2015年07月30日

芸術は爆発だ!

芸術とは何か?というのは、どこか「神とは何か?」という問いに似ていて、誰もそれを明確に定義できないのに、誰もが漠然とその意味を非言語的に知っているように感じます。岡本太郎は「芸術は爆発だ!」と定義しましたが、これは誰にでも当てはまる定義ではありません。しかし、そもそも芸術は、誰にでも当てはまる定義を持たないもののように思います。誰もが自分自身にとって一番しっくりくる定義があるはずで、それを見つけるのもまた芸術というゲームの醍醐味でもあると思います。

TV「芸術は爆発だ!」のあのCM。カッコイイ!

芸術というものが何なのか、気になってしかたがない人だけが、それについて考え探求する動機を与えられます。私にとって、そうした問いを投げかけてきたのはダリでした。小学校の図書室で美術事典をなにげなくめくっていたら、ダリの代表的傑作「記憶の固執」の小さな図版が目にとまり、ピカソの絵を初めて見た岡本太郎のように「なにだこれは!?」という衝撃で、しばらくその意味不明でありながら純粋に「面白さ」だけがビンビン伝わってくる不思議な絵に見入っていました。ダリという面白い絵を描く画家の作品をもっと見たい!というのが発端で、そのうち、彼の絵はシュルレアリスムという芸術運動を母体にしているという知識を得ますが、そこで気になるのは、そもそも芸術って何だろう?ということでした。

P7300004.jpg
1972年のミュンヘン・オリンピックのために造られた岡本太郎デザインのメダル。

芸術とは何か?という問いに応えてくれたのは、岡本太郎でした。これも学校の図書室に並んでいた岡本太郎全集をパラパラとめくっていたときに偶然目に入った一文「今日の芸術は、うまくあってはいけない。きれいであってはいけない。ここちよくあってはいけない」という衝撃の思想で、なんとなく「芸術というのは、何か上品な、きれいな観念やモノを上手に描いたり演奏したりすること」という漠然とした幼い定義を覆すものでした。岡本太郎から学んだことは、芸術にはこれといった定義など無い!好きにやれ!といった感じの自由さでした。これは芸術だと思えば何でも芸術なんだ、というなんでもアリとは違います。真剣にキャンバス(あるいは楽譜でもいいですが)の中に自由を見いだし、己の魂を無上の喜びで満たすような表現を追求する精神こそが芸術なのだ、ということなのだと思います。

まことに、芸術っていったい何なのだろう。
素朴な疑問ですが、それはまた、本質をついた問題でもあるのです。
芸術は、ちょうど毎日の食べ物と同じように、人間の生命にとって欠く事のできない、絶対的な必要物、むしろ生きることそのものだと思います。
岡本太郎「新版・今日の芸術」p48 光文社 1963年


P7300003.jpg
岡本太郎の芸術論は独特で、岡本太郎自身の主観的な見方が主体になっていますが、芸術というのは根本的に主観的にしか捉える事の出来ない部分に本質的なものがあったりするわけで、そういう意味では岡本太郎という人は、教科書的な美術論などよりも芸術とは何なのかを直感的に教えてくれる最良の先生だと思います。この「今日の芸術」もどのページもほとばしるパッションに満ちていてとても面白い本です。

岡本太郎のユニークなところは、作品のユニークさだけでなく、その思想にも及んでいます。シュルレアリスム運動やピカソの強い影響などから、前衛芸術家にみられる特有のニヒリズム(「芸術なんてものはくだらないお遊びを権威付けしただけのガラクタのようなものだ」みたいな)があってもよさそうな気がしますが、まったく逆で、とても前向きでポジティブな価値を芸術に与えています。それは、斜に構えた反芸術気取りの自称芸術家などよりもよほどカッコイイですね。岡本太郎の芸術は、前衛芸術でありながら、そのモチーフとするテーマは縄文土器などに見られるプリミティブな生命力の表現であることも、その情熱的で生き生きとした思想が生まれる源泉となっているのでしょうし、それは、ピカソがアフリカの原始美術に傾倒して新境地を描き出した事からの影響もあるだろうと思います。

なんとなく、芸術など無くても人は生きていける、と思いがちですが、では、もし無くても困らないようなものなら、なぜ人類の歴史の最初の頃からすでに絵や音楽があったのか?芸術には人間生活においてどういう価値があるのか?そうした問いに、ああ、なるほど!と感服したのは、昨今再評価の声が高まっている反逆の神秘思想家、OSHOことバグワン・シュリ・ラジニーシの言葉でした。

