2016年07月31日

鉱物浪漫「中等鉱物界教科書」

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「三訂 中等鉱物界教科書」理学博士・加藤武夫著 冨山房発行 大正9年(1920年)

先日古本市でいい感じの大正時代の鉱物学の教科書を見つけましたのでご紹介します。レトロな鉱物画と旧字体のハーモニーがたまりません。大正時代の学校制度は現在と違って初等教育以外は全ての国民が同じ事を学ぶ感じではなく、庶民とエリート、男子と女子などに細分化された振り分けがされていてややこしいです。この教科書は中等学校で使われたもの。中等学校は12歳から修業する5年制の学校のようですね。近代的産業化の黎明期だけあって当時は鉱山開発も活発でしたでしょうし、鉱物学も国民が早い時期に教わる重要な教養だったのでしょうね。

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オーストラリア産のジプサム(石膏の結晶)といっしょに撮ってみました。

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水晶の銅版画をあしらった扉。センター揃えの普通のレイアウトながらも、旧字の逆読みする横書きのムードにシビれてしまうのは、まさしく古書ならではの時の魔法≠ナすね。

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教科書なので、序盤には鉱物と岩石の違いとか6つの結晶系の説明など、鉱物学の基本的な定義が書かれています。あたりまえですが、大正時代だけあって古めかしい言い回しで説明しているので、鉱物好きならすでに知っている事でも新鮮な気分で読んでしまいます。

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古書コレクターにとっての鉱物学教科書の魅力の大半は、こうした素敵なカラー口絵によるものです。これは非金属の鉱物が並んだ図です。宝石になるような石が多く含まれるグループなので見た目に艶やかですね。サファイアを「サファイヤー(青玉)」、オパールを「貴蛋白石」と書いてあるのもいい感じです。また、電気石の「気」が「氣」な所や、蛍石の「蛍」が「螢」であるなど、旧字体の魅惑的な雰囲気にも惹き込まれます。

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中程のページに挟まれているカラー図版。これは鉱石を並べた図版です。「鉱石」という言葉は、漫画や小説では、鉱物をお洒落に言い換えた言葉≠フようなイメージで使われることが多いですが、鉱物学でいう「鉱石」というのは、建築や製鉄への利用など人間の経済活動に有益な鉱物(あるいはそうした鉱物を含有する岩石)を指す言葉です。逆に工業的な利用価値の無い鉱物を「脈石(みゃくせき)」と呼びます。装飾や美術などで使われる宝石類は鉱物学では鉱石と呼ぶことはないので、鉱石類の図版では地味目の石が多い感じになりますね。

お察しのように、上記にも書きましたとおり鉱石の定義は工業的に有用であるというアバウトなものなので、蛍石やダイヤモンドなど、宝飾だけでなく工業的にも利用される石などもありますから、学術的に定義された言葉ではありません。昔は脈石(役に立たない石)と呼ばれていたリチウムやベリリウムも、現代では半導体技術や音響関係の用途などに利用されるレアメタルとして有用性が見つかり、立派な鉱石に昇格しました。

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市ノ川鉱山で産出された輝安鉱のイラスト図版。日本刀のようなシブい魅力がたまらない鉱物です。輝安鉱は中国で多産されていますが、日本の誇る国産鉱物の代表格でもあります。市ノ川鉱山は現在は閉山していますが、かつては大きく美麗な輝安鉱が多産され明治時代に多くの標本が海外に流出しました。

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この図版では、輝安鉱の金属光沢を印刷で表現するためにシルバーの特色インキを使用しています。光が反射してギラリと光る感じが伝わりやすいように、スタンドの灯りでページを反射させてみました。

参考サイト
メモThe Giant Crystal Project Site(英語サイト)
市ノ川鉱山で産出された長さ60cmもある輝安鉱の結晶の写真が紹介されているページ。サイト名からも分かるように、このサイトは巨大な結晶の鉱物をテーマにしていて、ドイツの巨大な岩塩の結晶洞窟や、コンゴで採取された巨大な孔雀石など、インパクトのある珍しい画像が楽しめました。

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方解石のページに本物の方解石を置いて撮ってみました。

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瑪瑙のイラストと本物を並べてツーショット。

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やはり締めは水晶のページで。鉱物は、本物は本物の揺るぎない魅力がありますが、絵もまた別の魅力がありますね。
posted by 八竹彗月 at 05:07| Comment(0) | 鉱物
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