気になる曲やふと聴きたくなった60〜80年代あたりの曲をチョイスしました。気ままに選んでいますが、結果的に何曲か反戦歌もはいっています。とくに世相を意識したわけではないですが、やはり考えさせれるものがあります。
相田みつをさんの言葉にもありますが、「奪い合えば足りぬ。分け合えば余る」というのがこの世の真理なのだと思います。奪い合う地獄から、分け合う天国にしていくのが人間に与えられた地球からの使命なのではないか?と思う今日この頃。言うほど簡単なものではないですが、結局は世界はそんなおおげさなものではなく、実際には私やあなたなど、ひとりひとりのリアルな人間が構成しているわけでもあり、だからこそ、自分を成長させていくことが、遠回りなようでいて実は一番確実な平和への道なのかもしれません。
ジョン・レノンが音楽を通して平和を訴えたのはそういう意味もあったのだろうと思います。まずは友達関係とか家族とか恋人とか、そういうひとりひとりの身近な小さなところを平和にしていくことが、結果的に世界平和に繋がるのだ、という思想はジョンだけでなく、あのマザー・テレサもしばしば言及していましたね。昔はジョンの歌う平和も、しょせんブルジョワジーのお遊びなんだろうな、くらいにしか思いませんでしたが、今思うに、実はそうではなく、あれほどの影響力のある存在に上り詰めた彼だからこそ、その影響力を人類規模の幸福のために行使するのが自分の使命だと考えてのことだったように思えてしかたありません。
前置きからのつながりでド定番の名曲から。「イマジン」といえば、もはや学校の音楽の教科書に載ってしまうくらいの古典になってしまったことで、あまりその意味をまじめに吟味しずらい「いまさら感」もありますが、やはりその純粋でストレートなメッセージは永遠に普遍的な真理を含んだものだと再確認させられます。平和とか反戦とかいうとどうしても左翼的なイデオロギー色を感じてしまうところもありますが、ジョンが訴えたかったのは、そんな右とか左とかのレベルの平和ではなく、そんな小賢しいイデオロギーなど考えたこともなかった子供のように無邪気にすべての生命が愛し合う世界を実現することであり、そうした世界を迎えるための一粒の種を撒くことがジョンが音楽を通してやりたかったことなのじゃないだろうか、と思えてきます。
ヨーコのせいでジョンが政治的になってしまい、ビートルズ時代のような無垢な芸術性を失ってしまったと嘆くファンもいたようですが、前置きでも書いた通り、ジョンが平和運動をはじめたのは使命感のようなものであり、それは、愛する子供達にそういう平和な未来で過ごして欲しいという親としての愛情もあったのかもしれませんね。
「マインド・ゲーム」のほうは、ジョンの詩人としての飛び抜けた才能と哲学的なメッセージが見事に結実した傑作ですね。私たちは、いつも心の中で何かと争っているけど、それが究極的には戦争の種になっているんじゃないのかい?ということを暗に示唆している感じで、深い精神性を感じる曲です。「真実を探すのは聖杯を探すくらい難しいなんて人は言うかもしれないけど、きみは知ってたはずじゃないか、愛≠アそが答えだってことを」

名曲「この素晴らしき世界」のロックなカバー。たくさんのアーティストがカバーしていて、レゲエ風やボサノヴァ風など様々なバリエーションを聴き比べるのも楽しいですが、中でもアメリカのバンド、クラークスによる勢いのあるこのロックアレンジが好みです。
オリジナルバージョンのサッチモの「この素晴らしき世界」です。
───青い空、白い雲。街を見れば、友達同士がやぁ調子はどうだい?≠ネんて握手しているよ。照れくさいから愛してるよ≠ヘ心の中で言いながらね。そう、ぼくは思うんだ。ああ、なんてこの世界は素晴らしいんだ!と。───といった感じのハートフルな歌詞が胸を打ちます。春の午後の陽射しのような牧歌的な平和な世界を歌っていますが、作詞作曲のジョージ・ダグラスがベトナム戦争を嘆いて、平和な世界を夢みて理想の世界を書いたのがこの歌だそうです。悲観的な空気が蔓延する時代だったからこそ、明るい未来を願う気持ちが生み出した名曲でもあったんですね。
マイク・オールドフィールドといえばホラー映画の金字塔「エクソシスト」のテーマ曲にもなった「チューブラーベルズ」によって世界的に知られるプログレ系のミュージシャンですね。私も子供の頃に親戚のおねえさんが持っていた映画音楽をセレクトしたオムニバスに「チューブラーベルズ」が入っていたのを聴いたのが初めてでした。映画は未見でしたが、美しくミステリアスな独特の旋律が気になって、映画のほうも無性に気になってテレビ放映された「エクソシスト」をドキドキしながら見た覚えがあります。他にはどんな音楽を作る人なのだろう?という興味で「クライシス(Crises)」というアルバムを買った覚えがあります。その中でこの2曲がいたく気に入って、それ以来たまに聴きたくなるフェイバリットソングとなりました。2曲ともボーカルはマギー・ライリー(Maggie Reilly)。素朴で素直な歌唱がアーティスティックに作り込んだ曲とうまく馴染んで耳に心地いいですね。
