2026年02月18日

古書を補修してみました!「草書要領」編

更新の間が空いてきてしまったこともあり、本の補修記事のために撮っておいた写真がたまってきたので、今回も本の補修をテーマに記事を書こうと思います。画像の情報を見てみたら去年の9月に撮り溜めていたものでした。今回修復する本は80年代に中国の北京で発行された『草書要領』という草書のお手本帖です。中身は達筆な草書が整然と並んでいて書道のお手本か辞典っぽい感じですが、具体的にどういう体裁の本なのか気になって中国語の序文をグーグルレンズで翻訳してみました。

それによると、『草書要領』というのは、唐の時代に作られた本の復刻本のようでした。唐の皇帝の命により名書家たちに編纂させたもので、主に、書聖と仰がれた中国東晋の伝説の書家、王羲之(おうぎし 303-361年)と彼の七男である王献之(おうけんし 344-386年)が残した書を中心に編纂された草書の教本とのことです。しかし、この王羲之らの書を編纂したというのは信憑性に疑いがあるようで、箔を付けるために王羲之の名前を出してるだけで実際はそうではない可能性も濃厚のようです。とはいえ、清の時代の名著、顧新牙の「草書大辞典」や「草書練習帳」などの著作にもこの本からの引用が見られることから、内容自体は優れたものであることに違いなく、その希少性と有用性を鑑みて出版に至った、というようなことが書かれていますね。

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『草書要領』北京古蹟出版社 1989年

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序文をグーグルレンズで翻訳。しかしまぁITの進化はスゴイですね。画像から翻訳できる時代がこんなに早く来るとは思いませんでした。AIも、コンピュータの父、アラン・チューリングの提案した「チューリングテスト」※にすでに合格できるレベルになってきていますから、もう「マトリックス」の世界もあながち遠い未来の話じゃなくなってきたような感じですね。

※チューリングテスト(Turing test)は、機械(人工知能)が人間のように知的に振る舞えるかを判定するテスト。人間の審査員が対話を通じて、相手が人間か機械かを見分けられない場合、そのAIは「合格」とされ、知能を持つとみなされる。1950年に英数学者アラン・チューリングが提案した。

では、さっそく補修に入りますが、また今回も背表紙の補修になります。まぁ、背表紙は本のパーツの中でも一番ダメージを受ける部分ですから、本の補修といえばだいたい背表紙の補修が中心になってくるのではないでしょうか。

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ダメージ度レベルは「中」程度でしょうか。このままでもとくに大きな問題はないにしろ、こういうちょっとしたヤブレを放っておくと本棚から抜き差しするたびにヤブレが大きくなっていくのは必至なので、ダメージが広がらないうちにササッと補修してしまいましょう。

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背の下部のヤブレが目立ちますね。

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カバーを裏返して、ヤブレの箇所を別の紙で埋めます。前回、こういう部分を修復するときの紙は段差ができないようにちぎって貼る、というようなことを語っていますが、これは件のエッシャーの画集よりも前に購入したもので、補修時期も前のものなので多少やり方に食い違いがあります。

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ヤブレを塞いだ部分は、こういう感じになるので、この白い紙の部分をカバーと似た色に混色した絵具で塗ります。

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カバーのカラシ色に似た色を絵具を混ぜて作り、背のインクの剥げた所にも塗っていきます。

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元通り、とまではいかなくても、最初の状態よりだいぶましな感じになってきました。

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背の部分を補強するため、補修専用の幅広テープを背に貼って完了です。

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こんな感じになりました。

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コーヒーで一服しながら一仕事終えた達成感を満喫するのも補修の醍醐味ですね。

以下、この本の中身を少し紹介します。

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まぁ、ほぼ読めませんが、ほとばしる達筆感≠ェあってカッコイイですね。
中央の本のノド近くにあるコイル状の文字とか、絵的なカッコよさのあるところにグッときますね。

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こちらの見開きも惚れ惚れするような文字の流麗さにうっとりします。
楷書、篆書、隷書など、多くの書体は一文字づつ均等な大きさで書くのが基本になってますが、草書は有機的に文字が繋がったりして流動的なリズム感のある文字であるところも魅力です。

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このあたりの文字なんか、すごい面白い形してますよね〜

草書は現代では学校で習う書体ではないので、素養がなければまず読めないですよね。そうところが逆にワンランク上の文字っぽい風格があって、草書を読み書きできたらさぞや気持ちいいだろうなぁ、と憧れているところだったので、古書市で手本や資料になりそうな本が目についたらチェックするようになりました。草書は、書の玄人っぽさがあって、いわゆる「達筆」な文字の代名詞みたいなところがありますよね。草書は、もともとは速記用に素早く書ける文字として作られた書体でしたが、王羲之などの書家によって芸術的な書体として発展していったようです。

もともとは普段使いのカジュアルな書体で、日本でも現代のように一文字づつしっかり書く、形のしっかりした書体である楷書体が主流になるのは活字による出版が主流になった明治時代以降の新しい風習のようです。江戸時代の和本はほとんど草書ですが、これはもともと日本語の文字は手書きが基本だったためと、活字のシステムがまだ無い時代で、書き文字をそのまま版木に彫って印刷していたためにそうなっているようです。公文書なども行書が主流で、民間の個人が手紙などを書く場合はさらにくずれていったため、明治までは草書が主流だったみたいですね。

草書というと今ではすっかり庶民には縁遠いプロの書家御用達っぽい敷居の高いイメージの書体になってしまいましたが、よく考えてみれば、日本語のひらがな≠ヘ元々は漢字を崩した草書体が原型になってましたね。そういう意味では、知らず知らずのうちに私たちは毎日のように草書を使いこなしているわけで、草書は日本人にとっては意外と身近な文字といえないこともないですね。

草書の起源は中国ですが、この日本独特のひらがなは、元が漢字を崩した草書体であるだけに、このひらがなをメインにしたかな書道は、さらに流麗で美しいですよね。文字と文字を連ねて書く「連綿」と呼ばれる独特の技法によって、川の流れのように連なる曲線の舞が実に芸術的でひらがなの草書はとくに憧れます。漢字より覚える文字は少ないので、まずはひらがなの草書をマスターしたいですね。

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書道関連の辞典類。辞典としてというより、文字の遊園地を楽しむような気分でページをめくって楽しんでいます。「五体字類」というのは、楷書、行書、篆書、隷書、草書など、書道でよく使われる定番の書体で書かれた字引です。五体といっても、基本書体という程度の意味合いで、5つの書体だけに限定しているわけではないようです。草書に憧れて書道に関心を持ちはじめましたが、書の世界に触れていくに従って、他の書体にも惹かれるようになってきますね。印鑑などに使われる篆書の象形文字っぽい絵的な面白さもグッときます。さらに、そうした基本書体から外れたレアな書体、「雑体書」と呼ばれる不思議な書体群があることを知り、さらに書の世界の面白さに開眼しました。また、文字つながりで、日本の古代文字とされる「神代文字」もミステリアスで興味深いですね。アカデミックな定説では、神代文字は実際には江戸時代以降に作られた疑字だという見方が主流ですが、神秘な雰囲気をまとった謎めいた文字で、興味を引かれます。

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神代文字など不思議な文字に関する本。そのうち文字をテーマにした記事も書いてみたいです。

では、このあたりでひとまず筆を置こうと思います。
御清覧ありがとうございました!
posted by 八竹彗月 at 21:11| Comment(0) | 古本
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