2013年05月11日

シュルレアリスム

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渋谷だったか青山だったかの洋書屋で購入した『マルセイユ・トランプ』のレプリカ。ヴィクトル・ブローネル、アンドレ・ブルトン、オスカー・ドミンゲス、マックス・エルンスト、ジャック・エロルド、ウィフレード・ラム、ジャクリーン・ランバ、アンドレ・マッソン等錚々たるシュルレアリストたちによるデザインがカッコイイ。画像はその『マルセイユ・トランプ』の絵札。

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『マルセイユ・トランプ』の数札。通常のスート(ハート、クラブ、スペード、ダイヤ)の変わりに、炎(愛)、黒い星(夢)、流血する車輪(革命)、鍵(知性)の4つのシンボルに置き換えられています。

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このレプリカは1983年にフランスで復刻されたもの。絵札はマルキ・ド・サド、不思議の国のアリス、ノヴァーリスなどなど、シュルレアリストお気に入りの偉人などがチョイスされています。他にフロイト、ボードレール、ヘーゲル等のカードもあります。このトランプが作られたいきさつもユニークで、第二次大戦からアメリカへ亡命するためにマルセイユ港近辺で宿泊していたシュルレアリストたちがビザがおりるまでの暇潰しにみんなでワイワイやりながら作ったものだそうです。大戦間近という緊迫した時期であっても、こうした肩肘張らないお気楽な遊び心を発揮する彼らの精神に感心します。こちらはその原画

シュルレアリスムは、第一次大戦後1920年代にアンドレ・ブルトンをを中心に興った芸術運動で、日本語では「超現実主義」という訳されますが、この訳はあまり普及してるとは思えず、そのまんま「シュルレアリスム」と読んだほうが通りが良くなってますね。一般にダリやマグリットの絵などで知られるシュルレアリスムですが、その活動は美術に限らず、演劇や文学や音楽などあらゆる芸術表現において実践されました。

シュルレアリスム(超現実主義)とは現実離れした空想や幻想を表現することではなく、空想や幻想というものがそもそも現実(リアル)の一部であり、それらを現実と切り離して考えるのではなく、そられは「拡張された現実」として認識されるべきである、というのがおおまかな趣旨だったと思います。しかし、これは、「言葉」というものがそもそも何かを指し示して限定する用途からきているわけですから、ある意味それは言葉遊びに過ぎないともいえるでしょう。「遊び」「ゲーム性」「エロス」「幻想」などはシュルレアリスム芸術の特徴的な部分ですが、ブルトンの「シュルレアリスム宣言」からすでに革命ゴッコを楽しむ少年のような無邪気さが伝わってきます。その遊戯性は、言葉を変えればオカルティズムであり、現代的な魔術の復権という側面も感じます。シャガールの言葉に「私を幻想的と呼ばないで欲しい、 むしろ私はリアリストである。」というのがありますが、心の中にあるビジョンをいかに損なわずに絵画としてアウトプットするか、という作業は、風景画家と変わらない注意力や観察眼によるリアリズム的な部分なのでしょうね。

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フランスのガリマール出版から1991年に発行された『André Breton [Je Vois, J'imagine]』はアンドレ・ブルトンとシュルレアリスム運動の軌跡を写真や作品などでビジュアルで紹介していく感じの本。フランス語の文章は読めませんが、面白い図版が多く楽しい本です。

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(上)『マルセイユ・トランプ』の原画(下)何人かのシュルレアリストたちが競作して作った双六 『André Breton [Je Vois, J'imagine]』より。

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フランスで刊行された1冊まるごと一人のシュルレアリストの作品を紹介していく『骰子の7の目』と題された画集シリーズの日本語版。日本語版の監修は日本におけるシュルレアリスム運動のリーダーだった重鎮 滝口修造、訳者はこちらもシュルレアリスム研究の第一人者 巖谷國士(いわやくにお)。日本語版の印刷もフランスの印刷所のようです。マグリット、エルンスト、ベルメールなどお馴染みの画家から、あまりまとまった作品を見れる機会の少ないクロヴィス・トルイユ、トワイヤンなどの垂涎の画集が並ぶ良質のシリーズです。フェリックス・ラビッスやドロテア・タニング、ピエール・モリニエなどが選から漏れているのが個人的に残念ですが、まぁそのあたりは好みの問題ですね。このシリーズは全部揃えるつもりはなく、好きな作家の画集のみ持っています。
1978年 河出書房新社

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西武美術館発行の現代美術誌『アール・ヴィヴァン』より(左)第22号『特集=ミノトール』1986年刊(右)第25号『特集=骰子の七番目の目』1987年刊
『ミノトール』は1933年にパリで刊行された美術誌でタイトルは幻獣ミノタウロスのフランス語読みです。迷宮の奥に潜む幻獣をタイトルに冠する所がシュルレアリスムの機関誌らしいセンスですね。この『アール・ヴィヴァン』22号はシュルレアリスム研究において重要な雑誌『ミノトール』をテーマにした特集です。25号は上記の画集シリーズ名にもなったジョルジュ・ユニェのシュルレアリスム的な前衛詩集『骰子の七番目の目』の全ページ日本語訳です。資料的な意味でも良い企画ですね。

