前回に引き続き、同じように背の題字が読めない本にカバーをつけようと思います。
今回は『尊徳生活原理要説』という本です。尊徳というのは、江戸時代後期の思想家、二宮尊徳(にのみや そんとく 1787〜1856年)のことです。昔の小学校の校庭によくあった、本を読みながら薪を背負って歩く少年の銅像のモデルで、通称二宮金次郎としてつとに有名な苦学の英雄ですね。昨今は、あの薪を担いで読書する少年像が、「歩きながら本を読むのは危険」「子供を働かせる姿は現代の教育方針にそぐわない」などの理由で相次いで撤去され、最近では馴染みの薄い像となりつつあるようですね。まぁ、それだけ社会が豊かになってきた証拠という面もあるのでしょうが、江戸時代の英雄を現代の常識で切り捨ててるようで、一抹の寂しさを感じてしまう部分もありますね。
この前ブログで触れました熊沢蕃山も尊徳より170年前の江戸時代初期の苦学のヒーローですが、こうした逆境にもめげずに栄光をつかみ取った偉人たちの生き様は、知るほどに、怠惰に陥りがちな自分に喝を入れてくれてるようで励みになります。蕃山も尊徳も、ざっとした伝記だけだと、その思想もなんとなく純朴で素直なわかりやすいもののようにイメージしがちですが、どちらもその思想はけっこう難解な部分も多く、一筋縄でいかない思想家でもありますね。
江戸時代の思想家というと、以前ブログでもすこし触れた三浦梅園が思い浮かびますが、今回の『尊徳生活原理要説』のページをめくっていたら、まさに、梅園の思想に惹かれたのと同じ部分で、尊徳にも惹かれたのでした。それは、梅園哲学のユニークな特徴であるあの神秘的なマンダラのような図解のことで、尊徳の思想もこの本では、あのようなマンダラ感のある図解が満載で、思想の中身うんぬんは置いといて、そのビジュアル的な神秘性にググッときたのでした。
前置きが長くなりそうなので、そのあたりについては、補修記事の最後にも追記するとして、とりあえず本の補修にとりかかりましょう!
『二宮尊徳新撰集 尊徳生活原理要説』二宮尊徳翁全集刊行會発行 昭和14年
件の本です。またしても背表紙の題字が不明瞭で読めませんね。
光の加減を調節すると、うっすらと題字が見えますが、本棚に入れると真っ黒で何の本か分らない状態です。
カバーデザインの確認のためにぐぐってみると、どうやらこの本は全6巻組の中の一冊で、カバーではなく、箱入りの装丁のようですね。箱入りは本のダメージを最小限にする効果があるものの、箱から出す作業が面倒で読書意欲を微妙に削ぐところがあるので、個人的には普通にカバーでくるむ装丁のほうが好きです。また箱入りは、読書するときは邪魔になるので読了までどこか近辺に起きっぱなしになるわけで、読み終わって、さぁ箱にしまって本棚に戻そう!と思った時には箱がどこかに紛失してしまって慌てて探しまくる、というのも箱入り本のあるあるではないでしょうか?
本のコンディションも大事ですが、いくらコレクターであっても本は読んでナンボの存在ですから、やはり読書に微妙なストレスをもたらす箱入りは痛し痒しなところがありますね。箱入りは見栄えがあって高級そうに見えるので、それはそれで嫌いではないですが、世の中なんでもいいとこ取り≠ニいうのは難しいですね。
というわけで、箱を再現するのは面倒なわりに読書の不便さが増すだけでもあるので、今回もカバーでくるむ方向で行こうと思います。いちおうオリジナルの雰囲気は保ちたいので、カバーデザインは箱のデザインを踏襲しようと思います。
ということで、表紙と背はこんな感じで作ってみました。タイトルの「尊徳生活原理要説」は、オリジナルはもっと崩した草書体ですが、草書では読みづらいので可読性を重視しつつ崩し字の雰囲気もある行書にしました。行書は楷書と草書の中間の崩れ方なので、普通に読めて、かつ筆文字のテイストも楽しめるという、いろいろと重宝する書体ですね。
プリントアウトしました。A4プリンタなので、左右全部は入りきらないので二枚に分けてプリントしてます。これを繋ぎ合わせてカバーを作り、本を包みます。
こんな感じになりました。まぁ、悪くはないのではないでしょうか。
前回補修した『落語事典』と同じ紙を使いました。
とりあえず今回の『尊徳生活原理要説』の補修もこれで完了です。
前回の『落語事典』や、だいぶ前に補修した天文関係の本などが並んだ本立てに並べてみました。
その他の本は、主に詩集や歌集などが並んでいます。短歌や詩などの本は、その性質上、タイトルが素敵な本が多いですよね。コーヒーでも飲みながら、本棚を眺めて補修が一段落した余韻を味わおうと思います。
もともと二宮尊徳は、最初に書いたように、銅像のイメージしかなかったので、あまり興味をひかれることはなかったのですが、この『尊徳生活原理要説』に出会ってからは、がぜん興味深い思想家という感じにイメージが変わりました。以下、少し中身をご紹介します。
「日本精神と報徳精神」の図。神道を中心とした皇室や国民の在り方の精神性を図解したもののようですね。イデオロギー的な部分は置いといて、こういった精神世界を具体的に図示するビジュアルというのはとても神秘的な雰囲気があって大好きです。こういう感じの図は、平田篤胤の『霊能真柱(たまのみはしら)』などでもありましたね。形を持たない心の世界を具体的に可視化するこうしたビジュアルは心惹かれるところがあります。
三浦梅園の円形マンダラを彷彿とする不思議な図解がたまりません!こうした図にはインドのタントラにあるチャクラの図解のようなワクワク感があり、精神世界を覗き込むような高揚感を感じますね。
モロに三浦梅園な感じの図が並んでいますね。マンダラ的な図解は大好物です。個人的に、こうしたものは思想がどうのという部分より、美術的な面白さに惹かれます。
奥付に貼ってある検印紙。いかにも古書!≠ニいった風情がたまりません。古い本を手に取る時、自分も本といっしょに過去の世界にタイムトリップしたような感覚に包まれますが、そういう快楽こそ古書の醍醐味ですね。この感覚は電子書籍では味わえない紙の本ならではのものでしょうね。まぁ、そもそも電子書籍を読むためのキンドルなどのデバイス自体まだ使ったことがないですが。電子書籍に興味がないわけではないのですが、紙の本でさえ積読の山なので、読書するための本は山ほどある状態ということもあり、さらに電子を手に取る余裕がない、というのが現状です。
ということで、このへんで筆を置こうと思います。
では、このたびもご清覧ありがとうございました!