出だしのカッティングギターがカッコイイですね〜 スリー・ピーセズはトランペット奏者、リンカーン・ロスを中心に結成されたソウル系のジャズグループ。
「The April Fools」はときおり聴きたくなる大好きなお気に入り曲のひとつです。邦題は「幸せはパリで」で、これは同名の映画のサントラとして作られた曲です。天才的メロディーメーカー、バート・バカラックの屈指の名曲のひとつですね。パーシーフェイス・オーケストラのバージョンを最初に聴いて惚れ込んでしまった曲ですが、このディオンヌ・ワーウィックのバージョンも素敵ですね。そういえば、YMOの高橋幸宏さんのソロアルバムで「薔薇色の明日」が一番好きですが、このアルバムにこの曲を歌うユキヒロさんのカバーが収録されてます。こちらも絶品です。
バカラックとディオンヌ・ワーウィックの最強コンビによる70年代の大ヒット曲、邦題は「恋よ、さようなら」です。バカラックがハル・デヴィッドと共にミュージカル『プロミセス・プロミセス』用に書いた曲のようですね。歌詞の内容は、「恋は苦しい、だから恋をしないと決めたのに、恋をしないというのもまたそれはそれで苦しい。」という感じの思春期にありがちな乙女心を歌っていますが、まぁ、恋に限らず、人生は不条理の連続で、後になって思うと、苦しみというのは、それを乗り越え、同じ苦しみにもがく他者に共感出来る心を育ててくれる魂の糧でもあります。とある禅師も言っていたように、苦しみに対しては、下手に逃げようとしたり恐れたりせずに、人生において避けることのできない必然的な要素であることを理解して、あえて諦観して苦しみと正面から向き合うと、意外と思ったほど苦しくなかったりする、という話だった気がしますが、これは体験上本当だと思います。苦しみの7割8割は実際に苦しみを体験する前の脳内の想像が生み出す不安や恐怖であり、苦しいと思っていた実際の事柄自体は(苦しいことは苦しくとも)意外とそんなでもない場合が多いですね。件の禅師は誰だったか調べてみたら、あの一休さんでした。「有漏路(うろじ)より 無漏路(むろじ)へ帰る 一休み 雨ふらば降れ 風ふかば吹け」という一休さんの句があります。人生というのは生と死の狭間の休憩所であり、また、迷いの世界から迷いのない悟りの世界へ向かう旅路である。そして苦しみというのは苦しみを乗り越えれる自分を造るために人生に必然的に起こるテストのようなものだ。逃げずに苦しみが来るなら来るにまかせておけ、それは思うほどたいしたことじゃない。といった意味です。
こちらもディオンヌ・ワーウィックのお気に入り曲で、邦題は「あなたに祈りをこめて」です。この曲もバカラックとハル・デヴィッドのコンビの作品で、1967年にディオンヌ・ワーウィックにより録音されて大ヒットしたようです。アレサ・フランクリンもカバーしていて、アレサのバージョンはR&Bテイストのソウルフルな感じですね。アレサの他にもいろんなアーティストにカバーされていますが、中でもお気に入りなのはエキゾチカの筆頭、マーティン・デニーによるカバー(アルバム「Exotic Love」に収録)で、レトロでサイケなモンド感あふれるインスト曲です。
歌詞は、一日中いつでも恋人への想いを抱いて生活している女性の気持ちを歌った、ある意味ありふれた恋愛の詩のようですが、実は、この主人公の女性の想い人はベトナム戦争で出兵した男性で、彼の無事を祈っているという裏設定(注)があるようです。軽い歌詞のようで意外と重い、というか深いですね〜
(注)wikiによると音楽ライターのセレーヌ・ドミニクによるバカラックの研究本『Burt Bacharach Song by Song(英語、ペーパーバック、2003年刊) 』に書かれている逸話のようです。
これもディオンヌ・ワーウィックの代表曲のひとつ、ハル・デヴィッド作詞、バート・バカラック作曲の名曲です。メランコリックでしっとりしたムーディーな曲ですね。
「You're No Good」、すごくカッコイイ曲ですね〜 1963年の曲で何人ものアーティストにカバーされている名曲のようで、最初に聴いたのは別のシンガーのバージョンでしたが、このディー・ディー・ワーウィックのバージョンが一番カッコイイですね。クリント・バラード・ジュニアによって書かれた曲で、調べてみると、この曲を最初に歌ったのが彼女のようです。ディー・ディー・ワーウィックはアメリカのソウルシンガーで、ワーウィックの名前にもしやと思って調べてみると、案の定、あの名シンガー、ディオンヌ・ワーウィックの妹とのことでした。しかもホイットニー・ヒューストンの従妹でもあるようで、一見恵まれた幸福な環境のように思えますが、実際はホイットニー・ヒューストンとはプライベートな部分で根深い確執があったようです。また、持病の糖尿病によって健康を害していたこともあり姉のディオンヌに看取られて66歳で亡くなっています。(ちなみに姉のディオンヌ・ワーウィックは2022年現在81歳でご健在です)彼女の深みのある歌唱の背景には、たしかに深みを与えるだけの人生の苦悩があったようです。
