけては世界一の権威だと思われています。その評判を落としたくはありませんから」

ひらめきフォン・ノイマンは6歳で8桁の割り算を難なくこなすことができ、8歳で微積分までこなすことができた。

ひらめき一見すると無限級数の和を求めなくては答えが出なさそうな面倒くさい問。実は考え方をちょっと変えれば小学生でも解ける簡単な算数だったりするという、クイズの本によくのっていたりする問題があります。ある人がフォン・ノイマンにこの問題を出したところ、ふと上を見上げて即座に正解を言ったそうです。その人は「なぁんだ。タネを知ってたんですか」と尋ねるとフォン・ノイマンは答えたそうです。「タネって何だい?無限級数の和を求めただけなんだが」
(ノイマンに出題したのはこれと似たクイズだと思われます。)

ひらめきノイマンの天才ぶりを表現した有名なジョーク
「核物理学の計算を行うとき、フェルミは手回し計算機で、ファインマンは計算尺で、ノイマンは天井を見ながら計算した」
(ちなみにフェルミもファインマンもノーベル賞を受賞したこともある天才物理学者です)

人間の領域を超えた天才といわれたくらいの人物なので、彼につきまとう伝説も信じがたい面白いものが多いですね。こことかここなど、他にもそういった伝説を紹介しているサイトがあって興味深いです。ついでにノイマンの肉声が聞けるインタビュー動画

以上ネタ元はゲーム理論の紹介を中心に書かれたフォン・ノイマンの伝記『囚人のジレンマ』ウィリアム・パウンドストーン著その他を参照しました。
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タグ:数学
posted by 八竹釣月 at 08:48| Comment(0) | 数学