先日、百均の古本市でまたいろいろと10数冊購入しました。古本市も古書店も、多くの場合とくに目当ての本があって行くところではなく、その場で面白そうな本との一期一会を楽しむイベントなので、今回も適当に1、2冊程度なにかピンとくる本があれば買おうと思って出かけたはずが、意外とぐっと来る本が多く、つい買い込んでしまいました。とはいえ一冊百円なので、財布の痛みは無いものの、溜まる一方の本の山をどうするかを考えなくてはいけないフェーズに入ってきつつあります。
それはそれとして、今回もちょっと手間のかかる補修をしたので、せっかくなので記事にしてみることにしました。せっかくだから〜せっかくだから〜
『セリ・シュルレアリスム=2 夢の軌跡』アンドレ・ブルトン著 山中散生、清岡卓行、小梅永二編 国文社 1970年3月10日初版発行
今回補修するのは国文社刊行のシュルレアリスム叢書、『セリ・シュルレアリスム』シリーズの2巻目、アンドレ・ブルトン著の『夢の軌跡』です。画像のように、カバー無しの状態です。まぁ、そういった欠点が無ければなかなか百円では手に入らない本ですし、内容も錚々たるシュルレアリストたちやオカルティスト、詩人などの夢をテーマにした文章と絵をブルトンが監修しているというもので、なかなか興味深いものを感じたのでお迎えしました。
また、奥付を見ると、初版本であることが判明!個人的には初版本マニアなわけではないですが、初版本には、その本が「はじめて世間に流通した時」に思いを馳せる気持ちよさがありますね。本が情報目当てであるなら、版を重ねた本のほうがその都度誤字の訂正や加筆があったりする可能性もあるので、むしろ新しいほうが良いですが、古書マニアはそういう合理的な価値観よりもロマンを優先するところがあります。また、中身が変わらなくても、版を重ねる程度に人気のある本のカバーデザインは定期的にリニューアルされる傾向があるので、そういう意味でも初版本は愛着がわきやすいですね。
ちょうど現在、SNSで三島由紀夫の新潮文庫の初期のカバーデザインを懐かしがるポストが話題になってましたが、それと同じように、デザインの善し悪しというよりも、初版のデザインというのは懐かしい「思い出」と共に記憶に刷り込まれているため、どんなに良いデザインにリニューアルされても、リニューアルされること自体を快く思わない層は一定数存在します。デザインでも政治でも、万人に受け入れられるということは、なかなか難しいものなのでしょうね。
今回の『夢の軌跡』は、カバー無しでしたが、だからこそ安価に手に入れられたわけですし、最初はあまり気にせず「中身が読めればまぁ、いいか」と思ってました。しかし、よく見ると今回も背表紙の字がかすれて読めないということに気付きました。布クロス張りのハードカバーに不透明インクを捺して印字してあるので、何回も触ったりしてると以下の画像のようにすぐインクが剥がれて読めなくなってしまいます。読書のときには背表紙に手のひらが当たってよくこすれるのでダメージが蓄積しやすい部分です。通常はカバーのお陰で表紙はダメージが入りにくい部分ですが、カバー無しだとモロにそういう部分にダメージがいきますね。カバーありでも、カバーデザインが箔押しなどの擦れに弱い印刷の場合はよくインクがはがれるので、大事にしたい本は事前に対策しておかないと後々後悔しますね。
うっすらと「夢の・・・」あたりが判読できる程度です。まぁ、これも、「フホホホ!ブログのネタにこの本でもどうじゃ!」という感じで、本の精霊に導かれた本なのでしょう。こういう場合、いつもだと背表紙だけ作って貼付ければすぐ済むのですが、今回は布地なので、難易度が高そう、ということで、背表紙は下手にいじらずにカバーを作って包むことにしました。
後から考えれば、いつぞやのように、布クロスの上から印字したアイロンプリント用紙で転写という手もあったな、と気がついたのですが、もうカバーを作っちゃった後なので、また今度似たようなダメージの本があったら試してみようと思います。でもよく考えたら、そのそも今回は黒の布クロスなので、インクジェットのインクでのアイロン転写は不可能(黒地に転写しても不透明インクでないために読めない)ですから、どのみちカバー作成が今回はベストな選択だったような気もしますね。
と、いうことで、元のカバーデザインを参考にしようと検索してみると、1970年代と比較的近年の発行ということもあり、そこそこ普及しているシリーズでもあるのか、けっこうたくさん検索にひかっかりました。
当初は、似た感じでデザインしようとはじめたのですが・・・・
(上)イラレでバラ打ちした文字要素を本のサイズに合わせたカバーに置いたところ。
(中)文字の書体や大きさを調整。背景を黒にしたのはとくに意味はありません。
(下)実際の色味に似せていきます。
しかし、カバーにレイアウトされているエルンストのペン画っぽい挿画の高解像度の画像がなければあまり本物に似せれないので、今回は原本のデザインに似せるのは諦めて、オリジナルのデザインで作る事にしました。
ということで、こんな感じのカバーにしてみました。背表紙だけはオリジナルに近い感じにしてあります。挿画は適当にハンス・ベルメールの版画を引用しました。表紙も地色や挿画は異なるものの、文字の大きさや書体やそれぞれのエレメントの配置自体はおおよそオリジナルに寄せてみました。左のソデに表紙挿画のクレジット、右ソデにはオリジナルデザインのサムネールを配置しました。
A4プリンターなので、カバー全体が入りません。なので、「表紙」「裏表紙」「左右ソデ」の3つのパーツに分けて印刷して、あとで貼り合わせます。左右ソデの上に模様の入ったオビがありますが、これは余白を有効利用して自分用の栞にするためのもったいない精神≠フあらわれですので今回の話と関係のあるものではありません。
カバー自作をしてると思うのは、なんでもコンパクトが一番!みたいな価値観は、この場合は当てはまらないなぁ、ということですね。まさに、大は小を兼ねる、という金言どおり、プリンターもスキャナーも予算が許すならA3対応のものを導入すべきと痛感します。(ちなみにスキャナーはエプソンのA3まで対応の大きなものを持ってますが、古い型のものなので非常に重く、引っ越し時は大変でした。スキャナーは20年以上前の型ですが現役で今も快調です。プリンターほど使用頻度は多くないですし、消耗する部品もないためかけっこう長持ちで助かります)
プリントアウトしました。下はそれの使用部分を切り抜いたもの。上の栞はついでに作成したもので、あとで読書のときに使う用のものです。
幅広の補修テープでそれぞれのパーツを貼付けます。
表紙とソデには幅を半分にしたもので繋げ、背表紙部分はそのままの幅で貼付けて補強しました。
大きな紙に印刷できればこういうつなぎ目無しで作れるので、初期投資ってほんとに重要ですね。まぁ、とはいっても売り物を作っているわけでもなし、自分の利便性が主目的なので、細かい事はあまり考えないことにしましょう。
で、張り合わせてこんな感じになりました。これで本体を包もうなか、と思ったのですが・・・
マット紙と補修テープの光沢とのつなぎが思いのほか目立つので、さらにA4のOPP袋を左右に入れることにしました。紙の汚れも防げるので一石二鳥です。
自作カバーで包んでみました。テープの跡が多少気になるものの、背表紙が読める状態にするのがそもそもの目的なので、これで良しということにします。
きちんと背表紙が読める状態になりました!
ちょっと手間がかかりましたが、おかげで本棚に入れてもすぐ判別できるようになりました。これにて一件落着です!
ということで、今回はアンドレ・ブルトン著『夢の軌跡』に自作のカバーを作って背表紙問題を解決する回でした。御清覧ありがとうございました。