引き続きディー・ディー・ワーウィックの曲です。エモーショナルで気持ちいい曲ですね〜
邦題は「愛の歴史」。ミシェル・フーゲンはフランスの歌手兼作曲家。日本のコーラスグループ、サーカスによる70年代のヒット曲「Mr.サマータイム」はこの曲の日本語カバーです。原田知世もオリジナルのフランス語歌詞をアルバム「Egg Shell」の中でアヴァンギャルドなアレンジでカバーしてましたね。
ジプシー・キングスによるイーグルスの名曲「ホテル・カリフォルニア」のフラメンコなカバー。「ホテル・カリフォルニア」は名曲だけあってカバーも多いですが、このジプシー・キングスのカバーも情熱的でエモーショナルな感じがイイですね〜 ボブ・マーリーのレゲエな感じのカバーも好きです。
レトロな癒しの異空間が広がるような感じの気持ちいい曲ですね。ウラジミールコスマはルーマニアの作曲家、指揮者、ヴァイオリニスト。
陽気なラテンのノリが気持ちいいですね。イーディ・ゴーメは、アメリカのポップス・シンガー。邦題は「恋はボサノバ」、1963年に大ヒットしたようです。
(2022/10/19追記)
イーディー・ゴーメといえばこの曲を忘れてました。ラテンな感じのカッコイイ曲ですね。この曲はブラジルのジャルマ・フェヘイラ(Djalma Ferreira)が1959年に作曲したボサノヴァ「Recado」の英語カバーで、日本でも80年代にCMに使われたりしたようで、聞き覚えのある方も多いと思います。
イーディー・ゴーメの「The Gift」の元になった曲「Recado」は、ブラジルのギタリスト、ラウリンド・アルメイダ(Laurindo Almeida)もカバーしていて、こちらもジャンゴ・ラインハルト感のある気持ちいい逸品です。そして、この曲の出だしのモンド感のあるいい感じのフレーズ!このフレーズはヒップホップグループ、サウンド・プロバイダーズの「Place To Be」(2006年)という曲(下記リンク参照)のサンプリングのネタ元ですね。この曲もすごく好きな曲です。
上記、ラウリンド・アルメイダの「Recado」カバー曲からサンプリングしたフレーズをお洒落にアレンジしててかっこいいですね。サウンド・プロバイダーズは好きなグループで、彼らの出した三枚のアルバム全てCDで持ってますが、2006年以降は活動を休止しているのか新作の噂を聞きません。気になりますね〜 ちなみに曲は2006年のサードアルバム「True Indeed」に収録されています。
(追記おわり)
ボブ・ディランの『ノッキン・オン・ヘヴンズ・ドア』です。昔深夜テレビで遠藤ミチロウさんがギター一本でこの歌をオリジナルの日本語歌詞にアレンジして熱唱してたのがきっかけで原曲が気になり、ボブ・ディランの原曲が収録されているアルバム(映画『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』のサントラ)を買った覚えがあります。ミチロウさんバージョンはヘビーな暗黒パンクな感じの歌詞にアレンジしてましたが、ボブ・ディランの原曲のほうの歌詞はベトナム戦争を憂う反戦歌です。ミチロウさんが『ノッキン・オン・ヘヴンズ・ドア』を熱唱していた件の深夜番組は90年代初頭の『詩人ナイト』と銘打った特番(テレ朝だったかフジだったか失念)で、どこから見つけてきたのかキャラの濃い素人詩人達が自作の詩を魂を込めて朗読し、それをミチロウさんをはじめリポーターの東海林のり子さんなど数人の審査員が評価をくだして最後に優勝者を決める、という感じの番組でした。出演した素人詩人の中にはドリアン助川率いる結成したばかりで無名だった時期の「叫ぶ詩人の会」もいてインパクトのある番組でした。
以前にもチョイスしましたが、反戦歌繋がりでサイモン&ガーファンクルの『スカボロー・フェア』です。反戦歌といえば、この曲も印象深いですね。といってもイデオロギー色を前面に出さずにポエティックに表現しているので、難しいことを考えずとも雰囲気に浸れる名曲ですね。美しい旋律のイギリスの伝統民謡をベースに、ポール・サイモンの反戦の詩が輪唱のように重なるところが奥深いです。この曲もベトナム戦争への憂いを歌っていて「すでに目的を忘れた戦争のために兵士たちは戦う」というような厭世的な反戦の詩も魅力的ですが、ベースになっている民謡の詩も不思議なテイストでユニークですね。遠くにいる恋人に「針を使わずに縫い目の無いシャツを作って欲しい」と不可能なことを注文するような歌詞、それに続けて「パセリ、セージ、ローズマリー、タイム」と、ハーブの名前を呪文のように羅列する奇妙な構成が謎めいています。できないことをかつての恋人に頼むくだりは、もう心が離れてしまって恋人に戻ることは無理だということを遠回しに伝えているのでしょうか。ハーブの羅列は、魔除けの意味があり、強い香りを嫌う魔物を祓うためのもの、という説もあるようです。