2014年04月21日

婦人世界

昭和2年10月1日発行の婦人雑誌「婦人世界」(実業之日本社:刊)より、いくつかいい感じのページをピックアップしました。風流でモダンな雰囲気が素敵な雑誌です。

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表紙画は叙情画の第一人者、高畠華宵の描く艶っぽい貴婦人像。

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「思索の秋」
秋は夕陽よく、星かげよく、歌よむによく、文かくによし。


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「うす紅葉」
流れ行く水の中に、秋の影は深まってまいりました。

紅葉彩る橋の上で談笑するふたりの婦人。風流な写真ですね。右ページの広告もアールデコなデザインがお洒落。

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「秋深し」
一葉の中に美しき秋の色と光の見られるころのなつかしさよ。


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「菊の秋」
花を見て菊つくらうと思いけり 黄菊白菊そのほかの名はなくもがな


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「つた」
蔓紅葉燃ゆる夕陽の窓にて静かに黙想せらるる松平里子夫人。


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「秋の調べ」
芙蓉しぼむころ、つま琴の調べのゆかしさよ。実業家岩田著雄氏令嬢敏子さん(十七)

琴を弾く令嬢、絵になりますね〜 右はおしめの広告です。どんな商品でも昭和モダンな感じで統一されてますね。

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左右とも、当時の流行の髪型を紹介したページ。

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看護婦、産婆の技能講習会の広告。

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洗髪用ふのり「朝日粉」の広告。ふのり(布海苔)とは海藻の一種で、洗髪用途だけでなく、味噌汁の具、蕎麦のつなぎなどの食品や、漆喰の材料に使われたりと、利用範囲が広く、最近ではダイエット食品としても注目されているようです。

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上は典型的なアールデコ広告ですね。下も大胆なデザインで、なんとなく妖しい感じが面白いです。

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月経帯「ビクトリヤ」の広告ページ。ロマンチックなイラストですが、背景の三日月に月経を象徴させてるのでしょうか。月経帯というのは、今は無き昔の生理用品で、布のナプキンのようなものだったみたいです。

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裏表紙は着物姿のおかっぱ頭の美少女。「クラブ白粉」の広告。現在もクラブコスメチックスとして知られる化粧品会社で、創業が1903年(明治36年)のようですから、今年で111年目の老舗ですね。
posted by イヒ太郎 at 08:06| Comment(0) | 古本

2014年04月05日

大正少女桜

花見記事関連で続けて、大正時代の少女雑誌「少女世界」の大正7年(1918)4月号より、桜にちなんだ雅なページをご紹介します。

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花枝さんと菫さんとは、お庭一面に散り敷いている桜の花びらを拾って、玩具の車に入れました。これから二人は病気で寝ている波子さんの所へ、お見舞いに行こうと相談をしております。
「桜の花びら」吉岡千種(よしおか ちぐさ):絵


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お庭の桜の花が、きれいに咲きました。暖かなお縁側で、春子さんは妹の花ちゃんの玩具に、風車をこしらえております。皆様も次に添えてある色紙を切り取って、こしらえてごらんなさい。これが前号でお約束をした付録であります。こしらえ方は第三十九ページに書いてあります。
「かざぐるま」佐藤三重三(さとう みえぞう):絵


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「花ざかり」
桜の花が咲きそろいました。柔らかな若草の上で、摘み草をしている子供もあります。目隠しをしている少女もあります。私たちも早くお花見に参りましょう。


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「見渡せば、花より外の色もなし」
懸賞ページの入賞者発表ページ。読者の少女たちから送られてきた達筆なお習字。見事なものですね〜
posted by イヒ太郎 at 20:31| Comment(0) | 古本

桜景色

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先日、千鳥ヶ淵の満開の桜を見物してきました。

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絶景なり。

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まるで雪景色のようです。

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桜の名所は都内にもけっこうあるのですが、あえて今年ココを選んだのは、古本の街、神保町が歩いて行ける距離にあるからです。桜を見た後は、ぶらりと神保町に足を運んで古書を物色するのも楽しいです。

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この日は薄曇りで、ちょっと肌寒かったですが、たくさんの花見客で賑わっていて楽しかったです。

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雪のように白く咲き乱れる満開の桜を見ていると、いつも思い出すのは、梶井基次郎の掌編「桜の樹の下には」の一説です。全文は青空文庫で読めます。

桜の樹の下には
梶井基次郎

 桜の樹の下には屍体(したい)が埋まっている!
 これは信じていいことなんだよ。何故(なぜ)って、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことじゃないか。俺はあの美しさが信じられないので、この二三日不安だった。しかしいま、やっとわかるときが来た。桜の樹の下には屍体が埋まっている。これは信じていいことだ。


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自分のキャパシティをはるかに超えた「美」を目の前にすると、それを楽しむどころか、ある種「恐怖」に似た感情、それは「畏れ」と似た感情なのかもしれませんが、そういうどこか微妙な居心地の悪さを梶井は嗅ぎ取ったのかもしれませんね。そのとらえどころの無い想いを梶井なりに寓意的に「屍体が埋まっている」と表現したのかもしれません。

