2014年07月07日

ペイズリー 躍動するうねり

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カップ&ソーサー

ここのところペイズリー文様に取り憑かれたように惹かれて、生地や小物などいろいろなペイズリーパターンを集めるのが趣味になってましたが、ようやっとマイブームも落ち着いてきたので、この辺りでペイズリーに対する思いの丈を語ってみたいと思います。

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ペイズリーが連なったネックレス。

ペイズリーの魅力は、あの勾玉のような美しいフォルムですが、またそれには同時にゾウリムシのような気持ち悪さもあって、程よい悪趣味さが逆にただ美しいだけのデザインよりも心をつかむところがあります。そういえば、かつて岡本太郎は、"美しい"というのは"きれい"というのとは全く別の概念だ。と著書やインタビューなどで語っていましたね。「きれい」というのが時代の流行によって変化する相対的なものであるのに対し、「美しい」というのはむしろ醜悪さを感じるくらいのパワーをもった激しいものだ、というのが彼の芸術論ですが、それはとても共感するところです。岡本太郎によれば、人間精神の奥深くを刺激する高貴さを「美」と呼ぶ、ということなのですが、たしかに200年近く廃れることなく何度もスタイルを変化させながらいつの時代の人間にも愛されたペイズリーには、そうした「美」の真相を体現するオーラのようなものを感じます。

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ドイツ製の生地。金色の地にシックなオレンジ色の美しいペイズリーが編み込んであってゴージャスな雰囲気の布です。

ペイズリー文様のモチーフになっているのは、もちろん勾玉でもゾウリムシでもなく、植物の図案化されたもので、花や葉が密集した小灌木をモチーフにしたものが源流になっています。

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レノマのスカーフ。なかなか良い感じのお気に入りペイズリーです。

ペイズリーという名称は、あの勾玉のようなフォルムを意味する言葉なのか、または発祥の時代や地域を表す言葉なのかが気になって、手元にある「ペイズリー文様の展開」という本を参照しながら調べてみたら、ちょっと面白い事が分かりました。この模様の起源は17〜18世紀、北インドのカシミール地方に遡りますが、この模様を「ペイズリー」と呼ぶようになったのは、18世紀後半にヨーロッパにもたらされ英国スコットランド地方の工業都市グラスゴーの隣町ペイズリー市でインドのカシミアショールを真似た機械織りのショールを大量生産してきたことに由来するようです。実際にグーグルマップで見ると、現在も英国にたしかにペイズリー市というのがありますね。ペイズリーという名前は、形に由来するわけでも発祥地に由来するわけでもないというのは面白い発見でした。

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「ペイズリー文様の展開(カシミアショールを中心に)」渋谷区立松濤美術館:刊 1993年
日本で最初のペイズリー模様をテーマにした企画展の図録です。ちょっとしたペイズリー図鑑のように作られていて、見て楽しい図録になっています。けっこうたくさんの種類の図版が納められていますから、かなり充実した展覧会だったんでしょうね。生で黎明期のペイズリー模様の織り物を見てみたいものです。

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同上 18世紀前半に描かれたデザイン画。ペイズリーだけで造られた礼拝堂みたいな風情がシュールですね。明治時代にベルリンに留学した旧津和野藩主亀井茲明侯のコレクションのようです。

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「RATTI AND PAISLEY」 FASHION INSTITUTE OF TECHNOLOGY NEW YORK 1986~1987
ファッションにおけるペイズリーデザインというとイタリアのエトロ社やラッティ社などが双璧ですね。この図録は、そのラッティ社の創設者、アントニオ・ラッティとそのチームによるペイズリーデザインの探求の足跡をたどった展示会のもの。ニューヨークを皮切りに東京その他世界の主要国を巡回して開催されたようです。イタリアのペイズリーデザインは緻密でスタイリッシュそして独創的で好きです。

かわいいペイズリー・コレクション
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プリンスの名を不動のものにしたアルバム「パープルレイン」(1984年)に続き1985年に発表されたサイケデリック感溢れるユニークなアルバム「アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ(Around the World in a Day)」で、単なるポップスターではなく天才の地位も不動のものとしました。「一日間世界一周」という人を食ったこのアルバムに収録された曲の中に「ペイズリーパーク(Paisley Park)」というタイトルだけで不思議なトリップ感を覚えるユニークな曲があります。歌詞もシュールで、奇抜な出で立ちをした人々が束縛もなにもない自由な公園、"ペイズリー公園"に集まって、平和と愛に満ちた微笑みを浮かべている、といった感じの70年代のヒッピーカルチャーを思わせるユニークな世界を描いています。この曲に出会ったことも、ペイズリーへの関心の萌芽になったような気がします。

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イタリア製のシルクスカーフ。サイケな色使いの繊細な模様が素晴らしい。

ペイズリーという200年の伝統を持つ古典的デザインは60年代のアメリカを中心にしたヒッピーカルチャーではサイケデリックなシンボルとしても再生され、伝統文様というだけでなく、ポップなデザインにまで広まった気がします。文様の歴史からいえば、二千年以上の歴史のある唐草模様やロゼッタ文様などがありますから、それと比べればペイズリーの200年に満たない歴史は、まだまだ可能性を持った若い文様といえるのかもしれませんね。
posted by 八竹彗月 at 15:45| Comment(0) | コレクション
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