誰かが何不自由ない暮らしをし、何でも必要なものが手に入るとき、、芸術がなくてはならないものになる。こんなふうになぞらえてみるといい−科学は肉体であり、芸術は心(マインド)であり、宗教は魂である、と。肉体的な欲求が満たされたとき、心は何かを求めはじめる−よい音楽、絵画、芸術、彫刻、小説、詩などといったものを。肉体が満たされたとき、心は新たなものを求めはじめる。体の欲求が満たされて初めて心の欲求が起こってくるのであって、けっしてそれ以前ではない。それはより高い欲求、心の欲求だ。
OSHO(バグワン・シュリ・ラジニーシ)「英知の辞典」p185 めるくまーる 1996年


芸術は心の栄養というわけですね。これはとても得心のいく考えです。体を生かすだけでは満たされないのが人間の人間たる所以です。物質的な豊かさだけに囚われるのではなく、心の豊かさがあってはじめて人生という壮大なゲームを両輪で乗りこなし、トゥルー・エンドに導いてゆけるのかもしれませんね。

先日古本市でダリの図録を手に入れたのをきっかけにダリの記事を書こうとしたのですが、いつのまにか岡本太郎の記事になってしまいました。ダリの記事はまた頁を改めて書こうと思います。
posted by 八竹釣月 at 06:43| Comment(0) | 芸術

2015年07月20日

【音楽】最近ぐっときた曲

最近は60年代のポップスやマーティン・デニーなどのエキゾチカ系を中心に聴いてるせいか、ここ最近ぐっときた曲に最近の曲がありません。

るんるんCombustible Edison「Bluebeard」
るんるんCombustible Edison「Morticia」
けだるいようで軽快で、不思議な空気感を纏ったスキャットがクセになる曲です。アルバム「Schizophonic!」(1996年)に収録された曲ですが、このアルバムは、全体を通して、アルバム名のスキゾフォニック(精神分裂病)に似つかわしい、ねじれた奇妙な味わいでコーディネートされた曲揃いです。ピックアップした曲は聴きやすいですが他は歪んだモンドな感じの曲が多くかなりクセがあります。

るんるんMel Torme「A Day In The Life Of Bonnie and Clyde」
るんるんMel Torme「Brother, Can You Spare A Dime」
ダンディなオジサマの魅力あふれるメル・トーメのシブくてカッコいい歌い回しに惹き込まれます。実在した銀行強盗カップル、ボニーとクライドを描いた有名な映画『俺たちに明日はない』をテーマにしたアルバム「A Day In The Life Of Bonnie & Clyde」より。

るんるんThe Swingle Singers「G線上のアリア」
ザ・スウィングル・シンガーズはロンドンを拠点に活動中のアカペラ・ユニット。ビートルズからモーツァルトまで幅広くカバーする精力的な活動で最近ちらほら耳にするようになりましたが、結成は1962年にフランスのパリということで、実はけっこう年季の入ったグループのようですね。ポップミュージックのカバーよりも、個人的にはクラシック音楽のカバー、とくにバッハのカバーが素敵ですね。オーケストラの生楽器に退けを取らない美しい肉声の神秘を感じます。ほかバッハのカバーのみのプレイリストも貼っておきます。

るんるんConnie Holiday「Mrs. James I'm Mrs. Brown's Daughter」
60年代ポップのコンピレーションで見つけた曲で、ざっと検索してみましたがアーティストの詳細は分かりません。いかにも60年代っぽい質感がある曲で、レトロキュートな感じがいいですね。

るんるんGreen Lyte Sunday「Chelsea Morning」
知る人ぞ知る名バンド、グリーン・レイト・サンディの代表曲。といいつつ私もこのバンドの素性はよくわかってませんが、バンド名を冠したアルバムが一枚だけしか検索にかからないので、多分1枚を残して解散したのでしょう。70年代初頭のバンドとは思えぬお洒落なアコースティックサウンドに並々ならぬ才能を感じます。60〜70年代のヒット曲を集めたコンピレーションで上記の曲を知っただけですが、調べてみると「My Own Time」とか、「If You Wanna Be Free」など、アルバムの他の曲もそうとうにイイ感じですね。

るんるんSolomon King「I Get That Feeling Over You」
耳馴染みのいい心地さがあって浸れる感じのいい曲です。どことなくビートルズの 「All My Loving」っぽい感じのメロディですね。ソロモン・キング(1930 - 2005)はアメリカ、ケンタッキー州出身の歌手。旧約聖書に登場する偉大な王様の名前を名乗っているので当人を検索するのに手間がかかりましたが、結局詳細はよくわかりません。

るんるんTed Mulry「Julia」
るんるんTed Mulry「Louisa」
テッド・モーリー(1947 - 2001)はイングランド出身のミュージシャン。どことなくビートルズっぽいノリがいかにも英国風ですね。

P5240016.jpg
タグ:音楽 洋楽
posted by 八竹釣月 at 03:58| Comment(0) | 音楽