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(上左)『シュールレアリスムの歴史』モーリス・ナドー著 思潮社 1966年 運動の発端から現代までを時代ごとに分けて解説しています。最後のほうに時代ごとに社会的な事件などと対比させたシュルレアリスム運動の流れを追う年表があり、時系列が把握しやすいです。
(上中)『シュルレアリスム宣言/溶ける魚』アンドレ・ブルトン著 學藝書林 1989年
(上右)『夜想 13号 特集・シュルレアリスム』 ペヨトル工房 1984年 「夜想」自体がシュルレアリスム的なシリーズなので、当然のような特集号ですね。
(下左)『シュルレアリストたち』巖谷國士著 青土社 ダリなどの著名なシュルレアリストは文献が多いですが、この本ではドロテア・タニングやトワイヤン、ピエール・モリニエ等の興味深い作家たちもピックアップされています。シュルレアリストには面白い作家でも情報が少ない人がけっこういるので、興味深い1冊ではないでしょうか。
(下中)『シュルレアリスム簡約辞典』アンドレ・ブルトン、ポール・エリュアール著 現代思潮社 1971年 辞典風に様々な単語をシュルレアリスム的に解釈したもので、そうした試みがひとつの作品になっている感じですね。日本を取り上げた項目は「滝口修造」と「禅」があります。辞典パートはとても短いので、残りのほとんどのページはシュルレアリスム美術のモノクロ図版で占められています。
(下右)『<セリ・ポエティック 8> アンドレ・ブルトン』アンドレ・ブルトン著 ジャン・ルイ・ベドゥアン編 思潮社 1969年 フランスのセゲルス社から刊行されたユニークな現代詩人を10人ピックアップした「セリ・ポエティック」シリーズの日本語版で、画像の本はブルトンの主要な作品や評論を収めた1冊です。このシリーズの人選はなかなかユニークで、1・ジャン・ジュネ 2・ピエール・ルヴェルディ 3・ルネ・シャール 4・アルフレッド・ジャリ 5・トリスタン・ツァラ 6・ジュール・シュペルヴィエル 7・アントナン・アルトー 8・アンドレ・ブルトン 9・フランシス・ポンジュ 10・レイモン・クノー というラインナップです。

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『シュルレアリスム[イメージの改革者たち]』ロジャー・カーディナル/ロバート・S・ショート著 PARCO出版 1977年
比較的判りやすくシュルレアリスムを俯瞰した本で、モノクロ図版も多く載っています。シュルレアリスムの文学的実験のひとつに「オートマティスム(自動記述)」というものがあります。うつらうつらと半分眠りながら口述したり、思いついた言葉を解釈したり体裁を整えて整形したりできないほど高速で筆記していき、狂った霊媒師のように詩を生み出すカオスな試みです。こういうバカバカしいノリもシュルレアリスムに惹かれる部分ですね。右の図版は、そのオートマティスムを擬人化したイメージ写真のようで、「オートマティスムのミューズ」と題された一枚。この手元を見ないで詩を紡ぎだす美少女の写真、大きめに掲載されているのは日本ではこの本くらいだと思います。この本はほとんどこの写真目当てで購入しました。

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『シュルレアリスム』 パトリック・ワルドベルグ著 巖谷國士訳 美術出版社 1969年
前半はワルドベルグによるシュルレアリスムを総括した論評、後半は文献集になっています。表紙のリンゴで顔を隠された山高帽の男の絵、お馴染みのマグリットの代表的なイメージのひとつで、上記のPARCO出版の本でも表紙を飾ってますが、シュルレアリスム自体にある知的な遊戯的性質を上手く現している絵でもありますね。

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(上左)雑誌『芸術生活』No.316「特集・シュルレアリスム1920〜40」芸術生活社 1975年
(上右)は、特集の扉。絵はローランド・ペンローズの「ヴァレンティーヌの肖像」目と口を蝶が塞ぎ、周囲に鳥が群がる青白い不吉な肖像画ですね。別世界の美学のような妖しさが素敵ですが、モデルとおぼしきヴァレンティーヌは彼の元妻のようで、作品の背景にも何か込み入った逸話がありそうですね。
(中左)雑誌『芸術生活』「特集・シュルレアリスム20人」芸術生活社 1973年 目次イラストが藤本蒼だったり、エッシャーの評論を池田満寿夫が書いていたり、グラビアは横尾忠則の東北紀行の写真や絵画、音楽評論の特集ページでは横尾さんはサード・イヤー・バンド(Third Ear Band)について熱く語ってたりしてて、充実した号です。
(中右)雑誌『芸術新潮』「特集・不思議な絵の展覧会」新潮社 1979年 騙し絵をテーマに、シュルレアリスム絵画だけでなく、アルチンボルト風の浮世絵とか、錯視画像など面白い図版が紹介されています。
(下左)雑誌『美術手帖』12月増刊 No.336「特集・シュルレアリスム」1970年(下右)は、その中に掲載された写真。1970年3月に撮影されたストックホルム近代美術館の「シュルレアリスム?」と題された会場の「?」の箱の前での記念写真。
posted by 八竹彗月 at 19:30| Comment(0) | 芸術
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