2016年12月19日

懐かし紙もの

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部屋を整理してたら、忘れかけていた紙もののコレクションなどがいろいろ出てきたので、一部を少しご紹介します。時代を超えて残っているこうした古いものを見ていると、自分が生まれる前の知らない時代であるにもかかわらず、ノスタルジックな不思議な気分にさせられます。骨董でも古本でも、今そこに存在するということは、現在まで無数の人々の審美眼によって「美しい」「面白い」というポジティブな評価を受けてきたことの証です。永い時間に淘汰され、捨てられずに生き延びてきたモノたちは、そうした意味でも、新しいものとはまた別の魅力がありますね。

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デザインが欧州の絵本っぽいテイストでお洒落ですね。「森永チューレット」は、森永製菓が1956年から1975年にかけて製造・販売していたソフトキャンディ。子供が飲み込んでも大丈夫な、食べられるチューインガムをテーマに開発された商品で、現在のハイチュウの前身となった商品のようです。

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「森永チューレット」の裏側。

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「サンデーチウインガム」戦前のパッケージデザインは妙な怪しさがあっていいですね。

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「サンデーチウインガム」の裏側。

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「ちえのわクラブ」というのはラジオ東京(現TBSラジオ)の開局当時、昭和20年代に放送されていた子供向けのクイズ番組のようです。これは、その小冊子。

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松島トモ子と並んで当時の人気子役タレントだった小鳩くるみちゃんによる出題ページ。

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こちらも当時の児童歌手の滝川正子ちゃんによる出題と、解答ページ。
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2016年09月02日

古いブリキ缶

ちょっとした小物入れに昔のお菓子や薬などのブリキ缶などを使ったりしています。実用的な面よりは、部屋にレトロなアクセントを加えてくれる面で活躍してくれています。今回はそうした感じで現役活躍中のブリキ缶のコレクションをいくつかご紹介します。

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「馬印青色ゼンマイ」の缶。蓄音機に使われるゼンマイが入っていた缶のようです。青地に赤いペガサス(天馬)という奇妙な配色がシュール感をいっそう高めています。

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今はとりあえず柘榴石(ガーネット)の原石を入れてます。

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鉱物や化石などを飾っているキャビネットに一緒に置いてみました。

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戦前の「ホドヂン錠」のブリキ缶。虫よけの王≠ニいうキャッチコピーがありますが、以下の広告からわかるとおり、ヤブ蚊などの虫除け剤ではなく、衣類の虫除け剤のようです。

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同上の側面と中。今のところボールペン入れにしてます。

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昭和9年(1934年)の婦人倶楽部の付録の裏表紙に掲載された「ホドヂン錠」の広告。左隅にこの「ホドジン錠」の発売元が書かれていて、「金星商会」とあります。稲垣足穂的な天体ロマンな感じのカッコイイ会社名ですね。

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こちらも戦前の婦人雑誌に掲載れた「ホドヂン錠」の広告。

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ベビーパウダー「シッカロール」の缶。明治39年(1906年)に発売開始された和光堂を代表するロングセラー商品で、パッケージデザインも時代ごとに興味深い変化があってコレクター心をくすぐります。

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同上の側面。中身はそのまんまベビーパウダーを詰め替えて使用しています。

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こちらは紙箱製の「シッカロール」。上の缶とほとんど同じデザインに見えますが、よく見ると婦人の髪型が微妙に異なっています。下記のサイトによればこちらの紙箱は戦前のもので、上のブリキ缶は戦後(昭和20頃)みたいですね。

参考サイト
メモシッカロールの歴史(NTTコム「ニッポン・ロングセラー考 vol.88」)

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森永ミルクキャラメルのお馴染みの伝統的な黄色のデザインですが、ブリキ缶バージョンはちょっと珍しいような気がします。商標登録の文字が逆読みなので戦前のものでしょうね。調べてみたら森永ミルクキャラメルの歴史は明治時代にまで遡るそうで、思ったより古くからある歴史のある商品なんですね〜

参考サイト
メモ森永ミルクキャラメルの歴史

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明治の粉ミルクの缶。少女の絵柄が可愛い。絵の少女の持っているのも同じ缶で、その缶にも同じ少女が描かれ、無限の入れ子構造を想像させます。そうしたちょっとした不思議感も見所です。

