2018年03月04日

電氣ノ世界(2)絵本

電氣は現代文明に欠かせない多くの機械の元になるエネルギーですから、事実上電氣というのは文明を動かすエネルギーといっても差し支えないような気がします。人体もまた脳や筋肉などは電氣を発生して身体を制御していますから、これをアナロジカルに地球にあてはめると、人間の機械文明(鉄道網や航空網、さらにインターネットや電信電話等のコミュニケーションネットワークなど)の拡大は、そのまま地球の身体≠走る神経ネットワークのように思えてしかたありません。

地球の生み出す電氣というと、大空のうっぷんが爆発したかのような雷のような恐ろし気な現象もありますが、天空を覆う虹色のカーテン、オーロラの原理も電氣的なものであります。オーロラの原理は、太陽風や地球の磁力線などの作用によるものという一応の解釈がありますが、未だに詳細はよくわかっていない現象でもあるようです。神秘的な見た目のとおり、その正体も謎めいているところもまたオーロラの魅力ですね。オーロラの幻想的な姿は、まるで神々の住まう天界の様子がつかの間この世に現出したかのような感じで、人生で一度は実際に見てみたいものです。

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オーストラリアの探検家であるダグラス・モーソン(Douglas Mawson)が1900年代初頭に南極大陸で観察したオーロラの図。

メモ参考サイト
オーロラ(ウィキペディア)

オーロラの動画(Youtubeより)
2014年2月27日に、スコットランド北部で発生したオーロラを撮影した動画。

前置きはこのくらいにして、今回は、そうした様々な魅力と実用性を兼ね備えた電氣の啓蒙を目的とした学習絵本をご紹介します。まずは、『デンキノチカラ』ですが、これは昭和16年に講談社から発行された絵本で、絵を担当しているのは私のもっとも心酔している絵師のひとりでもある金子茂二先生です。戦前戦後にかけて児童雑誌の挿絵などをメインに筆をふるっていた画家で、あの極彩色パラダイスな夢の絵本『幼女の友』のメインの絵師として活躍していたことでも知られています。この絵本ではちょうど戦争の真っ最中に発行されているせいか、持ち味の楽園感覚はおさえられて表現してますね。しかし金子先生の気持ちのいい線の魅力は十分堪能できると思います。

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『講談社の繪本 デンキノチカラ』絵・金子茂二 文・柚木卯馬 大日本雄弁会講談社発行 昭和16年(1941年)

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同上。アールデコなデザインのラジオと、デルビル磁石式壁掛電話機がイイですね〜 恐いものの代名詞として江戸時代あたりから「地震、雷、火事、親父」という言葉がありましたが、この絵のヒゲのお父さんを見ても、この時代もまだまだお父さんは恐い存在だったであろう頼もしい存在感がありますね。

メモ参考サイト
デルビル磁石式壁掛電話機(郵政博物館様)

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同上。この時代の電気機関車(国鉄EF55形電気機関車)の漆黒のレトロなフォルムがかっこいいですね〜

メモ参考サイト
国鉄EF55形電気機関車(ウィキペディア)

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同上。家庭の身近な電気器具を並べた見開き。どれもお洒落なデザインですね。機能的には現代の製品のほうが何倍も便利で高機能ですが、昔のアイテムには、豊かな暮らしへの憧れ、みたいな人間の夢が詰め込まれているようなところがあって惹かれます。どれも大事に使われてそうな感じで、機械たちも嬉しそう。

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同上。紡績工場で働く工女さんたち。生き生きとした群像の表現力も金子先生の持ち味ですね。

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同上。歯医者さんで治療をうける子供の図。レトロな治療マシーンのメカニックな感じが江戸川乱歩的なシュールさがあってぐっときますね。

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同上。模型の電車で遊ぶ兄妹。

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同上。「ヤサシイ デンキノ オコシカタ」と題する見開き。身近なもので簡単に電氣を発生させることもできます、ということを説明しています。静電気はホコリ取りとか手品のタネなどの地味な利用のされ方をしている印象がありますが、何か画期的なアイデアで化けそうなエネルギーのような気もしますね。


次は『電気のはたらき』という絵本です。こちらも講談社発行の絵本で、先の『デンキノチカラ』から12年後、昭和28年の発行で、戦後復興を果たして活気を取り戻している感じの時代ですね。この年には日本初のテレビ放映が開始された年です。絵本からも明るい希望が伝わってくる感じですね。基本的にこの絵本は先の『デンキノチカラ』をリニューアルした感じの構成になっています。戦争に関するところだけ差し替えられて別のテーマになってますが、多くのページで金子先生の構図などをほぼ踏襲して描かれていました。

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『電気のはたらき』絵・谷口健雄 文・満田清剛 大日本雄弁会講談社発行 昭和28年(1953年)

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同上。よく見ると、右上の家族団らんとか、右下の歯医者の絵など、先に紹介したページとの類似が解ると思います。微妙に家庭の電化製品のアイテムが時代を反映して新しくなってるのも見所ですね。

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同上。当時の街の様子が垣間みれますね。路面電車が昭和感があっていいですね〜

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同上。夜の繁華街。現代のイメージからすると、この絵の夜の街は暗い印象がありますね。しかし、逆に、夜は暗いものという当たり前の事すら忘れて暮らせている東京などの現代の都市生活というもののほうが、ちょっと行き過ぎているのかもしれません。この絵から感じるような「夜のワクワク感」みたいな感覚も時代と共に薄れてきてる感じもします。たしかに夜の灯りは、防犯に非常に役立ってますし、人々に安心感を与えますが、それとは別のところで、「夜の健全な暗さ」を忘れてしまう生物としての怖さ、みたいなものもありますね。まぁ、すべてがプラスだけの社会というのはあり得ない話ですから、何かを得れば何かを失うのは何ごとにおいても覚悟すべきなのでしょうね。
posted by 八竹彗月 at 05:32| Comment(0) | 古本
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