2014年03月10日

暗黒紳士・コウモリ

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「女王蜂」横溝正史:著 杉本一文:表紙画 角川書店:発行 昭和49年(4版)
赤いコウモリが妖しく羽ばたく幻想的なカバーデザインが秀逸です。「女王蜂」は、ご存知、日本で最も有名な探偵、金田一耕助の活躍する作品です。2度映画化され、5回もドラマ化された人気の作品です。私も昔見たような気がしますが、内容はド忘れしてます。画像は角川文庫の初期のカバーですが、他のカバーもなかなか素敵なものが多いですね。角川文庫の横溝正史著作はほとんど杉本一文氏が担当してますが、この横溝シリーズのイラストでその絵師の名前を知った人が多いのではないでしょうか。イラストのダークな和風シュルレアリスムなテイストの醍醐味だけでなく、タイトルや著者名のデザイン的な処理の仕方もカバーデザインとしてとても素晴らしいです。

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アルブレヒト・デューラーによるコウモリの水彩画。

以前にブログで「鍵」をテーマに書いたとき、「鍵」はミステリー(推理)小説の象徴的なシンボルである、というような事を書きましたが、今回のテーマ「コウモリ」は、そうした関係では、恐怖小説などのホラーなイメージを象徴するシンボリックなイメージがありますね。コウモリというと、「卑怯なコウモリ」の逸話のイメージから、「自分の立場をはっきりさせず優勢なほうにつく卑怯者」の象徴として、例えられることが多いですが、その反面、マントのような黒い翼のフォルムのカッコよさから、黄金バットやバットマンなど、ヒロイックなキャラクターのイメージにも引用されたりもしますね。

コウモリは、日本では伝統的な家紋のデザインモチーフとしてもなじみ深く、和服の柄から、花瓶や皿などの陶芸でもコウモリのデザインは案外見かけますね。コウモリに妖しげなイメージをいだくのは、どうやら西洋文化から来ているようで、現代では日本でもコウモリはダークなイメージがありますが、昔は幸運や長寿を意味するシンボルだったみたいです。そうした吉兆のシンボルとしてのコウモリのイメージは中国に起源があるそうです。

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「科学ブック」第1巻 第10号 世界文化社:発行 昭和35年
ノスタルジックな田舎町の夕暮れに舞うコウモリと戯れる少年少女。解説ページによれば「こうもり、こうすけ、よってこい」とかけ声とともに靴を投げ、コウモリを呼び寄せる遊びのようですが、寡聞ながらはじめて知りました。どこの地方の遊びなのでしょうね。

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「科学ブック」第1巻 第10号 世界文化社:発行 昭和35年
羽をつままれたウサギコウモリが可愛いです。飼ってみたくなりますが、コウモリの飼育はけっこう難易度が高いようで、上級者向けのペットのようですね。

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塩化ビニールらしき素材のコウモリの玩具。5匹入りパックです。1、2年ほど前に某100円ショップで購入しました。今のところ使い道が思い浮かばずそのままにしていますが、ジョセフ・コーネルっぽい箱オブジェなどに入れるアイテムのひとつとして使えたら面白そうです。

真っ暗闇の中もものともせず跋扈する夜の支配者、コウモリ。中でも、動物の生き血を吸うチスイコウモリは、吸血鬼のイメージと重なり、コウモリのダークな印象を決定づけている種ですが、実際には980種類ともいわれる数あるコウモリの一部であり、吸血性のコウモリは3つの属が存在し、3つの種だけしかいません。フルーツ好きのオオコウモリは有名ですが、他の多くの種では昆虫をエサにしているようですね。

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天井に貼り付くスタイリッシュなヒメキクガシラコウモリ。マントを羽織った暗闇の紳士、といった風情ですね。

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正面から見たコウモリ(アフリカカグラコウモリ)の顔。ブタ鼻とつぶらなお目目がキュートですね〜

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ゴールデンバット。「バット」とか「金コウモリ」などの愛称で呼ばれている百年以上前からあるタバコの銘柄で、現行のタバコの中では最古のものだそうです。「わかば」「エコー」など安価なタバコはデザインもどこかプロレタリアート感のある切ないものが多い気がしますが、「ゴールデンバット」の安価なくせに堂々としたお洒落な存在感はそういう意味でも異質ですね。昭和初期の紙芝居全盛期に人気を誇ったヒーロー「黄金バット」は、このタバコの名前に由来しているという説もあるようですが、ざっとネットで調べたところ、はっきりした関連性はまだわかっていないようです。

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「吸血鬼ドラキュラ劇場」高橋康雄:著 新宿書房:発行 1991年
吸血鬼に関する雑学本です。表紙の怪しいインパクトにしびれます。

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「リマから来た男」ジョン・ブラックバーン:著 東京創元社:発行 1974年
古本屋の安価本の棚を物色していて見つけた本です。作品に関する知識は全くありませんでしたが、カバーデザインが気に入ったので入手しました。コウモリのモチーフが好きだというのもありますが、タイトルのモンド感から配色のセンスまで、とても雰囲気のある絶品のデザインだと思います。内容は「蜥蜴蜉蝣」様詳しいレビューがありました。けっこう中身も面白そうですね。

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「シャーリー・テンプル、当代の映画の最も若く神聖な怪物」サルバドール・ダリ 油彩、コラージュ 1939年
ハリウッドの妖精、シャーリー・テンプルちゃんを、禍々しいスフィンクスに改造してしまうダリのニヒリズム。いろいろと物議をかもした作品ですが、私が思うには、そんなに深い意味をもって描いたものではないように思います。狂気と反骨の画家らしいイタズラ心以上の動機はないのではないでしょうか。込められた意味よりも、まずこの作品の突出したアイデア、赤いスフィンクスというイメージに感服します。さらに骸骨とコウモリというあからさまな魔界のイメージにワクワクしてきますね。
posted by 八竹彗月 at 05:42| Comment(0) | 古本
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