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アールデコなデザインの「ビクトリヤ」のブリキ缶。文字が右から左への逆読みでアールデコというと昭和10年前後あたりのものでしょうか。「保温腰衣附」とありますが、どんな商品が入っていたのかちょっと見当がつきません。「ビクトリヤ」というと昔の婦人雑誌の広告で、布製のナプキンなど生理用品の広告を見たことがあるので、そういう系の何らかの婦人用のエチケット用品のたぐいが入っていたのかもしれません。

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同上の側面。凝ったデザインがいい味出してます。

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森永のクッキー詰め合わせ「クララ」の缶。

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同上。側面。

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こちらも薔薇をあしらった砂糖の缶です。

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「NAPOLEON」というブランドのレコード針のケース。

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インド製の固形水彩絵の具セットのようです。フタに描かれたモンドな感じの「見ざる聞かざる言わざる」のイラストが雰囲気だしています。「見ざる聞かざる言わざる」というと、日光東照宮などで知られる「見ザル、聞かザル、言わザル」の「三猿」が思い浮かびます。「見ざる聞かざる言わざる」は、語呂が良いこともあって、いかにも日本発祥だと思い込んでましたが、古代エジプトやアンコールワット遺跡にも見られるモチーフのようで、意外にも外国から伝わったものだそうです。なぜインドの雑貨にこのモチーフが使われているのか気になって調べてみたのですが、いい勉強になりました。
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2016年05月31日

浪漫鉄道

電車血があつい鉄道ならば…

列車は「旅」の象徴であり、旅は「人生」の象徴であります。そういうイメージも手伝って、列車というのはいつもどこか叙情と哀愁を感じる乗物という印象があります。私は鉄道に詳しくはないので鉄道オタクを自称するレベルにはいないのですが、最近昔の汽車の写真を集めはじめていて、鉄道マニアの人の気持ちがなんとなくわかるような気がしてきました。そう鉄道とはロマンそのものなのです。

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戦前の児童雑誌『センセイ』(幼女の友社 昭和5年[1930年])より 

ちなみに、電車と汽車の違いですが、「電車」はパンタグラフと呼ばれる部分から上方に張られている架線から電力を受け取って走るタイプのことで、「汽車」とは主に「蒸気機関車」を指しますが「ディーゼル機関車」など電車以外の列車を含む総称でもある、ということです。また、電車というと、なんとなく電気機関車の略称のように思い込んでいたのですが、厳密には区別されている言葉のようで、普段何気なく使っている言葉も意外と一筋縄でいかないものですね。

メモ参考サイト 「鉄道豆知識」

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860型 タンク機関車 1-B-1型 (明治26年[1893年] 製造:鉄道作業局神戸工場)国産1号機。英国人技師リチャード・フランシス・トレビシックの指導により我が国初の蒸気機関車が製造されました。

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C51型加熱テンダー機関車のお召列車牽引 2-C-1型(大正8年[1919年] 製造:川崎車両、三菱造船など)C51型は扱いやすく、パワーもあり、よく走る、とても優秀な機関車だったそうで、旅客車両としてだけでなく、お召し列車(おめしれっしゃ=天皇、皇后、皇太后が使うために特別に運行される列車)にもしばしば使われたそうです。

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8550型 テンダー機関車 1-C型 (明治32年[1899年] 製造:スケネクターデー社)九州鉄道が主な舞台だったそうで、その無骨な外観通り、牛のようにのっしのっしと尻を揺らしながらスタートするが速度が乗ると俄然パワフルな走りを見せてくれたそうです。

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弁慶号テンダー機関車 1-C型 (明治13年[1880年] 製造:米国ポーター社)威勢良く北海道を走っていたそうです。カランカランと優雅な鐘が鳴るユーモラスな機関車として親しまれてきたようですが、可愛らしい外見に似合わず200馬力を超える当時としてはなかなかのパワーもあったそうで、北の大地の開拓に大いに貢献したようです。


血があつい鉄道ならば
走りぬけてゆく汽車はいつかは心臓を通るだろう
同じ時代の誰かが
地を穿つさびしいひぴきを後にして
私はクリフォード・ブラウンの旅行案内の最後のペーシをめくる男だ
合言棄は A列車で行こう だ
そうだ A列車で行こう
ぞれがだめなら走って行こう