桜は樹木なので、根っこが当然あります。土の上のきらびやかな花と対照的に、地中深く、闇へ闇へと触手を伸ばす「根」。虫や動物や、そして当然、人間の屍体でさえも、養分として吸い上げる「根」。ニーチェの「ツァラトゥストラ」で語られる名言にも、こうした樹木の二面性を人間そのものに例えたものがありましたね。

人間は樹木のようなものだ。木は高みへ、明るみへ登れば登るほど、その根はいよいよ強く地中へ、暗い方へ・・・悪へ向かう。
「ツァラトゥストラはかく語りき」フリードリヒ・ニーチェ(1844-1900)


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あまり深く考えると、それこそ思考が暗い地中に潜っていきそうですね。せっかく奇麗に咲いている桜の花に申し訳なってくるので、この辺りでダーク方面の思考から離れましょう。落語や漫才など、お笑い芸は好きですが、「笑いについて」みたいな事を考えていくと、そんなに笑えるような議論にならないのと似てますね。

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ただ、一時の間、日本中の景色を一斉に美しく彩る桜を、余計な事を考えずに愛で楽しむのが正解ですね。

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タグ:日記 雑記
posted by イヒ太郎 at 16:19| Comment(2) | 日記

2014年03月29日

骰子の七番目の目を求めて

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サイコロのコレクション。

今回はサイコロについて話してみようと思います。サイコロのルーツは、少なくとも5千年前にまで遡るそうで、その正六面体のキューブに刻まれた21個の"目"は、古くからゲーム、占い、ギャンブルなどに使われ、人間の欲望の歴史を見守ってきたのでしょうね。数字の目の割り振りは、裏面との和が7になるように配置されているのは知ってましたが、具体的に全ての目の配置にもルールがあるんだろうな、と思ってwikiを見てみると、「天一地六東五西二南三北四」というルールがある、とのことでした。1の目だけ特別大きい赤い丸、というお馴染みのサイコロは、どうやら日本で広まった独特の仕様のようで、大正時代あたりに日の丸をイメージして1の目があのような赤丸になったという説もあるそうですが、はっきりした事はわかっていないようです。

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アニメ「ガンバの冒険」に、ニヒルな博打好きの"イカサマ"というキャラがいます。黒いサイコロふたつを常に弄んでいるアウトローっぽいキャラで、私がサイコロに興味をもったきっかけのひとつでもあります。「あの"イカサマ"の持ってる黒いサイコロが欲しい」と思いながら見てたものですが、なかなか見つからず、そのまま時が過ぎました。写真は、忘れた頃になにげなく見つけた"イカサマ"風の黒いサイコロです。

ダダ・シュルレアリスムの詩人、ジョルジュ・ユニェ(Georges Hugnet 1906-1974)の代表作に「骰子の七番目の目」という前衛詩集があります。内容はやはりシュルレアリスム的、というか、難解というか、まぁナンセンスでエロティックで攻撃的な詩です。それにしても秀逸なタイトルであります。「骰子の七番目の目」、タイトルだけでこれだけシュルレアリスムを体現した言葉はないですね。ロートレアモンの「解剖台の上での、ミシンと雨傘との偶発的な出会い」よりもヒネリのある上質なポエジーを感じます。6面体以上の多面体のサイコロならいざしらず、通常の正六面体サイコロは6番目の目で終わりで、7番目の目などありません。では、7番目の目はどこにあるのか?異次元感覚を伴うオカルティックで不思議なイメージですね。以前、その7番目の目を、てんとう虫(ナナホシテントウ)に例えた絵を描いたことがありました。てんとう虫の七つの星は、どこかサイコロの目の並びを連想するところがあり、「てんとう虫はサイコロの7番目の目を担う異次元生物である」という空想をしてみると、不思議な気分になってきます。

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1、2、3・・・おや? こ、これはサイコロの七番目の目ではないか!異次元の扉がついに開いてしまったのか!・・・・冗談はこのくらいにして、これは7から12までの目がふられたサイコロです。通常のサイコロと合わせて使うものでしょうか?使い道がよくわからない変わり種サイコロです。

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オーソドックスな白いサイコロ。サイズ違いのサイコロをセラミックの手のひらに乗せてみました。けっこうシュールな絵面になりましたね。

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変わり種サイコロ。ダーツの矢の本数が目の数に対応しています。

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ポーカーダイスという、ポーカーをトランプでなくサイコロで行うという風変わりなゲームがあります。これはその遊びのためのサイコロです。

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黒地に妖しく輝く赤いガラスの目。「スワロフスキーダイス」という商品名だった気がしますが、スワロフスキー社のものなのかどうか不明です。

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十二支ダイスと星座ダイス。オカルトな雰囲気が面白いです。

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大正15年の「幼女の友」新年号の付録、「幼女フラワー双六」。双六にサイコロは必需品ですね。

