2018年03月10日

電氣ノ世界(3)珍奇図像

今回は、電氣関連の古書コレクションの中から、昭和7年発行の『最新科學画輯』(朝日新聞社発行)をご紹介します。全編モノクロですが、全ての見開きが右に文章、左に図版というビジュアルチックな構成になっていて、ページをめくるたびに電氣のビリビリ感を感じるような、わくわく電氣ランドといった感じの楽しい本です。けっこう珍奇な図像が多くてイイ感じです。

180310_denki03_01.jpg
『最新科學画輯』朝日新聞社発行 昭和7年(1932年)

180310_denki03_02.jpg
(同上『最新科學画輯』より)

トビラのデザイン。活字でなく、レタリングされた旧字が味があります。

180310_denki03_03.jpg
米国のロバート・J・ヴァングラーフ博士が原始構造破壊用の150万ボルト超電圧を実験している所で、この装置は200万ボルトまでは出せる。(同上『最新科學画輯』より)

頭上のふたつの球体の間を電氣がビリビリいいながら放電していますね。そういえば、よくデパートの科学系の玩具を売ってるコーナーとかに、放電の面白さを鑑賞するサンダーボールとかプラズマボールと呼ばれている玩具がありますが、身近に放電を鑑賞できるとはなんと素晴らしいんだろう、なんて最近思うようになってきてるので、そのうちゲットしたいです。

180310_denki03_04.jpg
13万2000ボルトの変圧器を巻いているところ。(同上『最新科學画輯』より)


180310_denki03_05.jpg
(上)世界大戦の時、米国政府が窒素工業用として創設したウイルソン・ダムの大発電所。(下)大変圧器。米国ジー・イー会社製作のもので、スイッチを入れてから2秒後には150万馬力の変圧をするもので、有名なナイヤガラ発電所のものの2倍ある。(同上『最新科學画輯』より)


180310_denki03_06.jpg
腕木を数多持った電柱の例。(同上『最新科學画輯』より)

ムカデ電柱とでも名付けたくなるキテレツな電柱ですね〜 現在の電柱と比較して見てしまうので、どこかの異世界に迷いこんだようなシュール感を感じますが、当時の人は電柱といったらこういう電柱だったのでしょうから、当時の人には普通に近代化されたモダンな光景に写っていたのかもしれないですね。昨今は電柱や電線のある風景は美観を損ねるということで、電線を地下に通すような開発が進んでいますが、無くなったら無くなったで、「昔あの頃いつもあった電柱が懐かしい…」ということになるような気もします。個人的にはむしろ電線好きですし、現代のアニメには意識的に電線がバンバン出てくる背景を使ったりする作品もよくあるので、意外に「電線は美観を損ねる」というのは、それほど強固な常識ではなく、電線に親しみを感じる層もけっこういそうな気がします。

こんな電氣関係の記事を書きながら電氣について考えを巡らせていると、似たようなモノが引き寄せられてくるようで、書いてるうちに上記の図版のようなムカデ電柱の図版がいくつか出てきましたので、それも紹介します。

180310_denki03_06-Philadelphia_1890.jpg
「図説 発明狂の時代」レオナルド・デ・フリーズ著 本田成親訳 JICC出版局 1992年 より
1890年に描かれた米国ペンシルベニア州フィラデルフィアのムカデ電柱を描写した絵。電線てんこ盛りな感じで凄い光景ですね。

180310_denki03_06-LosAngeles_1940.jpg
1940年代の米国カリフォルニア州ロサンゼルスの某所の光景。写真だとさらにインパクトがありますね〜 「Water and Power Associates」という水力発電に関する情報をまとめているアメリカのサイトの、昔の電気工事の様子を写した写真を掲載しているページより。「Water and Power Associates」は、ほかにも電力関係のビリビリくるようなヴィンテージ写真が満載の面白いサイトでしたので、興味のある方はご覧になってください。

180310_denki03_07.jpg
(左)扇風機の冷却装置をした高圧器。(右)花畑発電所の154K・V・アレスター。(同上『最新科學画輯』より)

(左)要塞のような厳つい風貌の変圧器がかっこいいですね〜 (右)こちらは現代アートのインスタレーションみたいなユニークな造形美を感じますね。

180310_denki03_08.jpg
大きな方のランプは、5万ワットで15万燭光を出し寿命100時間を有っているが、小さな方は50万燭光を有する写真用フラッシュ・ランプで50分の1秒間に燃えてしまう。(同上『最新科學画輯』より)

ものすごい大きさの電球を持った女性の絵面がインパクトありますね。よく見るともう片方の手には小さな電球も持っていますね。もはや時代はLEDの時代に移り変わった感がありますが、やはり真空ガラスの中でフィラメントが発光するロマンチックさが失われていくことに一抹の寂しさを感じます。そういう気持ちは人類に共通した感情のようで、さっそくフィラメントの電球ソックリのLED電球も開発されていろいろ売られてますね。それまで空気のように気にしてなかったのに、失われると急に求めだすのは人間のサガのようで、私も今頃になって白熱電球のいい感じの灯りを楽しみたいなぁと思うようになってきました。メインの照明はLEDにまかせて、点灯頻度の低い場所には味のあるエジソン電球の贅沢な灯りを味わいたいですね。