時速一○○キロのスピードでホーマーの「オデッセー」を読みとばしてゆく爽快さ!
想像力の冒険王! テーブルの上のアメリカ大陸を一日二往復目 目で走破しても
息切れしない私は 魂の車輪の直径を
メートル法ではかりながら
「癌の谷」をいくつも越え捨ててきた

血があつい鉄道ならば
汽車の通らぬ裏通りもあるだろう
声の無人地域でハーモニカを吹いている孤独な老人たち! 木の箱をたたくとどこからともなく這い出してくる無数のカメたち
数少ないやさしいことばを預金通帳から出したり入れたりし 過去の職業安定所 噂のホームドラマを探しながら
年々、鉄路から離れてゆく

寺山修司「ロング・グッドバイ」より抜粋


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足寄森林鉄道 44号(昭和17年[1942年] 製造:国鉄釧路工場)

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C型アプト式タンク機関車 形式3900 (明治25年[1892年] 製造:英国エスリンゲン社)横川-軽井沢アプト区間で最初に使用された。


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1C型テンダー機関車 形式7750 (明治26年[1893年] 製造:英国ネルソン社)黒磯-福島の勾配区間で使用されたそうです。



電車A列車で行こう

列車は人生という名の旅を分かりやすく象徴する乗物ですから、列車をテーマにした音楽も叙情に満ちたものが多いですね。また、近代社会を代表するスピードの象徴でもあり、メカニックなフォルムのクールさから、モダンなイメージもまた加味されて独特の味わいがあります。そういうわけで、列車をテーマにした曲を個人的な好みで選んでみました。

るんるんSteve Reich「Different Trains 1 (America - Before The War)」
るんるんSteve Reich「Different Trains 2 (Europe-During the War)」
るんるんSteve Reich「Different Trains 3(America-After the War)」
以前スティーブ・ライヒをテーマにした記事でも書きましたが、汽車をテーマにした音楽の中で最も好きな曲はこれです。ミニマル音楽の巨匠スティーブ・ライヒによるミステリアスな質感の汽車幻想。弦楽器が実に巧みに汽車の動きや線路のうねりを表現していて凄いです。サンプリングされた短文のリピートや汽笛が異次元なシュール感を醸し出していて絶品であります。楽曲「ディファレント・トレイン」は、第二次世界大戦の前後の不安感を3部で構成した作品。第1部は戦前のアメリカ、第2部は戦中のヨーロッパ、第3部は戦後のアメリカがテーマです。はじめて聴いたスティーブ・ライヒの曲というのもあって個人的に思い入れがあります。

るんるんTom Waits「Downtown Train」
黄昏の酔いどれシンガー、トム・ウェイツらしい哀愁漂う汽車のロマン。曲もかっこいいですが歌詞もまた渋くて素敵!列車は、閉じこもった小さな日常から、果てしない未知の世界に連れて行ってくれる人生の導師(グル)なのかもしれませんね。「洋楽和訳 (lyrics) めったPOPS」様による歌詞の和訳

るんるんAnita O'Day「Take The 'A' Train」
アニタ・オデイの軽快でムーディーな歌唱が心地いいですね。曲はジャズの有名なスタンダードナンバー「A列車で行こう」です。
「Groovy Groovy ~and all that jazz~」様による歌詞の和訳

るんるんMeade Lux Lewis「Honky Tonk Train Blues」
アメリカのピアニスト、ミード・ルクス・ルイスの1927年の大ヒットナンバー。ホンキートンク(Honky Tonk)とは意図的にくだけた調子外れなノリを味わいとするアメリカのカントリーミュージックのジャンルを指すようです。

るんるんMartin Denny「Burma Train」
「ビルマ・トレイン」と題するマーティン・デニーらしいエキゾチック感たっぷりの曲。

るんるんThe Doobie Brothers「Long Train Running」
アメリカのベテランロックバンド、ドゥービー・ブラザーズの1973年の大ヒット曲。なんとなくどこかで聴いたことある曲だと思います。歌詞は人生の無情さを列車に例えて歌っていて哀愁を感じます。「洋楽歌詞を和訳じゃ。」様による歌詞の和訳



