2013年11月15日

田河水泡「漫画の缶詰」

田河水泡(1899年[明治32年]〜1989年[平成元年])といえば、「のらくろ」ですが、私は未読で、そもそもそれほど今まで関心がなかったのですが、去年の神田古本まつりで「漫画の缶詰」と題された一冊の本と出会い、衝撃を受けました。その作者こそ田河水泡その人で、1930年(昭和5年)に発行された漫画本でした。昭和5年というと、漫画の神様、手塚治虫がまだ2歳の頃です。手塚自身、幼少の頃は「のらくろ」の模写をしていたそうで、まさに神様を育てた神様のような人ですね。

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「漫画の缶詰」(復刻版)田河水泡 昭和44年 講談社

前述の古本市では、懐具合が寂しかったのでさんざん迷いながらウロウロしてるうちに他の人に買われてしまい、余計に「漫画の缶詰」への想いが高まってしまうこととなりました。この本は昭和44年に復刻されており、昭和5年版よりは手頃な値段になっているので、先日ようやくその復刻版を購入しました。「漫画の缶詰」は田河水泡のデビューしたての頃の初期作品を収録した作品集で、改めてページをめくってみると、その創造性の塊のような天才の仕事に圧倒されます。

手塚伝説が一般化したのは藤子不二雄の「まんが道」であろうと思います。手塚の用いたスピード感の表現や迫力のあるコマ割などの映画的な手法は、単調な漫画を変革していった革命的な事件であった、という手塚のカリスマ性の描写は、あくまで藤子不二雄視点で見た漫画史なのですが、ドラマ化もされた名作「まんが道」の影響は大きかったのか、手塚以前の漫画はたいしたことないというアバウトなイメージが自分の中でなんとなく出来上がってしまってました。そうしたこともあってか、手塚以前の漫画であるのが信じられないくらい斬新な「漫画の缶詰」の凄さに驚きました。

「漫画の缶詰」には、逆に現在の漫画が失ってしまったパワーさえ感じます。現在の漫画で、このノリに近いのは、ジャンプやマガジンの作家ではなく、ガロの作家たちですね。

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コマ割というのは、漫画においては空気みたいなものですが、「漫画の缶詰」では、コマ割さえも丁寧にデザインされています。この一線を越えた凝りようは、「ページをめくる快楽」を与えてくれます。

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騙し絵や、パノラマ的な見開き漫画まで、内容のバラエティ感も半端なくゴージャスです。

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各作品のトビラ絵もグラフィカルな手書きロゴが踊ります。グラフィックデザイナーとしても一流の腕ですね。これほど高いレベルの漫画が手塚以前にもゴロゴロしてたわけですから、漫画の世界も奥が深いです。
posted by 八竹彗月 at 21:09| Comment(0) | 古本
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