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明治のサイコロキャラメル・・・ではなく、明治のサイコロキャラメルそっくりなパズルゲームです。キャラメルはプラスティック製です。創業81年の老舗玩具メーカー、ハナヤマが明治製菓からライセンスを得て作ったユニークな商品。

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15〜16世紀のドイツで作られた不思議な形のサイコロ。画像は「ゲームの世界 知と遊びの博物館」(フレデリック・V・グランフェルド:著 日本ブリタニカ:発行 1978年)より。他にも、ネットでサイコロの歴史を検索をすると、昔のアンティークなサイコロの画像がいろいろ見れて楽しいです。

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荒俣宏がテレビで昔「サイコロの目の並びは、"数"の象形文字なんです」と言っていたのを思い出します。当時その言葉に「なるほど!」と衝撃を受けたのを思い出します。言葉ひとつで、サイコロという何気ないモノが、どこか呪術めいた妖しげなモノに変容していくように感じられました。"数"という最も抽象的な概念を見事にビジュアル化した物体がサイコロだ、というのはとても面白い視点ですね。

かつてピタゴラスは「数は万物の根源である」とするオカルティックな教団の教祖だったというのは有名なエピソードです。ピタゴラスの定理などで知られる数学者ですが、数学という合理的で純粋な学問としてだけでなく、神秘思想や宗教的な思想が混じった不思議なその数学思想は、とても興味を惹かれます。ピタゴラスは、奇数を男性数、偶数を女性数と考えました。特に2は女性をあらわし、3は男性をあらわします。2+3=5で、5は「結婚」をあらわします。1は唯一無二の「神」をあらわし、4は2と2に奇麗に分割できることから「正義」をあらわします。サイコロの最後の目でもある6については、最大の目にふさわしく「完全数」とされています。これは、6がいくつものユニークな性質を兼ね備えているからです。6は1+2+3に分けれます。また、六つの1、三つの2、二つの3と1〜3の全てで割り切れます。その他にも、旧約聖書の創世記では神は世界を六日で創ったと書かれていますし、ダビデの六芒星、蜂の巣の個々の房の六角構造など、文化的なシンボルや自然の造形など、さまざまな現れ方をする「6」は、とても安定した特別な数として格別の地位をあたえられていたようですね。

「6はそれ自体で完全な数である。神は全ての物を六日で作られた、というのはこの数は完全だからである」
聖アウグスチヌス(354−430)
posted by イヒ太郎 at 10:06| Comment(2) | コレクション

2014年03月22日

ミュージック・サロン

ダークな感じのテーマが続いたので、口直しに最近見つけたお気に入り曲や、聞き返してみたくなった名曲などをいくつかチョイスしました。

Elis Regina「Bala com Bala」
エリス・レジーナは1982年に若くして惜しまれながら夭逝したブラジルの実力派シンガー。その力強さの中に軽やかさを備えたパンチのある歌唱は独特で、現在でも熱心に支持する人も多いようです。この曲も、ボサノヴァやサンバの影響を感じるMPB(ブラジルのポピュラー音楽)らしい、はじけるようなリズムの楽しい曲です。

Fantastic Something「Perfect Napoleon」
ギリシャ出身の兄弟デュオ、ファンタスティック・サムシング。彼らは1985年に1枚だけアルバムを残したのみですが、とても完成度の高い素晴らしいアルバムで、アコースティックで素直な音作りのキャッチーでヒーリング感あふれる曲が詰まった傑作揃いです。以前にも、このアルバムからのお気に入りを1、2曲ほど紹介されていただきましたが、今回はコレをチョイスしてみました。

Coralie Clement「L'ombre et la lumière」
コラリー・クレモンはフランスのシンガー。タイトルは「光と影」という意味のようです。ジャズっぽいアレンジがいいですね。甘く暖かい体温を感じるムーディーな歌声が心地よいです。

Noriel Vilela「16 toneladas」
妖しく濃い感じのモンドなサンバ。重低音の渋いボイスがカッコイイ。ノリエル・ビレラについては、ポルトガル語のwikiくらいしか情報が見当たりませんが、そのwikiでも記述はアッサリしてますね。サンバ、ロック系のバンドなどで50〜60年代あたりに主に活躍していたようで、74年に亡くなっているようです。曲も、この曲くらいしか情報がなく、この曲以外のヒット曲には恵まれてなかったのかもしれません。

Donny Osmond「Puppy Love」
ダニー・オズモンドはアメリカの俳優、歌手。1972年の全米第3位になったヒット曲です。レコーディング当時は15歳のようですね。女の子のような歌声が可愛らしいです。

Terry Winter「Summer Holiday」
スカ風のムーディーでリズミカルなメロディが気持ちいいです。曲はブラジルのシンガー、テリー・ウィンター(1947-1998)による1972年のヒット曲です。

Rita Lee「Ave Maria (José)」
1970年の曲。ジェーン・バーキンを彷彿とする甘いレトロ感がただよう歌声が素敵ですね。リタ・リーはブラジルのシンガーソングライター。

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タグ:音楽 洋楽
posted by イヒ太郎 at 01:20| Comment(0) | 音楽