電車花電車

花電車といえば、派手な装飾を施した路面電車のことで、主にお祭りや重要な記念日などのスペシャルな日でしか運行されないため、なかなか見る機会はありません。とっくに廃れた風習だと思っていたのですが、現在でもごくたまに運行しているようで、チャンスがあればまだまだ見れる機会はありそうです。ということで、絵葉書コレクションの中から、シュールな様相を偲ばせる往年の花電車をご紹介します。

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2015年04月29日

透明耽美

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透明でキラキラしたものは、心を純粋に高貴にしてくれるような気にさせます。色も持たず、光を遮らないその「主張性の無さ」は、没個性という負の印象よりは、ポジティブなイメージで受け取られる機会のほうが多いですね。それは、我を主張せず場に溶け込むという聖なる性質をイメージさせるからでしょうか。いろいろと象徴的なイメージが思い浮かびますが、そう深く考えずとも、人類普遍に無意識に好ましいイメージがあるのは確かだろうと思われます。

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古くは、透明なモノというと氷や水晶などが代表だと思いますが、現代の透明物質の定番というとガラスでしょう。ガラスの歴史は紀元前数千年にも遡るとされているようですが、実際に手軽に大量生産が可能になるのは産業革命以降のようですから、ガラスが身近に使えるようになったのはせいぜい百年ちょっとの歴史なんですね。

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宝石や貴金属の歴史をみても、透明でキラキラしたモノというのは、実用性を超えた価値を見いだされ常にいつの時代も人間を魅了し、その希少性から醜い争いも数多く繰り返されてきましたが、そういう意味では、誰でも手軽にキラキラしたモノを楽しめる現代はそこらじゅうに豊かさを見いだせる時代である、ともいえるかもしれません。スワロフスキーなどは、たかがガラスとは言えないレベルの美しさで、ガラス生成技術もひそかに年々進化しているのでしょうね。

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ガラスの置物。ガラスの中のクラゲは暗闇で蛍光して神秘的です。

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水晶のクラスター。水晶は、昔はメガネなどのレンズもガラスのかわりに使われていたり、現代ではその圧電体としての性質からクオーツ時計として利用されたり、人類と密接に付き合いのある鉱物です。

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紫陽花模様のガラス皿。表面の特殊加工で、傾けると虹色に反射してきれいです。

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アクリル製のタツノオトシゴ。

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オーストラリア産のジプサム。雪のような、花火のような、美しい結晶です。石膏の結晶は様々な色形のものがありますが、中でもこのような針状の繊細な結晶のものはジプサムと呼ばれます。

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ブリリアンカットされた美しく輝くキュービックジルコニア。模造ダイヤのイメージが強く、インチキくさいネガティブな印象を持たれがちですが、安価でありながらルビーなどのコランダム系に近い硬度(8〜8.5)、さらにダイヤモンドに近い高い屈折率をもつ優秀な結晶体です。

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ヴェルサイユ宮殿の、アメシスト(紫水晶)で出来た豪奢なシャンデリア。こんな高貴なシャンデリアの灯りで生活できたら夢のようでしょうね。(「宝石」カラーブックス20 保育社 昭和38年)
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2014年07月07日

ペイズリー 躍動するうねり

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カップ&ソーサー

ここのところペイズリー文様に取り憑かれたように惹かれて、生地や小物などいろいろなペイズリーパターンを集めるのが趣味になってましたが、ようやっとマイブームも落ち着いてきたので、この辺りでペイズリーに対する思いの丈を語ってみたいと思います。

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ペイズリーが連なったネックレス。

ペイズリーの魅力は、あの勾玉のような美しいフォルムですが、またそれには同時にゾウリムシのような気持ち悪さもあって、程よい悪趣味さが逆にただ美しいだけのデザインよりも心をつかむところがあります。そういえば、かつて岡本太郎は、"美しい"というのは"きれい"というのとは全く別の概念だ。と著書やインタビューなどで語っていましたね。「きれい」というのが時代の流行によって変化する相対的なものであるのに対し、「美しい」というのはむしろ醜悪さを感じるくらいのパワーをもった激しいものだ、というのが彼の芸術論ですが、それはとても共感するところです。岡本太郎によれば、人間精神の奥深くを刺激する高貴さを「美」と呼ぶ、ということなのですが、たしかに200年近く廃れることなく何度もスタイルを変化させながらいつの時代の人間にも愛されたペイズリーには、そうした「美」の真相を体現するオーラのようなものを感じます。

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ドイツ製の生地。金色の地にシックなオレンジ色の美しいペイズリーが編み込んであってゴージャスな雰囲気の布です。

ペイズリー文様のモチーフになっているのは、もちろん勾玉でもゾウリムシでもなく、植物の図案化されたもので、花や葉が密集した小灌木をモチーフにしたものが源流になっています。

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レノマのスカーフ。なかなか良い感じのお気に入りペイズリーです。

ペイズリーという名称は、あの勾玉のようなフォルムを意味する言葉なのか、または発祥の時代や地域を表す言葉なのかが気になって、手元にある「ペイズリー文様の展開」という本を参照しながら調べてみたら、ちょっと面白い事が分かりました。この模様の起源は17〜18世紀、北インドのカシミール地方に遡りますが、この模様を「ペイズリー」と呼ぶようになったのは、18世紀後半にヨーロッパにもたらされ英国スコットランド地方の工業都市グラスゴーの隣町ペイズリー市でインドのカシミアショールを真似た機械織りのショールを大量生産してきたことに由来するようです。実際にグーグルマップで見ると、現在も英国にたしかにペイズリー市というのがありますね。ペイズリーという名前は、形に由来するわけでも発祥地に由来するわけでもないというのは面白い発見でした。

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「ペイズリー文様の展開(カシミアショールを中心に)」渋谷区立松濤美術館:刊 1993年
日本で最初のペイズリー模様をテーマにした企画展の図録です。ちょっとしたペイズリー図鑑のように作られていて、見て楽しい図録になっています。けっこうたくさんの種類の図版が納められていますから、かなり充実した展覧会だったんでしょうね。生で黎明期のペイズリー模様の織り物を見てみたいものです。

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同上 18世紀前半に描かれたデザイン画。ペイズリーだけで造られた礼拝堂みたいな風情がシュールですね。明治時代にベルリンに留学した旧津和野藩主亀井茲明侯のコレクションのようです。

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「RATTI AND PAISLEY」 FASHION INSTITUTE OF TECHNOLOGY NEW YORK 1986~1987
ファッションにおけるペイズリーデザインというとイタリアのエトロ社やラッティ社などが双璧ですね。この図録は、そのラッティ社の創設者、アントニオ・ラッティとそのチームによるペイズリーデザインの探求の足跡をたどった展示会のもの。ニューヨークを皮切りに東京その他世界の主要国を巡回して開催されたようです。イタリアのペイズリーデザインは緻密でスタイリッシュそして独創的で好きです。

かわいいペイズリー・コレクション
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プリンスの名を不動のものにしたアルバム「パープルレイン」(1984年)に続き1985年に発表されたサイケデリック感溢れるユニークなアルバム「アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ(Around the World in a Day)」で、単なるポップスターではなく天才の地位も不動のものとしました。「一日間世界一周」という人を食ったこのアルバムに収録された曲の中に「ペイズリーパーク(Paisley Park)」というタイトルだけで不思議なトリップ感を覚えるユニークな曲があります。歌詞もシュールで、奇抜な出で立ちをした人々が束縛もなにもない自由な公園、"ペイズリー公園"に集まって、平和と愛に満ちた微笑みを浮かべている、といった感じの70年代のヒッピーカルチャーを思わせるユニークな世界を描いています。この曲に出会ったことも、ペイズリーへの関心の萌芽になったような気がします。

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イタリア製のシルクスカーフ。サイケな色使いの繊細な模様が素晴らしい。

ペイズリーという200年の伝統を持つ古典的デザインは60年代のアメリカを中心にしたヒッピーカルチャーではサイケデリックなシンボルとしても再生され、伝統文様というだけでなく、ポップなデザインにまで広まった気がします。文様の歴史からいえば、二千年以上の歴史のある唐草模様やロゼッタ文様などがありますから、それと比べればペイズリーの200年に満たない歴史は、まだまだ可能性を持った若い文様といえるのかもしれませんね。
posted by 八竹釣月 at 15:45| Comment(0) | コレクション