2014年10月14日

エックハルト・トール「ニュー・アース」

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「ニュー・アース -意識が変わる 世界が変わる- 」エックハルト・トール (著), 吉田 利子 (翻訳) サンマーク出版 2008年

エックハルト・トールというと、欧米ではけっこう有名人のようで、現代の精神世界のリーダーとして注目を浴びている人物みたいです。1977年、29歳のある夜、自殺を考えるほどの深い苦悩の中、突如として自分の内部で変革が起こり悟りを得たそうです。YouTubeで和訳された彼の動画も見れますが、見た目も、どこか静寂を身に纏った感じの落ち着いた雰囲気の人物です。ここのところ、ひさびさに精神世界系の本などを読んでますが、その流れで最近読んで感銘を受けたのが、このエックハルト・トールの代表作のひとつ「ニュー・アース」です。今回はこの本のレビューを書きたいと思います。この本は、読み進めるうちに自分の心の奥深くに自然に誘(いざな)われ、心の本質というか、「私」という自覚の本質に気づかせてくれます。自分で自分の心を制御するのは悟りへの第一歩ですが、まず「心」とか「私」と呼んでるものの正体を知らねばどうにも対処のしようがありません。この本では、大多数のページを割いて、この自分の内部を覆っている「自分のフリをしているやっかいな心の機能」であるエゴやペインボディ(過去のトラウマなどが堆積した古い感情。精神的苦痛をもたらす)に気づかせ、それを制御していくノウハウを噛み砕いて説明してくれます。

難解な本や退屈な本を読んでいると眠くなる、というのは良くある話ですが、エックハルト・トールの代表作「ニュー・アース」は、平易に面白い事が書いてあるのに眠くなるという不思議な本です。この本を必要としている度合いが高い人ほど眠くなると思います。私も読了までに何度も睡魔に襲われ、何度も眠ってしまいました。それはこの本が、「私」だといつも思い込んでいる部分、「エゴ」を暴きだし、「私」をエゴから解放するノウハウを語っている本だからかもしれません。エゴとは、普段「私」と同一視して「私」そのものだと勘違いしてしまっている部分であり、「私」を乗っ取っている「思考」という名の精神寄生体です。エゴを本来の「私」に制御されてしまうと、エゴは脳内の安楽な居場所を追われる事になります。なので、このようなエゴを暴くような"エゴにとって危険な本"を読む時にはエゴは必死になって眠りに誘い邪魔をするのでしょう。

そもそもエゴは「私」の一部であり「私でないもの」ではないので、基本的に敵対するようなものではなく、扱い方を知っていれば良い友人です。エゴがやっかいなのは、エゴは私の部分としてではなく、エゴのはたらきが「私そのもの」であるような錯覚を私に与え、問題の無いところに問題を創造する機能があるからです。エゴは私の心の機能の部分的なはたらきである、という自覚をもたなければエゴが暴走をはじめたときにブレーキをかけることができません。エゴの存在に気づき、制御するためには、エゴを客観的に眺める距離感を感じることから可能になります。そうするにはどうすればいいかというと、「"今"に気づくこと」です。

エックハルト・トールの根本思想はいたってシンプルで、「"今"という唯一の場所に気づき、"今"を生きよ」ということです。一見当たり前のように聞こえますが、普段我々の心は一日の大部分が「今」でない場所に居ます。過去の失敗を悔やんだり、未来の予定を立てて不安になったり、心配したり、いつも「今」でない時間に心を飛ばして、なんの得にもならないのにネガティブな気分になって過ごす事で、余計なストレスを抱え込んでいます。こうした心のはたらきを、なにげなく「自分の心」がそうしているのだからしかたない、と、当然のように感じて過ごしてしまい、そうしたストレスからは逃げられないのが当たり前のように思い込んでいます。しかし、「思考」と「私の本質」とは別であるという認識にいったん立って、「思考」を客観的に眺める、という感覚をマスターすることで、そうしたストレスを回避することが可能になります。

この「思考」を客観視する「私」という心はどこにあるか?というと、「今、ここに」あるわけです。「今」について「考える」こと無しに、「今」をただただ「感じる」ようにしていくと、突然、「思考≒エゴ」とは別の種類の「心」のはたらきを感じることができます。エックハルト・トールは、この「今、ここ」にある「心」を起点にすることの重要さを何度も繰り返し示しています。そして、この「今」こそが唯一不動の安息をもたらす場であると主張しています。とてもシンプルな思想なのですが、本質的な部分の理解は「それ」を体感した時の実感を必要とします。「ニュー・アース」は、「心のおしゃべり」を止めて、「今」という場を感じる気持ち良さに浸るためのノウハウ本といえるかもしれません。興味を持たれたらぜひ"今"を体感してみてください。
posted by 八竹彗月 at 22:46| Comment(0) | 哲学
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