メモ参考サイト
エジソン電球(Google画像検索)
フィラメントの形ってけっこうバリエーションがあって、そのままアート作品のようですね。電球は、まさに人間が生み出した人工太陽のような存在で、夜に光をもたらした電球の発明は、よく考えるとものすごい偉業であることに気づかされますね。確認のために、本当にエジソンが電球を最初に発明した人物なのか検索してみたら、予感は当たっていたみたいで、電球を発明したのは実はエジソンではなく、英国のジョセフ・スワンという人のようでした。さらに、その電球を光らせるための電力システムはエジソンの弟子だったニコラ・テスラの功績で、エジソンはうまく彼らの才能に便乗したみたいですね。エジソンとニコラ・テスラとの確執など、このあたりの事情には興味の尽きないエピソードが多く、映画や小説などでもしばしば扱われたりしてますね。

180310_denki03_09.jpg
ネオンチューブで作った脳髄の構造。これを作るに約一千個のチューブを要したもの。(同上『最新科學画輯』より)

レトロSF的というか、スチームパンク的というか、味のある珍妙な写真ですね。ネオン管で脳みそを作るという発想が骨董科学とでもいうような味わいがあります。真空管テレビへの郷愁みたいなものと似たノスタルジーを感じますね。

180310_denki03_10.jpg
トーキーの映写装置。人物はメトロ・ゴールドウィ・メーヤー女優ドロシー・ジョルダン。(同上『最新科學画輯』より)

メカニックな物体と美女の取り合わせは、現代版「美女と野獣」という感じのシュールな美があります。異質な組み合わせの妙からきている面白さなわけですが、現代では女性もコンピューターや先端テクノロジーを駆使していても違和感のない時代ですから、やはり昔の画像のほうが不思議テイストを強く感じますね。現代の二次元イラストでも「メカ少女」というのはもはやひとつのジャンルになっていますが、意外に普遍的な面白さのツボがひそんでいるテーマなのかもしれないですね。

180310_denki03_11.jpg
(上)電氣溶接装置によって、変圧器を溶接しているところ。花火は人の持っている人の持っている極と写真の右下から電源に繋がれている高圧器そのものの間に飛ぶ。(下)回転変流機。富士電氣製造株式会社製の2250キロワット、直流側300ボルト・8500アンペア、交流側6相、回転数300、周波数60。(同上『最新科學画輯』より)


180310_denki03_12.jpg
交差点の四角にある市内電車の信号灯。(同上『最新科學画輯』より)

「信号」の垂れ幕や丸いライトに「進」の字とか、なんかシュールで面白いです。寺山修司の映画『百年の孤独』に、記憶を無くしていく病気にかかった主人公が、柱に「柱」、水瓶に「水瓶」と家中に紙を貼り、はては自分に「俺」という貼紙をしていくシーンがありましたが、あれも記憶の喪失という意味的なものよりも、寺山的には、現実の物体を言葉という現実のイミテーションと並列にすることでシュールな哲学的な絵面を見せたかったように思います。そういえば以前の記事にも書きましたが、実験的なショートフィルム『Rabbit』も、庭のチューリップに「tulip」、窓に「window」、電気スタンドに「lamp」という具合に、学習絵本のようにいちいちモノに名称の文字が付随しているシュールな絵面がユニークで、とても感銘を受けた作品でした。

TVRun Wrake「Rabbit」
海外の古い学習絵本から抜け出てきたようなノスタルジックでシュールな絵面の魅力もさることながら、錬金術を思わせるオカルティックで寓意的なストーリーがまた奇妙で独創的です。作者のラン・レイクさんは、ロンドンを拠点に活躍していたアニメーターで、ミュージシャンのPV映像などで評価の高い気鋭のクリエーターでしたが、久しぶりにプロフィール確認のために検索してみたら、なんと2012年に46歳の若さで惜しくも急逝されてしまったみたいですね。遅まきながらご冥福をお祈りします。

180310_denki03_13.jpg
原町対米送信所。(同上『最新科學画輯』より)

送電塔がバベルの塔チックなミステリアス感があってたまりませんね〜

電気は、その名前に「気」が付いていますが、「気」のつく言葉って、思いつくだけでも、空気、熱気、元気、邪気、本気、勇気、火気、蒸気、正気、狂気、病気、根気、などなど、物理的なモノから精神的なモノまで幅広く使われていますね。共通するのは、何か根源的なエネルギーを「気」と呼んでいることですね。気が病≠でいれば「病気」であり、木のように地に根≠フ張ったような辛抱強さを「根気」とよんだり、感覚的に納得しやすい使われ方をしていて面白いですね。言葉の中には、生命力をもっているようなパワーを感じる言霊的なものも含まれていますが、この「気」も、なかなか奥が深そうです。

旧字の「氣」が「気」になったのは、表向きは単なる簡略化であることになっていますが、言霊的に考えると、日本人の生命力の源である米のエネルギーを取り去って、×印で塞き止めてしまうことになるので、文字のエネルギーを弱体化させているという意見もあるようです。いわれてみれば、たしかに呪術的な意味では旧字のほうがパワーがありそうですね。まぁ、ここではそこまで考えていませんが、なんとなく雰囲気的に「氣」の文字が好きなので、この電氣テーマの記事では氣のほうを使っています。「氣」といえば、中国の氣の概念がすごく面白いので最近気になっているところです。気功の話とか、チャクラと経絡のツボの考察とか、太湖石にみる氣の思想とか、中国の氣の文化を考察した記事もそのうち書いてみたいです。
タグ:電気 古本
posted by 八竹彗月 at 12:45| Comment(0) | 古本
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: