2016年08月02日

日本語の造形

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表紙や序盤の1〜20ページほどが無くなっている状態の和本。辞書のように分厚いです。奥付には明治19年4月発行とあります。書名が分からないので詳細は不明ですが、中身は歴代の天皇陛下の諡号(しごう)や、全国の市町村名、いろは歌、千字文などなど、さまざまな用途で使われる表記を収録してあり、今でいえば一家に一冊常備しておくと便利な暮らしの便利事典%Iな本みたいな感じです。図入りのページは江戸時代の寺子屋の教材によく使われていた「絵本塵摘問答」という、昔の「まんがはじめて物語」的な章のみで、他は様々なデザインとレイアウトで江戸時代の寺子屋で使われていた様々な教科書のたぐいや、基礎的なお役立ち知識などを紹介しており、日本語の文字の造形美を楽しめます。

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「七以呂波(ななついろは)」の章。七以呂波というのは片仮名・平仮名など、七種の字体・書体で書いたいろは歌で、当時の手習いの教本に使われていたもののようです。いろは歌の部分が妖しげで、これはよく印鑑などに使われる篆書体だと思いますが、篆書体ってなんとなく神代文字めいた神秘的なフォルムで面白いですね。このいろは歌の部分がオカルティックな雰囲気で面白いので以下に抜き出してご紹介します。

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「府県一覧表」。三府三十六県の管轄地の表。この頃は「東京都」でなく「東京府」だったんですね。他にも北海道はどうしたのか?とか、謎の県「堺県」とか、眺めているといろいろ面白みがあります。

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堺県というのは、1868年6月22日に設置され1887年11月4日まで存在した幻の県です。

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堺県は、今の大阪の堺市を含む南大阪と奈良県を合わせた県でした。けっこう存在感がありますね。

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「消息往来」より。いかにも大魔王を召還する呪文のような勢いの文字ですが、「消息往来」とは、寺子屋で使われた手紙の慣例語句を集めた教科書のひとつです。

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「消息往来講釈」より。大小の文字のメリハリがかっこいいですね。こういう流麗な字をスラスラ書けたらさぞや気分がいいでしょうね。崩し字マスターしてみたいです。

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「農業往来」より。これは農民向けの初等教科書のようです。往来と語尾にあるものは「往来物」といって、手紙の形式で書かれた教科書のことです。他に商人向けの「商売往来」なども収録されてました。

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「全国群名附」より。

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「名頭(なかしら)」より。名頭とは姓氏の頭の字を列記したもので、これも寺子屋などで文字の書き方の練習などに用いられたようです。

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「実語教(じつごきょう)」より。実語教とは仏教的な道徳や暮らしの中の教訓などを中心に編まれた初等教科書のひとつです。相撲の番付表のような力強い文字の躍動するリズム感が面白いですね。

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「仮名遣(かなつかい)」より。漢字の読みを覚えるついでにひらがなの連綿も学べるといった意図の教本でしょうか。

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この本に関する情報がちょっと気になり、切れ切れに残された奥付に書かれた編者の名前、土井宇三郎なる人物が手がかりになりそうなので調べてみました。富山県の書肆で、「富山県官員録」や富山の地図など、主に資料的な本の編纂の仕事が国会図書館のサーチでヒットしましたが、この本の情報は全くひっかからず、それ以上のことは分かりませんでした。

posted by 八竹彗月 at 08:56| Comment(0) | 古本
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