2012年07月18日

怪奇幻想の世界

暑くなってきたのでホラーなテーマで書いてみます。

晴れお気に入り怪談
映画にしても漫画にしても、ホラーというジャンルは私にとってとても魅力的です。グロテスクさや残虐さで怖がらせるタイプのものは苦手ですが、ポエティックに恐怖を描いた作品にはとても惹かれます。こうした趣向は私の場合は荒俣宏の『世界の恐怖怪談』の影響が大で、この本で「恐怖」のロマンティシズムを教えられた気がします。選りすぐりの世界の怪談が読みやすくリライトされていて、どれも面白い作品ばかりなのですが、中でも印象的だったのは「深夜の急行列車」という作品で、原題は「深夜急行(Midnight Express)」というアルフレッド・ノイスの短編ホラーです。アルフレッド・ノイスというと、日本ではこの作品くらいしか情報がないですが、代表作のようなものでしょうか。ノスタルジーとメランコリーに彩られたロマンチックな恐怖感がたまりません。物語は以下のページで読めます。
「深夜急行」アルフレッド・ノイス
ttp://www.h7.dion.ne.jp/~samwyn/seiyoukaidan/mexpress.htm
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他に『世界の恐怖怪談』に収録された怪談でネットにあったものを。

「猿の手」W.W.ジェイコブス
名作ですね。構成が見事で、ラストの余韻は絶品です。猿の手で願い事を叶えるにはそれなりのリスクが伴います。魔法といえども対価は必要なのです。
ttp://f59.aaacafe.ne.jp/~walkinon/monkey.html

「ふるい櫃」ウォルター・デ・ラ・メア
『世界の恐怖怪談』では「そして誰もいなくなった」というクリスティ的なタイトルが冠されてます。まさに暗黒のメルヘン。童話的な語り口が幻想的な恐怖を描き出しています。
ttp://www.h7.dion.ne.jp/~samwyn/seiyoukaidan/riddle.htm

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『世界の恐怖怪談』(1977年 学研)の目次。 豪華な挿絵、秀逸な編集、丁寧なデザイン、隠れた名著ですね。

晴れクトゥルフ神話
ラヴクラフトの名前をはじめて知ったのは上記の『世界の恐怖怪談』でした。荒俣宏がいうように「ラヴクラフト」という「名前の魔力」でずっと気になっている作家です。クトゥルフ神話とは、そのホラー界の巨星H.P.ラヴクラフトが産み出した暗黒神話で、その特殊な世界観は多くの二次創作意欲をかきたてられたくさんの作家がこの神話を母体にした作品を書いていますが、日本でも栗本薫や諸星大二郎や荒俣宏など多くの作家によって書き継がれてきてとても興味をそそります。
人類が誕生するはるか以前、原初の地球に飛来した<旧支配者>、彼らは今では地上から姿を消し海底や地底などに封印された状態であるが、現代においてもひそかに虎視眈々と復活の機会をうかがっている。というのがこの神話の基本コンセプトで、本はいろいろ持っているんですが、解説書のたぐい以外はほとんど未読のままです。ラヴクラフトの文章はあまり読みやすくないので、なかなか読破出来ずにいます。神話というのは太古から口伝で語り継がれてきた今日の道徳観や宗教などの母体となる人類の深層世界ですが、これをひとりの人物が一から創作したというのは凄いことだと思います。荒俣宏はクトゥルフ神話を称して「RPGゲーム」のようだと書いていますが、なるほどと思いました。子供に人気のカードバトル遊びのネタにも引用できそうな錚々たるクトゥルーの邪神たちは、まさにゲームの世界と相性が良さそうです。
基本的にクリーチャーもののホラーは好みではないのですが、そんな私がなぜクトゥルフ神話に興味を持ったかというと、多くの邪神の事よりも、それら邪神を復活させるための書「ネクロノミコン(Necronomicon)」をはじめとする数々の魔導書や、ネクロノミコンが所蔵されているというミスカトニック大学という架空の学校などの描写があることです。古本マニアにはたまらない設定です。寂れた古書店で謎めいた書物を発見するというシチュエーションにはときめくものがあります。エンデの「はてしない物語」も古書店で謎めいた本を発見するところからはじまるファンタジーでしたね。
「ネクロノミコン」はアラビアの狂詩人アブドゥール・アルハザードが著したという設定の架空の魔導書ですが、実際にクトゥルフマニアの作家達によって「ネクロノミコン」自体を創作した作品もあり、私はコリン・ウィルソン他が著した学研のものを持ってますが、それっぽい護符や呪文などが載っていてけっこう凝っており面白いです。そういえば、かの魔術師クロウリーがラヴクラフトの本を読んで、秘匿されている魔術の秘法を漏らす不届きものめ!と電波な脅迫状を送ったとかいう眉唾な逸話がありましたね。
ラヴクラフトの作品にでてくる魔導書は書名がいかにもこの世界のどこかに存在してそうな秀逸なネーミングで惹かれます。「エイボンの書」「サセックス草稿」「ゾハルの書」「ナコト写本」「無名祭祀書」「ルルイエ異本」などなど、いかにも「危険な書物」な匂いに満ち満ちた題名ですね。
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(左)創元推理文庫のラヴクラフト選集。昔のカバーは雰囲気のあるタイポグラフィでいいですね〜 この当時は2冊組でしたが、後にカバーデザインは変わり、別巻を含む9冊揃いの刊行になります。(右)『魔道書ネクロノミコン』 (学研ホラーノベルズ) コリン ウィルソン、ジョージ ヘイ:著
posted by 八竹彗月 at 13:07| Comment(0) | 怪奇
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